怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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無意識かつ奇跡的

ハマグリ暗号

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「やあ、来たね」
 地下図書館の部屋に入ると、ひとねはパソコン用の椅子に座っていた。
 ひとねが調べ物をする事といえば……
「なんだ、また甘味探しか?」
「……違う」
 うわ、不機嫌そうな顔……
「依頼だよ、依頼」
「ああ……」
 怪奇現象関係の依頼か。少し気になったのでパソコンを覗く。
 画面に映し出されていたのはメールに添付されていた一枚の画像だ。
 どこかのサイトを写したもののようだが……
「文字化け?」
 サイトに書いてあるのは文字ではなかった。パソコンで表現できるような記号じゃない
「これが怪奇現象なのか?」
「まあ、そうだね」
 ひとねは体をパソコンの方にくるりと回してマウスを動かす。
「今回の怪奇現象は……現代版蜃気楼だね」
「蜃気楼? それって気象とか科学的なものじゃないのか?」
「確かにそうだ。しかし蜃気楼が科学的に証明されるまで、それは妖怪として扱われていたんだよ」
 そう言ってひとねは机に置いてあった本を突き出してきた。付箋が貼られてあるページを開く。
 大きな貝が霧のようなものを出している絵が描かれている。
「蜃気楼はもともとハマグリの妖怪として語り継がれていたんだよ」
「いや、それはいいけどさ……この文字化けのどこが蜃気楼なんだよ」
「怪奇現象として蜃気楼を起こしても、今では科学的なものだと認識されてしまう……それは怪奇現象が存在していないと同義になるんだよ。怪奇現象は人による認識を重視する、人に認識されようと主張する、だよ」
「でも蜃気楼と今回の現象に関連性がなさすぎないか? 怪奇現象ってそんなものでいいのか?」
「本当に質問ばっかりだね……」
 ひとねはため息をつく
「関連性はあるよ、どちら視覚的に人を惑わしているんだ。まあ……それくらいの関連性でいいくらいには適当なんだよ」
「ふうん……」
 怪奇現象の由来にそれほど興味もない、俺はパソコンに視線を移す。
「……で? この怪奇現象はそうやって解決するんだ」
 ひとねはまたため息をついた。
「たまには頭を動かしたらどうだい……そうだ」
 なにか思いついたような顔をしたひとねは、パソコンの画面をスクロールさせる。
 新たに数枚の写真が画面に表れる。
 それにしてもこのサイト……
「なんか不気味だな」
「犯罪予告サイトというらしいよ、最初はおふざけだったんだろうけど……最近になって幾つかの書き込みが本当の犯罪予告だったことが判明して一部で話題らしい」
「へえ、物騒な話だな」
 変な流行りだ。
「それでも九割方は嘘の、おふざけの犯罪予告らしいけどね……お、あったあった」
 ひとねの手招きでパソコンを覗く。読むことのできない謎の記号が羅列しているなか、意味はわからないが一応判別できるものが並ぶ箇所があった。

『◯.9 □.8 ◯.5、
    ☆/2.7 △.0 ◯.1 □/2.0
      かくはだんじはれつ』

「この暗号を解くのが、今回の怪奇現象を解決する方法だよ」
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