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勝利の大味は大犬も喰わぬ
ウルフ・オープニングアクト
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パブロフの討伐が始まって数十分ほど経った時、棋王が黄色の扇を上げ数人が笛のようなモノに口をつける。
法螺貝のような音が辺りに鳴り響き防衛隊と一番隊が前後に入れ替わる。
防衛隊が少し耐えた後二番隊が一番隊の代わりとなって前線に立った。
「一班から三班は引き継ぎ重症を、三班以降にNo.1からNo.5の薬品を五ケース!」
キリーさんが叫ぶと同時に俺の班のメンバーが動きだす。
「No.3担当します!」
副班長からのサインを見て声を出す。
俺を含む治療補助班の基本的な仕事は薬剤の供給である。班長であるキリーさんの指示を受けて各班に適切な薬剤を運搬するのである。
人が足りない場合はサポートに入る事になっているが、基本は体力勝負だ。
「どんな軽傷でも治療して貰え! 少しの油断が死に繋がるぞ!」
団長の声を聞いて戦場の方を見る。一番隊の人たちが到着したようだ。
重症の人は中継班によって事前に送られる為この時に来ることは少ないという。
重症人を治療するのは番号の少ない班が中心となっている。
「治療が終わった人は此方に来てください!」
薬品を運び終えたら補給班に混ざり水などの補給に回る。
一番隊の治療が終わりようやく一息つく。運んだ薬剤は少し余るくらいだった、キリーさんの采配が完璧だったのだろう。
少しするとあの法螺貝のような音が鳴り響いた。
*
戦法的には織田信長の三段構えのような感じだろうか。
あの後二番隊、三番隊と入れ替わって二巡目になった。
疲れがあるのか一巡目と比べて途中で運ばれて来る人が数人増えている。
「さっきより薬多めに、No.8から11、あと14も追加!」
キリーさんが戦況を見て指示を出す。まるで第二の軍師だ。
言われた薬を運び終わった時、徐々に集まってきていたパブロフが急に増えだした。
法螺貝の音が鳴る。さっき交代したばかりなんじゃ……
そんな疑問は即座に打ち消された。前線の少し後ろにいた棋王は俺たちより早くアレが見えていたのだ。
上げられた扇は赤。
それは最上位の危険信号。全防衛隊が前線に集結するほどのモノだ。
今回の討伐戦においてそれ程のモノは一つしかない。
ゆっくりと歩く大きな影。その下にある岩はあっけなく砕け散り、前足の一振りで周りの木々が薙ぎ倒されて行く。
触ると怪我をしそうなくらいバサバサな白い毛。岩のような固そうな何かを一部に纏い、大きさ故か身体を震わせると煙が立つ。
それは少しすると歩みを止め、ルビーのような深紅の目で俺たちを睨みつける。
緊張からか五感が混乱狂い出す。目の前にいるような錯覚を与え、聞こえるはずのない息遣いが伝わってくる。
犬などではない。まさにその姿は……『白狼』の名に相応しかった。
法螺貝のような音が辺りに鳴り響き防衛隊と一番隊が前後に入れ替わる。
防衛隊が少し耐えた後二番隊が一番隊の代わりとなって前線に立った。
「一班から三班は引き継ぎ重症を、三班以降にNo.1からNo.5の薬品を五ケース!」
キリーさんが叫ぶと同時に俺の班のメンバーが動きだす。
「No.3担当します!」
副班長からのサインを見て声を出す。
俺を含む治療補助班の基本的な仕事は薬剤の供給である。班長であるキリーさんの指示を受けて各班に適切な薬剤を運搬するのである。
人が足りない場合はサポートに入る事になっているが、基本は体力勝負だ。
「どんな軽傷でも治療して貰え! 少しの油断が死に繋がるぞ!」
団長の声を聞いて戦場の方を見る。一番隊の人たちが到着したようだ。
重症の人は中継班によって事前に送られる為この時に来ることは少ないという。
重症人を治療するのは番号の少ない班が中心となっている。
「治療が終わった人は此方に来てください!」
薬品を運び終えたら補給班に混ざり水などの補給に回る。
一番隊の治療が終わりようやく一息つく。運んだ薬剤は少し余るくらいだった、キリーさんの采配が完璧だったのだろう。
少しするとあの法螺貝のような音が鳴り響いた。
*
戦法的には織田信長の三段構えのような感じだろうか。
あの後二番隊、三番隊と入れ替わって二巡目になった。
疲れがあるのか一巡目と比べて途中で運ばれて来る人が数人増えている。
「さっきより薬多めに、No.8から11、あと14も追加!」
キリーさんが戦況を見て指示を出す。まるで第二の軍師だ。
言われた薬を運び終わった時、徐々に集まってきていたパブロフが急に増えだした。
法螺貝の音が鳴る。さっき交代したばかりなんじゃ……
そんな疑問は即座に打ち消された。前線の少し後ろにいた棋王は俺たちより早くアレが見えていたのだ。
上げられた扇は赤。
それは最上位の危険信号。全防衛隊が前線に集結するほどのモノだ。
今回の討伐戦においてそれ程のモノは一つしかない。
ゆっくりと歩く大きな影。その下にある岩はあっけなく砕け散り、前足の一振りで周りの木々が薙ぎ倒されて行く。
触ると怪我をしそうなくらいバサバサな白い毛。岩のような固そうな何かを一部に纏い、大きさ故か身体を震わせると煙が立つ。
それは少しすると歩みを止め、ルビーのような深紅の目で俺たちを睨みつける。
緊張からか五感が混乱狂い出す。目の前にいるような錯覚を与え、聞こえるはずのない息遣いが伝わってくる。
犬などではない。まさにその姿は……『白狼』の名に相応しかった。
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