怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

文字の大きさ
上 下
37 / 150
無意識かつ奇跡的

朦朧なる仮説

しおりを挟む
 受話器を置き、彼に両親の事を話した。
 それで今回の件は解決……とはならなかった。
 しばらく待っても彼の熱は下がらない、偏食漠はまだ彼に取り憑いている。まだなにか隠されたモノがあるのだ。
 両親の死に対して彼が関わったのか……それとも目撃したのか……私は推理を再開する。
 叔母さんから彼の両親が事件にあった場所は聞いてある。
 母親は皆坂デパート、父親は□l□lだ。
 彼の父親の部屋に行き、パソコンをスリープモードから解除すると、ソフトが閉じられていた。さっき間違えて消してしまったのだろう。
 もう一度フォルダの奥底からソフトを起動する。やはり隠されるように置かれているな……
 URLを打ち込むのは面倒だ。検索履歴を開く。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月(開く)
 ・六月(開く)』
 今日は十二月十五日だから……長い間使われていないようだ。まあ、あんな奥底にあるのだから普通だ。
 さっきのページを開き、日付と場所だけを近くにあったチラシの裏に書き出す。
『五月二十九日・ミキリドライブ
 六月一日・バイクカナミチ
 六月七日・□l□l』
 これ以降の更新はない。最後の記事に書かれていたのは『翌日、□l□lに数ヶ月ぶりに行く』といった内容だ。
 叔母さんの証言とも一致する。彼の父親が事件にあって死んだのは六月八日、□l□lだ。
 母親の方は買う前に家計簿をつける癖でもあるようだ。
 彼の母親が事件にあったのは五月二日、皆坂デパート。
「…………」
 なにかが引っかかる。なにかがおかしい。
 母親は五月二日、父親は六月八日……六月八日?
 私はまた検索履歴を開く。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月(開く)
 ・六月(開く)』
 違和感の正体はこれだ。パソコンは七月、彼の両親が死んだ後にも開かれている。
 つまり、彼の両親ではない誰かがこのパソコンを使ったという事になる。彼、健斗である可能性が一番高い。
 そう仮定した場合疑問となるのは……何故彼がパソコンの検索ソフトを使ったか、だ。
 もちろん単純に検索したかったという可能性もある。しかし最近ではスマートフォンという便利な携帯もあるらしい。
 現に彼もそれを持っており何か調べ物をする時にスマートフォンを使っていた。
 つまり普通に検索するならば検索ソフトを使う必要はないのだ。パソコンならまだしも、検索ソフトを。
 しかも検索ソフトは隠すようにされていた。
 ……彼は何かを隠しながら何かをしたかったのだ。
 ならば検索履歴を消せばいいのだが……警察に対しては意味をなさないだろう。
「なんだか雲行きが怪しくなってきたな……」
 そう呟きながら検索履歴を詳しく見る。
『検索履歴
 ・十二月
     十五日日 yohooブログ
 ・七月 
     二日 犯罪予告サイト
 ・六月
     八日 犯罪予告サイト』
「犯罪予告サイト……」
 蜃機楼事件の時にあったものだ。
 その時、彼はこのサイトを知らなかった。ならばこの検索ソフトは彼と関係がない……
「いや、違うな」
 言葉に出して否定する。今回の場合は彼の記憶はアテにならない。
 寧ろ関係があるから偏食漠の力で忘れている可能性のほうが高いのだ。
「犯罪予告サイト……ソフトの隠蔽……」
 呟きながら蜃機楼事件の時に見た犯罪予告サイトを思い出す。
「確か……あの時最後に見た犯罪予告の題名……いや、まさか……」 
 浮かびかけた仮説に自分で驚く。
 浮かんだ仮説は曖昧な記憶を元に出されたものだ。信用性は低い。だが……彼、健斗のためを思うなら
「今回ばかりは、このまま謎としていた方がいいかもしれない……」
 私は小さく、そう呟いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...