91 / 150
異界十字路
探偵は道筋を示す
しおりを挟む
「とりあえず各道に名称をつけておこうか」
ひとねは会長の鞄が置いてある道を指す。
「この道を北として東西南北としよう」
「しかし……全く差異がないね」
「そういうものだからね、でも北はハズレだ」
「……何か手がかりあった?」
「会長さんは私達がこの空間に入った時北の方を見ていた筈だ。彼が私達を見ていないというのなら、北はハズレだ」
「なるほど、たしかにそうなるな」
推理を始める三人を他所に、俺は改めてこの空間を見渡していた。
推理するのがひとねならば助手である俺はその手がかりを探す。
今回の怪奇現象と俺の記憶力は相性がいい。
偏食漠がいなくなり衰えたとはいえ、短時間であれば見た光景を完全に記憶出来る。
一つの道を記憶し、違う道と照らし合わせれば違和感くらいは浮かんでくるはず……!
「んー、ダメですね。全部の道の写真を重ね合わせてみましたけど変わりないです」
「…………!?!?」
「なんです先輩、今時スマートフォンなんて珍しくないですよ」
真なる助手は文明の力だというのか!?
*
「……何してるんです?」
「天を仰いで自分に出来る事を探してるんだよ」
「太陽とか大空なら雰囲気的に分かりますけど染みのある天井と細長い蛍光灯で何か見えて来ますか?」
「いや、むしろ眩しくて見えにくい。ただヒントは掴んだぞ」
「言ってみたまえよ」
「ああ、見るべきは四つの道じゃない。正解の道と同じで元の世界のまま残っているこの中央空間だ」
聞いていたひとねがニヤリと笑う。
「いいアイデアじゃないか。じゃあそれをベースに考えていこう」
「天井も床にも模様はないですね」
「ならば後からついた傷などだ。会長さんはここを良く通るのだろう? 何か記憶に無いかい?」
「生徒会室となれば役に立てただろうけど、残念ながら」
「配線はどうです?」
「配線?」
「ほら、蛍光灯とかです。ああいうのって壁に沿ってるじゃないですか」
「それも残念、配線は天井の中に埋まってしまっている」
「むむ……難しいですね」
「下里さん、惜しいね」
「え? 美味しい?」
「惜しい、だよ。なんだその聞き間違いは」
「お腹減っちゃって」
「ひとね、今の言い方からして分かってるんじゃないか?」
「今から話す、念のために確認を頼む」
ひとねは全員の前に立ち、口を開く。
「四つのうちの一つ、北は会長さんの手柄によってハズレと確定した。では、正解を求めるには何が必要か」
「そりゃあ他の道をハズレと確定する手がかりだろ、それをこの中央で探している」
「それでもいいけどね、今回はどれが正解かを考えた方が早い」
そう言ってひとねは蛍光灯を指す。
「注視すべきは蛍光灯の配線では無く、蛍光灯そのものの向きだ」
「そっか! この中央にある蛍光灯だけは絶対に正しい!」
「そう、つまり四つの道と見比べ、同じ向きの物は正解に近づく」
全員が蛍光灯を見比べる。北と南が正解だった。前述の通り北は既にハズレと確定しているため……
「正解の道は南だ」
ひとねは会長の鞄が置いてある道を指す。
「この道を北として東西南北としよう」
「しかし……全く差異がないね」
「そういうものだからね、でも北はハズレだ」
「……何か手がかりあった?」
「会長さんは私達がこの空間に入った時北の方を見ていた筈だ。彼が私達を見ていないというのなら、北はハズレだ」
「なるほど、たしかにそうなるな」
推理を始める三人を他所に、俺は改めてこの空間を見渡していた。
推理するのがひとねならば助手である俺はその手がかりを探す。
今回の怪奇現象と俺の記憶力は相性がいい。
偏食漠がいなくなり衰えたとはいえ、短時間であれば見た光景を完全に記憶出来る。
一つの道を記憶し、違う道と照らし合わせれば違和感くらいは浮かんでくるはず……!
「んー、ダメですね。全部の道の写真を重ね合わせてみましたけど変わりないです」
「…………!?!?」
「なんです先輩、今時スマートフォンなんて珍しくないですよ」
真なる助手は文明の力だというのか!?
*
「……何してるんです?」
「天を仰いで自分に出来る事を探してるんだよ」
「太陽とか大空なら雰囲気的に分かりますけど染みのある天井と細長い蛍光灯で何か見えて来ますか?」
「いや、むしろ眩しくて見えにくい。ただヒントは掴んだぞ」
「言ってみたまえよ」
「ああ、見るべきは四つの道じゃない。正解の道と同じで元の世界のまま残っているこの中央空間だ」
聞いていたひとねがニヤリと笑う。
「いいアイデアじゃないか。じゃあそれをベースに考えていこう」
「天井も床にも模様はないですね」
「ならば後からついた傷などだ。会長さんはここを良く通るのだろう? 何か記憶に無いかい?」
「生徒会室となれば役に立てただろうけど、残念ながら」
「配線はどうです?」
「配線?」
「ほら、蛍光灯とかです。ああいうのって壁に沿ってるじゃないですか」
「それも残念、配線は天井の中に埋まってしまっている」
「むむ……難しいですね」
「下里さん、惜しいね」
「え? 美味しい?」
「惜しい、だよ。なんだその聞き間違いは」
「お腹減っちゃって」
「ひとね、今の言い方からして分かってるんじゃないか?」
「今から話す、念のために確認を頼む」
ひとねは全員の前に立ち、口を開く。
「四つのうちの一つ、北は会長さんの手柄によってハズレと確定した。では、正解を求めるには何が必要か」
「そりゃあ他の道をハズレと確定する手がかりだろ、それをこの中央で探している」
「それでもいいけどね、今回はどれが正解かを考えた方が早い」
そう言ってひとねは蛍光灯を指す。
「注視すべきは蛍光灯の配線では無く、蛍光灯そのものの向きだ」
「そっか! この中央にある蛍光灯だけは絶対に正しい!」
「そう、つまり四つの道と見比べ、同じ向きの物は正解に近づく」
全員が蛍光灯を見比べる。北と南が正解だった。前述の通り北は既にハズレと確定しているため……
「正解の道は南だ」
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる