63 / 199
散った火花は消えることを知らず
昼またぎの心理戦
しおりを挟む
翌日の昼前、既に混み合っている商店通りでコカナシと会うことになっていた。
「あれ? セルロースさんも?」
待ち合わせ場所にはコカナシとセルロースさんがいた。
「私を丸め込もうたってそうはいきません。寧ろこちらがタカを取り込むくらいの気持ちでいかなければ」
「和解という手は?」
「私は何もしていません。キミア様が謝るまで私は帰りませんよ」
この話は終わりとばかりにコカナシは顔を背けた。
「で、肝心のキミアは何してるの?」
「昨日酔い潰れた末に間違えて睡眠薬を飲んでぐっすりです」
「え! だいじょ……なんでもありません!」
途中で怒りを取り戻したコカナシに代わってセルロースさんが口を開く。
「それって大丈夫なの?」
「シャーリィさんに聞いて見ましたけど問題無いそうです」
朝先生の状態を確認してから一応聞いておいた。シャーリィさんによれば今日中には目を覚ますだろうとの事だ。
「タカくん昼食べた?」
「いえ、まだです」
「じゃあとりあえず昼飯にしよっか。コカナシちゃんもそれでいい?」
コカナシが頷いたのを見てセルロースさんが歩き出す。コカナシが何も言わずその後に着いて行った。
*
先生に対するコカナシは俺たちに対するコカナシとは結構違う。
先生と話すコカナシは何というか……子供っぽいのだ。ローラさんと話していた時は自分でそれを『違う自分を演じている』と表現していた。
今までコカナシの態度が変わるのは主に先生だけだと思っていたのだが、今回の件で気づいた事がある。
セルロースさんに対するコカナシもまた違うという事だ。
あまりに構ってくるから鬱陶しいと思っている。なるべく近づかない。そんな扱いだと思っていたがどうやら違う。
コカナシとセルロースさんは姉妹のようなのだ。
セルロースさんと話しているコカナシは先生の時と同じく少し幼く見える。でも先生の時とは違って自然な、演じていない印象を受けた。
いつも嫌がっているアレだってもしかしたら照れ隠しだったりするかもしれない。
ここまで考えて心の中でかぶりを振る。
まだ出会って一年も経っていないのにわかったようになってはいけない。
だって俺は……
「絶対私から歩み寄りません」
今コカナシを説得する事さえ出来ないのだから。
どうにも出来そうに無くてセルロースに視線を向ける。
「完全にコカナシちゃん寄りだから。今回はキミアが悪い」
頼みの綱に離された。これは分が悪すぎる。
俺は降参とばかりに手をあげる。
「どっちの話も聞いたけど……俺にはどっちも責められない」
「中立、ですか」
「まあそんな感じ。直接話しにくい事があったら伝言役として使ってくれ」
「敵じゃないならいいです」
少しだけ、ほんの少しだけ機嫌を直したらしいコカナシがフォークを置いて口を拭く。
「で、タカくんはどうする?」
「……なにがですか?」
「あたし達これから買い物に行くけど」
商店通りに用事は無いが……コカナシを外に出すのは心配だ。
セルロースさんにフワッと話して協力を得るのは……ダメだ、先生の肩を持った俺の策略だと思われたらややこしくなる。
現状俺に出来そうなのは着いて行く事くらいか。
「行きます。あまり見てないし」
「よし、荷物持ち確保ー!」
セルロースさんとコカナシがハイタッチ。
「…………」
はめられた!!
「あれ? セルロースさんも?」
待ち合わせ場所にはコカナシとセルロースさんがいた。
「私を丸め込もうたってそうはいきません。寧ろこちらがタカを取り込むくらいの気持ちでいかなければ」
「和解という手は?」
「私は何もしていません。キミア様が謝るまで私は帰りませんよ」
この話は終わりとばかりにコカナシは顔を背けた。
「で、肝心のキミアは何してるの?」
「昨日酔い潰れた末に間違えて睡眠薬を飲んでぐっすりです」
「え! だいじょ……なんでもありません!」
途中で怒りを取り戻したコカナシに代わってセルロースさんが口を開く。
「それって大丈夫なの?」
「シャーリィさんに聞いて見ましたけど問題無いそうです」
朝先生の状態を確認してから一応聞いておいた。シャーリィさんによれば今日中には目を覚ますだろうとの事だ。
「タカくん昼食べた?」
「いえ、まだです」
「じゃあとりあえず昼飯にしよっか。コカナシちゃんもそれでいい?」
コカナシが頷いたのを見てセルロースさんが歩き出す。コカナシが何も言わずその後に着いて行った。
*
先生に対するコカナシは俺たちに対するコカナシとは結構違う。
先生と話すコカナシは何というか……子供っぽいのだ。ローラさんと話していた時は自分でそれを『違う自分を演じている』と表現していた。
今までコカナシの態度が変わるのは主に先生だけだと思っていたのだが、今回の件で気づいた事がある。
セルロースさんに対するコカナシもまた違うという事だ。
あまりに構ってくるから鬱陶しいと思っている。なるべく近づかない。そんな扱いだと思っていたがどうやら違う。
コカナシとセルロースさんは姉妹のようなのだ。
セルロースさんと話しているコカナシは先生の時と同じく少し幼く見える。でも先生の時とは違って自然な、演じていない印象を受けた。
いつも嫌がっているアレだってもしかしたら照れ隠しだったりするかもしれない。
ここまで考えて心の中でかぶりを振る。
まだ出会って一年も経っていないのにわかったようになってはいけない。
だって俺は……
「絶対私から歩み寄りません」
今コカナシを説得する事さえ出来ないのだから。
どうにも出来そうに無くてセルロースに視線を向ける。
「完全にコカナシちゃん寄りだから。今回はキミアが悪い」
頼みの綱に離された。これは分が悪すぎる。
俺は降参とばかりに手をあげる。
「どっちの話も聞いたけど……俺にはどっちも責められない」
「中立、ですか」
「まあそんな感じ。直接話しにくい事があったら伝言役として使ってくれ」
「敵じゃないならいいです」
少しだけ、ほんの少しだけ機嫌を直したらしいコカナシがフォークを置いて口を拭く。
「で、タカくんはどうする?」
「……なにがですか?」
「あたし達これから買い物に行くけど」
商店通りに用事は無いが……コカナシを外に出すのは心配だ。
セルロースさんにフワッと話して協力を得るのは……ダメだ、先生の肩を持った俺の策略だと思われたらややこしくなる。
現状俺に出来そうなのは着いて行く事くらいか。
「行きます。あまり見てないし」
「よし、荷物持ち確保ー!」
セルロースさんとコカナシがハイタッチ。
「…………」
はめられた!!
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる