怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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悪魔と狸と時々探偵

狸の余命寝入り

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 結論だけを言ってしまうと寺にも男の身体は無かった。
 俺たちはひとまず近くの喫茶店に入って考える。
「あれだけ探して見落としということは無いはずだ。あれで見つからないところなら事件性すら感じてしまうね」
「じゃあまだ探していないところがあるってのか?」
「そう考えるのが妥当だ」
「昔神社だったとか……ですかね」
「あり得るが……そうなったらお手上げだ」
「合掌の記憶の中には手しか浮かんでないんですか?」
 俺の質問に男は頷く。
「はい。こうやってパチンと合わさる手が。それも沢山」
「沢山なら虫を叩いたとかではないのだろうなぁ」
 俺の言葉にひとねが「へぇ」と声を出した。
「そもそも合掌では無い説か。たしかにそれもアリだね」
 ひとねは運ばれてきたイチゴショートケーキに目を光らせる。
「さっきまでの落ち込みはどこ行ったんだ」
「それはそれ、渋々違うものにして食べていたのでは甘味に失礼だ」
「何その理論」
 その尊敬というか気遣いを少しでもいいからこっちに向けてほしい……
「ちゃんと感謝の念をこめてだね、こう、いただきます……と……」
 俺を含めた三人が固まる。
「これは……合掌?」

 *

「せいやー!」
 脆くなっていた裏口のドアがひとねの声と共に破られた。いや、破ったのは俺だけど。
「本当にここでいんだよな! これ不法侵入じゃないよな!」
「ああ、彼が幽霊になった日とこの店が閉まった日は一致している」
「いや、そうだけども!」
 そう、ここはさっきひとねが行こうとしていた甘味の店である。確かに通行人の証言から日は一致している。
「それに……ここであると私もうれしい!」
 根拠それだけ!?
「私情が挟まりすぎてるだろ! 下手すれば犯罪者だぞ!」
「まあそれだけじゃない。ここの店主は元鞄職人。利き手にあるタコとかはそれにつかう『やっとこ』の道具が当たる場所だ」
「おお……なるほど」
 つかなんだその偏った知識は。
 そんな会話をしているうちに店主が、霊体の男と同じ顔の男がキッチンで横たわっていた。
「さ、早く入れ。そして礼として例のモノを作れ!」
 ひとねが男の背中を押す。幽霊の男は元々の身体にぶつかり……
「ん……おお! 身体!」
 元に戻ったのだった。
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