怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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赤顏酒会

0と1には裏がある

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「うーん」
 俺は電車の中で頭を掻く。ピンポイントの調査と言ってもアカウントを見るくらいしかやれそうな事が無いのだ。
 どうしたものかと考えていると電車は例の会社の最寄り駅に着く。
 入ってきた数人の社会人の中にあのバッジをつけた二人組の女性がいた。
 調査をするべきかと思っていたが、その女性らは俺の隣に座った。
 座るなり二人はスマホを弄りながら雑談に花を咲かせる。話題は後輩社員についてのようだ。
 今回の事件には関係なさそうな人の話
 、『bostter』で見たような部長と次長の話。そんな話が続く。
「でさー、浦和っていっつもスマホ触ってない?」
「浦和? 誰だっけ?」
「ほら、あの細いの。部長と次長に連れまわされてる」
「あー、あの子かー。そんなに触ってる?」
 一人の女性がそう聞くともう一人が声を高くする。
「ホントずっとだよ、ずっと。スマホかパソコンのどっちか触ってるよ」
「へぇー」
 どうやら細身は浦和というらしい。いつもスマホかパソコンを触っている、か……スマホを触りながら言う事じゃあないよなぁ。
 何か手がかりになるかと考えようとするが、空腹がそれを邪魔した。
 今日はもういいだろう。俺はさっきの女性二人のアカウントを頭の中で反復して記憶する。
「……よし」
 記憶が終わった頃には最寄り駅が近づいていた。俺は最寄り駅で降り、地下図書館に向かう事にした。

 *

 俺はそのまま地下図書館に行き、ひとねに説明をした。
「ずっとスマホを触っている、か」
「まあ、今日の収穫はそんなところだ」
「お疲れ様、今日も食べていくといい。今日はガッツリしたものがいいな」
 労うというより料理が食いたいだけじゃねぇか……ふざけるな。
 文句を言う前にひとねは椅子を回転させてパソコンの電源を入れる。
 電車にいたあの女性二人のアカウントを開く。
『いつも帰ってる女の同期、愚痴しか言わなくてマジうざい』
『あいつ私の話聞いてないし(怒)』
 電車内ではあれだけ話していたというのに
「これが裏か、人って変わるもんだな」
「…………」
「ひとね?」
 返事がない。ひとねは目を閉じ口の上を揉むように摘んでいる。
 最近わかったのだがこれはひとねが考えてる、推理している時の癖らしい。
 少ししてから目を開けたひとねに俺は問う
「何か分かったのか?」
「……まあね、でもまだ確証は得られていない。引き続き調べていてくれたまえ。明日アカウントがわからなければ強行する」
「アカウントさえ分かればいいんだな」
「ああ」
 自信たっぷりにひとねは頷いた。
 恐らく謎は解けたのだろう。アカウントが欲しいのは念のため、という事だ。
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