怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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異界十字路

探偵は道筋を示す

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「とりあえず各道に名称をつけておこうか」
 ひとねは会長の鞄が置いてある道を指す。
「この道を北として東西南北としよう」
「しかし……全く差異がないね」
「そういうものだからね、でも北はハズレだ」
「……何か手がかりあった?」
「会長さんは私達がこの空間に入った時北の方を見ていた筈だ。彼が私達を見ていないというのなら、北はハズレだ」
「なるほど、たしかにそうなるな」
 推理を始める三人を他所に、俺は改めてこの空間を見渡していた。
 推理するのがひとねならば助手である俺はその手がかりを探す。
 今回の怪奇現象と俺の記憶力は相性がいい。
 偏食漠がいなくなり衰えたとはいえ、短時間であれば見た光景を完全に記憶出来る。
 一つの道を記憶し、違う道と照らし合わせれば違和感くらいは浮かんでくるはず……!

「んー、ダメですね。全部の道の写真を重ね合わせてみましたけど変わりないです」
「…………!?!?」
「なんです先輩、今時スマートフォンなんて珍しくないですよ」
 真なる助手は文明の力だというのか!?

 *

「……何してるんです?」
「天を仰いで自分に出来る事を探してるんだよ」
「太陽とか大空なら雰囲気的に分かりますけど染みのある天井と細長い蛍光灯で何か見えて来ますか?」
「いや、むしろ眩しくて見えにくい。ただヒントは掴んだぞ」
「言ってみたまえよ」
「ああ、見るべきは四つの道じゃない。正解の道と同じで元の世界のまま残っているこの中央空間だ」
 聞いていたひとねがニヤリと笑う。
「いいアイデアじゃないか。じゃあそれをベースに考えていこう」
「天井も床にも模様はないですね」
「ならば後からついた傷などだ。会長さんはここを良く通るのだろう? 何か記憶に無いかい?」
「生徒会室となれば役に立てただろうけど、残念ながら」
「配線はどうです?」
「配線?」
「ほら、蛍光灯とかです。ああいうのって壁に沿ってるじゃないですか」
「それも残念、配線は天井の中に埋まってしまっている」
「むむ……難しいですね」
「下里さん、惜しいね」
「え? 美味しい?」
「惜しい、だよ。なんだその聞き間違いは」
「お腹減っちゃって」
「ひとね、今の言い方からして分かってるんじゃないか?」
「今から話す、念のために確認を頼む」
 ひとねは全員の前に立ち、口を開く。
「四つのうちの一つ、北は会長さんの手柄によってハズレと確定した。では、正解を求めるには何が必要か」
「そりゃあ他の道をハズレと確定する手がかりだろ、それをこの中央で探している」
「それでもいいけどね、今回はどれが正解かを考えた方が早い」
 そう言ってひとねは蛍光灯を指す。
「注視すべきは蛍光灯の配線では無く、蛍光灯そのものの向きだ」
「そっか! この中央にある蛍光灯だけは絶対に正しい!」
「そう、つまり四つの道と見比べ、同じ向きの物は正解に近づく」
 全員が蛍光灯を見比べる。北と南が正解だった。前述の通り北は既にハズレと確定しているため……
「正解の道は南だ」
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