怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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無意識かつ奇跡的

朦朧なる仮説

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 受話器を置き、彼に両親の事を話した。
 それで今回の件は解決……とはならなかった。
 しばらく待っても彼の熱は下がらない、偏食漠はまだ彼に取り憑いている。まだなにか隠されたモノがあるのだ。
 両親の死に対して彼が関わったのか……それとも目撃したのか……私は推理を再開する。
 叔母さんから彼の両親が事件にあった場所は聞いてある。
 母親は皆坂デパート、父親は□l□lだ。
 彼の父親の部屋に行き、パソコンをスリープモードから解除すると、ソフトが閉じられていた。さっき間違えて消してしまったのだろう。
 もう一度フォルダの奥底からソフトを起動する。やはり隠されるように置かれているな……
 URLを打ち込むのは面倒だ。検索履歴を開く。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月(開く)
 ・六月(開く)』
 今日は十二月十五日だから……長い間使われていないようだ。まあ、あんな奥底にあるのだから普通だ。
 さっきのページを開き、日付と場所だけを近くにあったチラシの裏に書き出す。
『五月二十九日・ミキリドライブ
 六月一日・バイクカナミチ
 六月七日・□l□l』
 これ以降の更新はない。最後の記事に書かれていたのは『翌日、□l□lに数ヶ月ぶりに行く』といった内容だ。
 叔母さんの証言とも一致する。彼の父親が事件にあって死んだのは六月八日、□l□lだ。
 母親の方は買う前に家計簿をつける癖でもあるようだ。
 彼の母親が事件にあったのは五月二日、皆坂デパート。
「…………」
 なにかが引っかかる。なにかがおかしい。
 母親は五月二日、父親は六月八日……六月八日?
 私はまた検索履歴を開く。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月(開く)
 ・六月(開く)』
 違和感の正体はこれだ。パソコンは七月、彼の両親が死んだ後にも開かれている。
 つまり、彼の両親ではない誰かがこのパソコンを使ったという事になる。彼、健斗である可能性が一番高い。
 そう仮定した場合疑問となるのは……何故彼がパソコンの検索ソフトを使ったか、だ。
 もちろん単純に検索したかったという可能性もある。しかし最近ではスマートフォンという便利な携帯もあるらしい。
 現に彼もそれを持っており何か調べ物をする時にスマートフォンを使っていた。
 つまり普通に検索するならば検索ソフトを使う必要はないのだ。パソコンならまだしも、検索ソフトを。
 しかも検索ソフトは隠すようにされていた。
 ……彼は何かを隠しながら何かをしたかったのだ。
 ならば検索履歴を消せばいいのだが……警察に対しては意味をなさないだろう。
「なんだか雲行きが怪しくなってきたな……」
 そう呟きながら検索履歴を詳しく見る。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月 
     二日 犯罪予告サイト
 ・六月
     八日 犯罪予告サイト』
「犯罪予告サイト……」
 蜃機楼事件の時にあったものだ。
 その時、彼はこのサイトを知らなかった。ならばこの検索ソフトは彼と関係がない……
「いや、違うな」
 言葉に出して否定する。今回の場合は彼の記憶はアテにならない。
 寧ろ関係があるから偏食漠の力で忘れている可能性のほうが高いのだ。
「犯罪予告サイト……ソフトの隠蔽……」
 呟きながら蜃機楼事件の時に見た犯罪予告サイトを思い出す。
「確か……あの時最後に見た犯罪予告の題名……いや、まさか……」 
 浮かびかけた仮説に自分で驚く。
 浮かんだ仮説は曖昧な記憶を元に出されたものだ。信用性は低い。だが……彼、健斗のためを思うなら
「今回ばかりは、このまま謎としていた方がいいかもしれない……」
 私は小さく、そう呟いた。
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