怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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靴箱失踪事件

人力は少ないほうがいい

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 謎の腐食物体は無事ビニール袋に収められた。ロッカーは後で消臭する必要があるだろう。
 各所の窓を全開にしている下里を横目に森当くんが口を開く。
「解決法が見つかったみたいですけれど」
「ああ」
「へえ、興味深い」
 いつから聞いていたのかひとねが部室の入り口に立っていた。
「終わったのか」
「やってみれば簡単な問題だよ」
「じゃあ次からは授業中にやるんだな」
 俺のありがたい助言を鼻で笑いひとねはいつもの席に座り……
「なんだいこの臭い」と顔を顰めた。

 換気の風と共に下里が戻ってきたタイミングでひとねは楽しそうに身を乗り出した。
「じゃあ、君の解決法を聞かせてもらおうか」

 *

「必要なのは対象の扉を見つける事、でもそれは俺たちじゃなくていいんだ」
「……それは人海戦術では?」
「違うって。対象の扉を目立つようにするんだよ」
「なるほど、その方法は?」
 ひとねは俺の言いたいことがわかっていそうだ、その上で俺に発言を求めている。
「入口……森当くんの靴箱に入れたものは見つけるべき扉の方に移動する。だから扉が閉まっていてもなお目立つ物を送り込めばいいんだよ」
「なるほど」と森当くんが手を叩く。
「それで臭いなんですね」
「ああ、くさいものじゃあなくてもいい。例えば香水とか。学校内でしそうに無い匂いならいいんだ」
「香水は付けてる人いますよ」
「そんな校則違反者の事は知らん」
 咳払いをして仕切り直し。
「ともかく匂いのするものを送り込めば誰かが開く、もしくは噂になる。それで解決だ」
「なるほどです」
「理に叶っていますね。何か匂いのするものを調達しないといけませんが……僕の方で探してみます」
「それは手間だね」
 後輩二人は納得したようだが怪奇探偵様は何か言いたげである。

「どうだ、ひとね」
「方法はいい、完璧だ。でも送り込む物が違う。もし誰もこない場所が出口になっていたら解決しないからね」
「なら何を送り込めばいいんだよ」
「なんでもいい」
「……え?」
「まあ、硬くて丈夫な物のほうがベターではあるね」
 ひとねは部室を見渡し、入口近くに置いてあるダンボールを指す。
「あれは廃棄するものだったね」
「うん、生徒会から許可も出た廃棄本」
「ならばアレにしよう。運びたまえ」
 指示は俺に向けられたもの、拒否権は無いに等しいので大人しく持ち上げる。
 コレを入れて何になるんだ……?
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