怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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ちのみごカラス

苦き記憶の忘却

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「じゃあ、また」
「ああ、今日はご苦労様」
 地下図書館で夕食を食べてから帰路につく。
 明かりのついている家々を横切り、一部屋だけ明かりがついている俺の前に立つ。
 インターホンを鳴らすこと無くポケットから鍵を出し、扉を開ける。
 インターホンで確かめる必要なんて無い。明かりは防犯の為につけているだけだ。
 俺の家には、俺以外誰もいないのだから。
「……あれ?」
 自分の思考に疑問を抱く。
『誰もいない?』
 俺の家は貸家でも無ければ学校の寮などでは無い。大きくは無いにしろ買った家である。
 ならばなぜ、なぜ俺しか……
「……いっ!」
 頭が急激に痛み、思考が途切れる。
 目の前には玄関しかないというのに脳から違うイメージがおくられてくる。
 色んな物が混じったような生物。クマ……ゾウ……トラ……
 そこまで考えたところでまた思考は途切れ、イメージが動きだす。
 謎の生物は俺の方に移動し、大きく口を開けて……
「うわっ……いった!?」
 生物が口を閉じた瞬間、収まりかけていた頭痛が強くなり、頭がショートしたような感覚を覚えた。
 イメージと頭痛が消えると立ちくらみのように目の前が真っ暗になり、俺は玄関に膝を……

 *

「……ん?」
 ふと目を開けると俺は玄関で膝をついていた。
「…………?」
 靴も脱がずに俺は何を……?
「……あ、そうか」
 俺は玄関に入ってから立ちくらみを起こしたんだ。それでこんな風に膝をついているのだ。
 俺は立ちあがりつつ、落としてしまっていた鍵を拾う。
 どうも立ちくらみを起こす前、俺は何かを考えていた気がするのだが……
「まあ、いいか」
 思い出せないのならば考えていなかったのだろう。記憶力には自信がある。
「さて、と」
 明日は日曜日だ。特に友人との予定も無いし、地下図書館にでも向かおうかな。
 ひとねのやつは俺が作りにいかないとレトルト食品ばっかり食べるからな……
「まあ、レトルトだろうが自分で食べるだけでもマシになったか」
 一人呟いて家の電気をつける
「全く、世話の焼けるやつだな」
 ひとねの顔を浮かべて微笑む程度に笑い、俺はいつもどおり家の中に入っていった。
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