怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

文字の大きさ
上 下
58 / 150
浮遊霊は二人

客は私たち二人である

しおりを挟む
 地下図書館。それは何処かの地下にあり、怪奇現象を記したモノが揃う謎の図書館。
 入り口は様々なところにあるが基本的に閉じており、俺とひとね以外の人が入る事は無いといってもいい。
 前例はたった二回。俺に着いてきた少年と狸寝入りに憑かれた幽霊男だけだ。

 そんな地下図書館に……とある男がいた。
 シルクハットにタキシード。どこか英国紳士を思わせる男がひとねの部屋でパソコンとにらめっこしている。
「ひとね、アレは怪奇現象じゃないのか?」
「単独でここに来たから怪奇現象だと思ったんだけど……どうもソレらしい所が見当たらない」
 溜息なのか、覚悟を決めたのか、ともかく長く息を吐いたひとねは扉を勢いよく開ける。
「ここは怪奇探偵の、つまり私の部屋だ。君は誰で何の用でどうやってここに来た!?」
 威勢良く叫んではいるが……こりゃあ地味に緊張してるな。いつもは物事を一つ一つ確認するひとねがこのザマだ。
 そんなひとねと後ろの俺を見た英国紳士は「ふむ」と顎を撫でてシルクハットを整える。
「質問が多すぎて覚えきれなかったが……私の部屋? キミは今そう言ったね?」
「この地下図書館の住人で怪奇現象専門の探偵。それが私だ。で、こいつは助手の健斗」
 ひとねが一歩下り、俺を押す。
「おい、俺だけ名前を公開した上に盾にするな!」
「助手なら身を呈して守ってもいいだろう。私はまだ病み上がりなんだ」
「もう十分に歩けてるだろ、何が病み上がりだ」
「ハハハ、仲が良くて結構。しかし痴話喧嘩は後にしてくれるかな?」
 痴話喧嘩ではないのだが……そうだ、言い合いをしている場合ではなかったのだ。
「あの、彼女は確かに頼りなさそうですが……立派な怪奇探偵でここの住人ですよ」
「いや、レディが探偵らしくないから言った訳ではない。彼女がここの住人ではないから疑問に思っただけだ」
 その言葉を聞いてひとねが脇から顔を出す。
「……まるで本来の住人を知っているような口ぶりだね」
「うむ、その通り。ワタシはここの主人を知っている」
「へえ、誰だいそれは」
「ワタシだよ」
「……へ?」
 男は自身を指している。
「ワタシは中本トシ、怪奇譚の収集を生きがいとする……浮遊霊だ」

「浮遊霊?」
「簡単に言うなら死者の魂。幽体離脱でもその他怪奇現象の類でもなく、普通に死んだ人の魂だ」
「その通り。しかし探偵、探偵か」
 中本さんはひとねをまじまじと見て「ふむ」と頷く。
「キミ、どういう事情かは知らないがこの先も此処に住みたいのだろう?」
「ん、まあ……そうだ」
「しかし此処はワタシの所有物……だから取引をしよう。とある事を解明できたらこの地下施設はキミに差し上げよう」
「つまりは探偵業か……内容は?」
 中本さんはシルクハットを机に置き、自身の胸に手を当てる。
「ワタシの未練を、推理して欲しい」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

雨の向こう側

サツキユキオ
ミステリー
山奥の保養所で行われるヨガの断食教室に参加した亀山佑月(かめやまゆづき)。他の参加者6人と共に独自ルールに支配された中での共同生活が始まるが────。

Arachne 2 ~激闘! 敵はタレイアにあり~

ミステリー
学習支援サイト「Arachne」でのアルバイトを経て、正社員に採用された鳥辺野ソラ。今度は彼自身がアルバイトスタッフを指導する立場となる。さっそく募集をかけてみたところ、面接に現れたのは金髪ギャルの女子高生だった! 年下の女性の扱いに苦戦しつつ、自身の業務にも奮闘するソラ。そんな折、下世話なゴシップ記事を書く週刊誌「タレイア」に仲間が狙われるようになって……? やけに情報通な記者の正体とは? なぜアラクネをターゲットにするのか? 日常に沸き起こるトラブルを解決しながら、大きな謎を解いていく連作短編集ミステリ。 ※前作「Arachne ~君のために垂らす蜘蛛の糸~」の続編です。  前作を読んでいなくても楽しめるように書いたつもりですが、こちらを先に読んだ場合、前作のネタバレを踏むことになります。  前作の方もネタバレなしで楽しみたい、という場合は順番にお読みください。  作者としてはどちらから読んでいただいても嬉しいです! 第8回ホラー・ミステリー小説大賞 にエントリー中! 毎日投稿していく予定ですので、ぜひお気に入りボタンを押してお待ちください! ▼全話統合版(完結済)PDFはこちら https://ashikamosei.booth.pm/items/6627473 一気に読みたい、DLしてオフラインで読みたい、という方はご利用ください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...