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ワンシックスの吸血鬼
チャットリシラベ
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翌日、俺が地下図書館に入るといつもの椅子にひとねがいなかった。
「ひとね? 部屋か?」
聞きながら本棚の間に通路が出来ているのを確認、やっぱり部屋か。
部屋に入るとひとねはパソコンを操作していた。
「何か進展でもあったか?」
「いや、今からチャットをする所だよ」
あれ? 学校から一旦家に寄ったから五時半は過ぎてる筈……時計を見ると六時だ。
「もう五時半過ぎてるけど」
「そのはずなんだけど来ないんだ」
「高校生らしいし部活とか終わって無いんじゃ」
もし定時高校ならば授業中の時間だし
「いや、昨日大丈夫と返信が来た」
「そっか」
俺はパンパンに膨らんだビニール袋を机に置く。中身はひとねに頼まれた食品だ。
「ひとね、冷蔵庫無いのか?」
「冷蔵庫? 冷蔵庫を使うものを頼んだ覚えは無いけど」
そう、ひとねに頼まれたのはパックのご飯とふりかけと栄養ゼリーのみ。しかしだ
「ご飯と栄養ゼリーだけじゃ食事にならないだろ」
そう思って適当に野菜とかを買ってきたのだ。
「君は勝手にそんなものを」
あらら、やっぱり勝手に買うのはまずかったか……
「大体必要最低限の、体を動かせるくらいの物で充分なんだ」
「それでもご飯と栄養ゼリーって」
「大怪我で寝る前もそれで充分だった」
強情な……
「甘い物は食べるくせに……」
「そ、それは長く眠っていて気が緩んだんだ」
それに、とひとねは声を少し低くして続けた
「私が怪奇現象を調査しているのは死ぬ為なんだから」
「死ぬ為って、また大袈裟な」
不死鳥の効果が無くなった所で不老不死が無くなるだけ、死ぬわけじゃないだろう
「大袈裟何かじゃないよ、私は不死鳥を私から追い払ったら死ぬつもりだ」
「えっ……でも」
そこまで言ったところでパソコンから電子音が鳴る。
「やっと来たようだね、雑談はおしまいだ」
雑談って……中々の内容だったぞ
ともかく始まったチャットを俺も見る。
・金田さんが入室しました。
『すいません、寝てしまっていました』
『別に構わない』
『すいません』
『問題ない、幾つか質問をしたくてチャットにした』
『わかりました』
『早速質問いいかな?』
『はい』
『家族以外に吸血衝動が起きた事は?』
『無いです』
ここでひとねは手を止める。
「どうした? ひとね」
「いや、異性にのみならわかるが家族だけは今までに無かったから」
まあいい、とひとねは再開する。
『吸血衝動や異変が起きたのはいつぐらいだ?』
『どちらも一週間程前です』
『夢遊病では無いか?』
『違います』
『最近寝てる間に目が覚める事は?』
『無いです』
ここでまたひとねは呟く
「吸血鬼の影響すら受けていない……? 吸血鬼では無いのか?」
「違うのか?」
「わからない、とりあえず今は吸血鬼と過程しよう」
『寝てる時に動く現象に対する目撃者は何人だ?』
『家族の三人です』
『それに対する印象は?』
『何故この時間に此処に、と』
『此処というのは?』
『廊下です、トイレに向かう廊下では無かったようなので』
『弟は中学生か?』
『小学二年生です』
『ニンニクは嫌いか?』
『いえ』
『宗教など信じている物は?』
『特には無いです』
『鏡には映るか?』
『……え?』
『鏡に自分の姿が映るか?』
『えっと……見てみます』
少しの沈黙。
『ぶみゃも!さら?なさまらの』
『……はあ?』
『すいません、こけてキーを入力しちゃいました』
『大丈夫か?』
『はい、いつもの事なので』
『……で、どうだった?』
『それです! 見えません! 映りません!』
『そうか、今日は終わりだ、ありがとう』
『え、』
『鏡に映らなくてもそれ以上の不都合は無い、安心していい』
『……はい』
ひとねはまた呟いた
「他の可能性……土地呪いも調べておくか」
『最後に、吸血衝動より前に一番最後に行った場所は?』
『図書館です』
『じゃあまたメールをする』
『はい』
・シャーロックが退室しました。
「ふう……わからない事が増えてしまった」
「吸血鬼じゃないのか?」
「吸血衝動や鏡に映らないのは吸血鬼そのものだが家族にしか衝動がわかず夜に活発にならない……微妙な所だ」
「とりあえず杭を打ってみたら?」
ひとねは首を横に振る
「怪奇現象が何かわからない以上迂闊な事は出来ない」
ひとねは溜息をついてビニール袋からご飯と割り箸を出した。
「おかずも食えよ、買ってきたんだから」
「最低限の物だけでいい」
「いいから食え!」
俺は唐揚げをひとねの口にほりこんだ。
「…………」
仕方ないという様子で唐揚げを噛んで飲み込んだ後、ひとねは小さく一言
「……もう一個」
「ほれ、沢山食え」
二個目の唐揚げを飲み込んだひとねは心なしか顔を赤くして言った。
「君はお節介でお人好しすぎる」
「お褒めの言葉をどうも」
「ひとね? 部屋か?」
聞きながら本棚の間に通路が出来ているのを確認、やっぱり部屋か。
部屋に入るとひとねはパソコンを操作していた。
「何か進展でもあったか?」
「いや、今からチャットをする所だよ」
あれ? 学校から一旦家に寄ったから五時半は過ぎてる筈……時計を見ると六時だ。
「もう五時半過ぎてるけど」
「そのはずなんだけど来ないんだ」
「高校生らしいし部活とか終わって無いんじゃ」
もし定時高校ならば授業中の時間だし
「いや、昨日大丈夫と返信が来た」
「そっか」
俺はパンパンに膨らんだビニール袋を机に置く。中身はひとねに頼まれた食品だ。
「ひとね、冷蔵庫無いのか?」
「冷蔵庫? 冷蔵庫を使うものを頼んだ覚えは無いけど」
そう、ひとねに頼まれたのはパックのご飯とふりかけと栄養ゼリーのみ。しかしだ
「ご飯と栄養ゼリーだけじゃ食事にならないだろ」
そう思って適当に野菜とかを買ってきたのだ。
「君は勝手にそんなものを」
あらら、やっぱり勝手に買うのはまずかったか……
「大体必要最低限の、体を動かせるくらいの物で充分なんだ」
「それでもご飯と栄養ゼリーって」
「大怪我で寝る前もそれで充分だった」
強情な……
「甘い物は食べるくせに……」
「そ、それは長く眠っていて気が緩んだんだ」
それに、とひとねは声を少し低くして続けた
「私が怪奇現象を調査しているのは死ぬ為なんだから」
「死ぬ為って、また大袈裟な」
不死鳥の効果が無くなった所で不老不死が無くなるだけ、死ぬわけじゃないだろう
「大袈裟何かじゃないよ、私は不死鳥を私から追い払ったら死ぬつもりだ」
「えっ……でも」
そこまで言ったところでパソコンから電子音が鳴る。
「やっと来たようだね、雑談はおしまいだ」
雑談って……中々の内容だったぞ
ともかく始まったチャットを俺も見る。
・金田さんが入室しました。
『すいません、寝てしまっていました』
『別に構わない』
『すいません』
『問題ない、幾つか質問をしたくてチャットにした』
『わかりました』
『早速質問いいかな?』
『はい』
『家族以外に吸血衝動が起きた事は?』
『無いです』
ここでひとねは手を止める。
「どうした? ひとね」
「いや、異性にのみならわかるが家族だけは今までに無かったから」
まあいい、とひとねは再開する。
『吸血衝動や異変が起きたのはいつぐらいだ?』
『どちらも一週間程前です』
『夢遊病では無いか?』
『違います』
『最近寝てる間に目が覚める事は?』
『無いです』
ここでまたひとねは呟く
「吸血鬼の影響すら受けていない……? 吸血鬼では無いのか?」
「違うのか?」
「わからない、とりあえず今は吸血鬼と過程しよう」
『寝てる時に動く現象に対する目撃者は何人だ?』
『家族の三人です』
『それに対する印象は?』
『何故この時間に此処に、と』
『此処というのは?』
『廊下です、トイレに向かう廊下では無かったようなので』
『弟は中学生か?』
『小学二年生です』
『ニンニクは嫌いか?』
『いえ』
『宗教など信じている物は?』
『特には無いです』
『鏡には映るか?』
『……え?』
『鏡に自分の姿が映るか?』
『えっと……見てみます』
少しの沈黙。
『ぶみゃも!さら?なさまらの』
『……はあ?』
『すいません、こけてキーを入力しちゃいました』
『大丈夫か?』
『はい、いつもの事なので』
『……で、どうだった?』
『それです! 見えません! 映りません!』
『そうか、今日は終わりだ、ありがとう』
『え、』
『鏡に映らなくてもそれ以上の不都合は無い、安心していい』
『……はい』
ひとねはまた呟いた
「他の可能性……土地呪いも調べておくか」
『最後に、吸血衝動より前に一番最後に行った場所は?』
『図書館です』
『じゃあまたメールをする』
『はい』
・シャーロックが退室しました。
「ふう……わからない事が増えてしまった」
「吸血鬼じゃないのか?」
「吸血衝動や鏡に映らないのは吸血鬼そのものだが家族にしか衝動がわかず夜に活発にならない……微妙な所だ」
「とりあえず杭を打ってみたら?」
ひとねは首を横に振る
「怪奇現象が何かわからない以上迂闊な事は出来ない」
ひとねは溜息をついてビニール袋からご飯と割り箸を出した。
「おかずも食えよ、買ってきたんだから」
「最低限の物だけでいい」
「いいから食え!」
俺は唐揚げをひとねの口にほりこんだ。
「…………」
仕方ないという様子で唐揚げを噛んで飲み込んだ後、ひとねは小さく一言
「……もう一個」
「ほれ、沢山食え」
二個目の唐揚げを飲み込んだひとねは心なしか顔を赤くして言った。
「君はお節介でお人好しすぎる」
「お褒めの言葉をどうも」
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