怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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件の話

workウィズくだり

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 翌日、運動部並みに走る吹奏楽部員が過ぎ去ったのを見計らって廊下に出る。
 終礼中に震えていたスマートフォンを取り出す。メッセージの差出人は『下里 くだり』

『司書室にて待つ! 武蔵にならないでくださいね!』

「……武蔵?」
 歩きながら考える事数分。宮本武蔵と佐々木小次郎の逸話に行き当たる。
「遅れるなって事か」
 もし遅れたら下里が何かしらの勝負に負けるのだろうか? そんなしょうもない事を考えながら図書室に入る。
 ガラガラの図書室を横目に司書室に入ろうとしたところで腕を掴まれる。
「決闘を前に、何処に行こうというのか」
 下里のもう片方の手には『宮本武蔵』の本が握られている。
「お前小次郎側だけどいいのか?」
「そこはまあ、立場上仕方なしです」
 解放された手で頭を掻き、司書室に背を向ける。
「入らないのか?」
「図書部のお仕事が終わったら幾らでも。リラックスタイムは後です」
「ま、それもそうか」
「では図書部のひよっこ先輩! お仕事の説明をしますね!」
 俺は図書部に入っていないとか、色々言いたい事はあるが……
「図書室では静かにしろよ、後輩」
   

「さて、大まかにはこんなものです」
 返却本を本棚に戻し、追加や廃棄があれば処理する。余裕があれば整理。
「……図書委員とかの仕事じゃねぇかな、コレ」
「我が校に図書委員はありませんから」
「ま、そうだけど……何からすれば良い?」
 下里は返却本に手をかけ、思い出したようにこちらを見る。
「一応確認なんですけど、本当にこき使っていいんですか?」
「ひとねの言うことだ、それこそに意味があるんだろう。仕事がなくてもこき使え」
「そうですか。では助手先輩、力仕事をお願いします」
「力仕事? 今の内容にそんなのあったか?」
「いえいえ、先日地域の方から大量の寄贈がありまして」
「……運べと」
「ダンボール二箱ですから、お願いしますね」

 *

「…………」
「お疲れ様です、先輩」
 わざとらしく語尾にハートマークでも付きそうなトーンだが
「あんな大きなダンボールがあってたまるか。引っ越し屋かよ」
「わたしの言葉に偽りなし、ちゃんと二箱ですよ」
 下里なりの労いなのか今日の司書室には煎餅も置かれている。小分け梱包に数枚入ってる、小さいのにヤケに味がこいやつだ。
「明日は廃棄作業があります。これもまた溜まってまして」
「マジか」
「ひとねちゃんの言う通り、今週一杯こき使いますから」
「……好きにしろ」
 コレになんの意味があるんだ……ひとねよ。
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