52 / 150
悪魔と狸と時々探偵
合わせ鏡の六枚悪魔
しおりを挟む
「とりあえず中の状態、鏡がどう取り付けられているかを詳しく教えてくれ」
ひとねに言われて辺りを見渡すが……もちろん鏡しかない。
恐らく鏡は小屋の壁自体に張り付けられていて、その上からプラスチックの板を取り付けてあるといった感じだ。
それをひとねに伝えた時、強烈な悪寒が走った。
低い笑い声のようなものが頭に響き、何かの視線を感じる。
感じた方を見てみると……そいつはいた。
永遠と続く鏡の九番目に黒い何かがある。靄のようで形もわからないのにソレが笑っているということがなぜかわかってしまう。
「なんだよ……あれが悪魔かよ」
呟くと同時に悪魔が少し近づいてくる。恐らく一分ごとに一枚鏡をすり抜けていくのだろう。
「……くそっ」
俺はバットを板に投げつける。少しだけ揺れはしたが傷一つ付いていない。
そんなことをしている間にも悪魔は鏡をすり抜けてくる。俺はたまらず声を上げる
「どうにかならないのか! どうやっても板は揺れるくらいだぞ!」
「今考えている! 壊れない板……その奥の鏡……」
聞こえてくる呟きはどこか焦っているように感じた。
「壊れず揺れる板……鏡は壁にくっついていて……」
俺と悪魔の間にある鏡が一枚になった時、ひとねのつぶやきが止まった。
恐らく自慢げな表情だろう。見えはしないがそうわかるような声でひとねは俺に言った。
「安心していい。これは簡単な問題だったよ」
*
ひとねの自慢げな宣言の後、ハンマー投げの選手のような上野の大声と共に小屋が揺れた。
小屋は大きく揺れるが壊れはしない……が、鏡は割れ悪魔は姿を消した。
扉が開き外に出ると予想通りひとねが自慢げな顔を浮かべていた。
「よくやった、私」
「……………………」
お前かよ。
*
あの後、意識を失っていた生徒は皆目を覚まし学校から貰った謝礼で俺たちは団子を食べていた。
「今回は説明をしなくてもわかるね?」
「まあな」
今回は本当に簡単な事だった。小屋を揺らして鏡に振動を与えた。ノックで壊れるくらいの鏡はそれで十分に割れる。
俺の方からは板が邪魔をして不可能だったが鏡が壁にぴったりとくっついている構造だったため外からならば簡単だったのだ。
「さて、今日はすき焼きの気分だな。君も食べていくといい」
「はあ……」
作るのも買い出しに行くのも俺なんだけどな……確か肉が安いのは地下図書館よりも先のスーパーだな。
「少し休憩してから行く」
そう言って俺はひとねに着いて地下図書館への道を歩く。普通の道ではなく専用の通路だ。
幾つあるかわからない隠し通路、そもそも地下にあんな大きな空間があるのもおかしい。
「まったく、地下図書館ってなんなんだよ……」
そんな今更ながらの疑問をつぶやいた瞬間、ひとねが急に歩みを止めた。対応できずにぶつかってしまう。
「どうした、もう目の前だろ……喉乾いたから早く行きたいんだが」
「……誰かいる」
「え?」
この先はもう地下図書館だ。先にいるということは前みたいに後をつけられていたということもないだろう。
「あの時の子供か?」
「いや、違う……」
ひとねは声を潜めて呟くように言った。
「たぶん……怪奇現象の類だ」
ひとねに言われて辺りを見渡すが……もちろん鏡しかない。
恐らく鏡は小屋の壁自体に張り付けられていて、その上からプラスチックの板を取り付けてあるといった感じだ。
それをひとねに伝えた時、強烈な悪寒が走った。
低い笑い声のようなものが頭に響き、何かの視線を感じる。
感じた方を見てみると……そいつはいた。
永遠と続く鏡の九番目に黒い何かがある。靄のようで形もわからないのにソレが笑っているということがなぜかわかってしまう。
「なんだよ……あれが悪魔かよ」
呟くと同時に悪魔が少し近づいてくる。恐らく一分ごとに一枚鏡をすり抜けていくのだろう。
「……くそっ」
俺はバットを板に投げつける。少しだけ揺れはしたが傷一つ付いていない。
そんなことをしている間にも悪魔は鏡をすり抜けてくる。俺はたまらず声を上げる
「どうにかならないのか! どうやっても板は揺れるくらいだぞ!」
「今考えている! 壊れない板……その奥の鏡……」
聞こえてくる呟きはどこか焦っているように感じた。
「壊れず揺れる板……鏡は壁にくっついていて……」
俺と悪魔の間にある鏡が一枚になった時、ひとねのつぶやきが止まった。
恐らく自慢げな表情だろう。見えはしないがそうわかるような声でひとねは俺に言った。
「安心していい。これは簡単な問題だったよ」
*
ひとねの自慢げな宣言の後、ハンマー投げの選手のような上野の大声と共に小屋が揺れた。
小屋は大きく揺れるが壊れはしない……が、鏡は割れ悪魔は姿を消した。
扉が開き外に出ると予想通りひとねが自慢げな顔を浮かべていた。
「よくやった、私」
「……………………」
お前かよ。
*
あの後、意識を失っていた生徒は皆目を覚まし学校から貰った謝礼で俺たちは団子を食べていた。
「今回は説明をしなくてもわかるね?」
「まあな」
今回は本当に簡単な事だった。小屋を揺らして鏡に振動を与えた。ノックで壊れるくらいの鏡はそれで十分に割れる。
俺の方からは板が邪魔をして不可能だったが鏡が壁にぴったりとくっついている構造だったため外からならば簡単だったのだ。
「さて、今日はすき焼きの気分だな。君も食べていくといい」
「はあ……」
作るのも買い出しに行くのも俺なんだけどな……確か肉が安いのは地下図書館よりも先のスーパーだな。
「少し休憩してから行く」
そう言って俺はひとねに着いて地下図書館への道を歩く。普通の道ではなく専用の通路だ。
幾つあるかわからない隠し通路、そもそも地下にあんな大きな空間があるのもおかしい。
「まったく、地下図書館ってなんなんだよ……」
そんな今更ながらの疑問をつぶやいた瞬間、ひとねが急に歩みを止めた。対応できずにぶつかってしまう。
「どうした、もう目の前だろ……喉乾いたから早く行きたいんだが」
「……誰かいる」
「え?」
この先はもう地下図書館だ。先にいるということは前みたいに後をつけられていたということもないだろう。
「あの時の子供か?」
「いや、違う……」
ひとねは声を潜めて呟くように言った。
「たぶん……怪奇現象の類だ」
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Arachne 2 ~激闘! 敵はタレイアにあり~
聖
ミステリー
学習支援サイト「Arachne」でのアルバイトを経て、正社員に採用された鳥辺野ソラ。今度は彼自身がアルバイトスタッフを指導する立場となる。さっそく募集をかけてみたところ、面接に現れたのは金髪ギャルの女子高生だった!
年下の女性の扱いに苦戦しつつ、自身の業務にも奮闘するソラ。そんな折、下世話なゴシップ記事を書く週刊誌「タレイア」に仲間が狙われるようになって……?
やけに情報通な記者の正体とは? なぜアラクネをターゲットにするのか?
日常に沸き起こるトラブルを解決しながら、大きな謎を解いていく連作短編集ミステリ。
※前作「Arachne ~君のために垂らす蜘蛛の糸~」の続編です。
前作を読んでいなくても楽しめるように書いたつもりですが、こちらを先に読んだ場合、前作のネタバレを踏むことになります。
前作の方もネタバレなしで楽しみたい、という場合は順番にお読みください。
作者としてはどちらから読んでいただいても嬉しいです!
第8回ホラー・ミステリー小説大賞 にエントリー中!
毎日投稿していく予定ですので、ぜひお気に入りボタンを押してお待ちください!
▼全話統合版(完結済)PDFはこちら
https://ashikamosei.booth.pm/items/6627473
一気に読みたい、DLしてオフラインで読みたい、という方はご利用ください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる