怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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赤顏酒会

電子天狗の傲慢ぼやき

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 翌日、数時間円卓線に乗ったが収穫は無かった。
「うっ……」
 地下図書館のひとねの部屋に入った瞬間、思わず声が漏れる。
「収穫はどうだった?」
「なんだこの生臭い匂いは……」
「ああ、鯖だよ」
「鯖?」
 ひとねは頷いて奥にあった発泡スチロールを開ける。中には立派な鯖があった。
「鯖は天狗の弱点だ。このままじゃ弱いから少しおまじないをかけているけどね」
「なるほど」
「先に確実な二人にこれで処置をほどこした。酔っていたからこの鯖を一切れ皿に紛れ込ませた」
「……ん?」
 今の発言に二つの疑問が浮かんだ。
「お前、一人で外に出たのか?」
 ひとねの顔が少し不機嫌のそれになる。
「まあ、そうだけど」
「凄いじゃないか!」
 テンション高く褒めるとひとねは顔を赤くして反論してきた。
「私は引きこもりってわけじゃないぞ! 今までは足腰が弱っていたからだ」
「じゃあこれからはお前自信の足で調査出来るな?」
「なっ……」
 言い淀んだひとねは少し考えた後、高い声でまた反論する。
「わ、私は世間的には行方不明、死んだ事になってるからダメだ!」
 もしひとねを知っている人が見ても人ねは数年間成長していないのだから、常識的に考えて他人の空似だと思うだろう。
 まあいい、問題はもう一つだ。
「お前、その場に浦和さんいたんじゃないか?」
「もちろんいたよ」
「じゃあその時に浦和さんのアカウントは……?」
 ひとねは自慢気に頷く。
「もちろんだ」
「なるほど、それはいつの事だ」
「だいたい……一時間くらい前かな」
 なるほどなるほど、一時間前ね……俺が円卓線の電車に乗っていた時間だな。
「なら連絡しろよ!」
 大声を出す事を予知してか、ひとねは耳を塞いでいた。
「……このやろう」
 まあいい、大声を出したらスッキリした。
「で、浦和さんのアカウントを見てどうだったんだ?」
「…………」
「耳を塞ぐのやめろ!」
 ひとねの耳から手を離させると、ひとねは不満気に言う
「大声を出すのはやめたまえ、地下だから普通よりは反響しやすいんだ」
 やめたまえ、じゃねぇよ。
 改めて浦和さんの事について聞く。
「ああ、思った通りだったよ」
 ひとねに言われてパソコンをつける。画面に映し出されたのは浦和さんの『bostter』だ。
 アカウント名は『ホナゴ』『bostter』内では結構な有名人だ。
 そのぼやきは……
『今日も仕事をしてきたぜベイベー』
『ホナゴの人生相談の時間だ! 人生勝ち組の俺様が皆の相談にのるぜ!』
「…………」
 うーん、なんというか……傲慢に見えるなぁ。
 俺の複雑な表情を見てひとねは苦笑した。
「そう、浦和さんは『bostter』内で傲慢だったんだ」
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