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散った火花は消えることを知らず
火種はもうすぐそこに
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先生とコカナシがナディの抗体についての議論を始めたから俺は逃げ出すように外に出た。ああいう難しい話は頭が痛くなる。
外に出たからと言って特に目的もなく歩いていると商店通りにたどり着く。
「おお……すげぇな」
道路並みの広さだがここは歩行者天国になっているらしい。名産の布以外にも旅に必要な寝袋とか食料とか大抵のものが揃いそうだ。さすが交通の便が経つ街である。
美味しそうな塩焼き鳥があったので一本買って食べ歩きを始める。最近は先生の仕事を手伝う代わりに幾らかのお金を得ていた。
コカナシが作ってくれる栄養バランスの考えられた物もいいがたまにはこういう栄養度外視の物も食べたくなる。身体に悪そうなカップ麺とか。
この世界にカップ麺はあるのだろうか? 大抵の食生活は同じだが、パン食だからなぁ……米が食いたい。
そんな事を考えながら大通りを抜けると広場に出た。真ん中に噴水、端にはベンチ。どうやら公園的な場所らしい。
一番端のベンチに座り道中買ったドーナツ的なお菓子を齧る。ドーナツというよりはサーターアンダギーか。
食べ進めていると喉が渇いてきた。そんなタイミングで後ろからコーヒーが現れた。
「観光? コカナシちゃんは?」
「残念ながら先生と同じですよ、セルロースさん」
コーヒーを受け取って代わりにドーナツを一つ渡す。
「ねえ、これ何だかわかる?」
セルロースさんが何故か自慢気に取り出したのは少しゴツめの布。
「……布、ですね」
「そういう事じゃないのはわかってるでしょ? これはアスベストスよ」
「アスベスト? それって体に悪いやつじゃ無かったですか?」
確か『静かな時限爆弾』とかいう異名までついていた筈だ。
「あら、そういうのは知ってるのね。でもこれはアスベストじゃなくてアスベストス、健康に影響のないように作られたモノなの」
「貴重なんですか?」
「今となっては貴重ね。健康に影響のないようにする時に化学反応が起こったらしくてね、この布は燃えるけど焼けないの」
「……?」
国語的な文章問題か?
「この布に火はつく。でもこの布はいくら火に焼かれようと消耗する事がないのよ」
「へえ、面白いですね」
「興味ないなー? これはね……と、コレを言いたかったんじゃ無かった」
「なにか用事が?」
聞くとセルロースさんは頷いて両手を出す。
「錬金用のコート、見せて。いつも持ってるでしょ?」
「えっ……いや……」
コーヒーをこぼしそうになる。この世界に来てすぐセルロースさんに作って貰ったあの錬金用コート。練習だとか実践だとかに使いまくって今では……
「どうせもうボロボロなんでしょう?」
「……はい」
全くもってその通りである。穴こそ空いてはいないが飛んだ錬金液とかで表面が溶けていたりしているのだ。
「キミアもそうだったからまさかとは思ったけど。錬金術師って皆そうなのかしらね」
「いやホント……すいません」
「アルカロイドに戻ったら新調するようキミアにも言っておいたけど……とりあえず今のを少し補修しておくわ」
俺から錬金用コートを取ったセルロースさんは少し歩いた後振り返る。
「あ、コカナシちゃんにコレ渡しといて」
「いいですけど……なんですか?」
渡されたのは一枚のメモ用紙。
「今泊まってる宿、いつでも大歓迎って伝えといてねー」
「……はあ」
セルロースさんが遠くなったのを確認して俺は小さくつぶやいた。
「行かないと思うなぁ……」
外に出たからと言って特に目的もなく歩いていると商店通りにたどり着く。
「おお……すげぇな」
道路並みの広さだがここは歩行者天国になっているらしい。名産の布以外にも旅に必要な寝袋とか食料とか大抵のものが揃いそうだ。さすが交通の便が経つ街である。
美味しそうな塩焼き鳥があったので一本買って食べ歩きを始める。最近は先生の仕事を手伝う代わりに幾らかのお金を得ていた。
コカナシが作ってくれる栄養バランスの考えられた物もいいがたまにはこういう栄養度外視の物も食べたくなる。身体に悪そうなカップ麺とか。
この世界にカップ麺はあるのだろうか? 大抵の食生活は同じだが、パン食だからなぁ……米が食いたい。
そんな事を考えながら大通りを抜けると広場に出た。真ん中に噴水、端にはベンチ。どうやら公園的な場所らしい。
一番端のベンチに座り道中買ったドーナツ的なお菓子を齧る。ドーナツというよりはサーターアンダギーか。
食べ進めていると喉が渇いてきた。そんなタイミングで後ろからコーヒーが現れた。
「観光? コカナシちゃんは?」
「残念ながら先生と同じですよ、セルロースさん」
コーヒーを受け取って代わりにドーナツを一つ渡す。
「ねえ、これ何だかわかる?」
セルロースさんが何故か自慢気に取り出したのは少しゴツめの布。
「……布、ですね」
「そういう事じゃないのはわかってるでしょ? これはアスベストスよ」
「アスベスト? それって体に悪いやつじゃ無かったですか?」
確か『静かな時限爆弾』とかいう異名までついていた筈だ。
「あら、そういうのは知ってるのね。でもこれはアスベストじゃなくてアスベストス、健康に影響のないように作られたモノなの」
「貴重なんですか?」
「今となっては貴重ね。健康に影響のないようにする時に化学反応が起こったらしくてね、この布は燃えるけど焼けないの」
「……?」
国語的な文章問題か?
「この布に火はつく。でもこの布はいくら火に焼かれようと消耗する事がないのよ」
「へえ、面白いですね」
「興味ないなー? これはね……と、コレを言いたかったんじゃ無かった」
「なにか用事が?」
聞くとセルロースさんは頷いて両手を出す。
「錬金用のコート、見せて。いつも持ってるでしょ?」
「えっ……いや……」
コーヒーをこぼしそうになる。この世界に来てすぐセルロースさんに作って貰ったあの錬金用コート。練習だとか実践だとかに使いまくって今では……
「どうせもうボロボロなんでしょう?」
「……はい」
全くもってその通りである。穴こそ空いてはいないが飛んだ錬金液とかで表面が溶けていたりしているのだ。
「キミアもそうだったからまさかとは思ったけど。錬金術師って皆そうなのかしらね」
「いやホント……すいません」
「アルカロイドに戻ったら新調するようキミアにも言っておいたけど……とりあえず今のを少し補修しておくわ」
俺から錬金用コートを取ったセルロースさんは少し歩いた後振り返る。
「あ、コカナシちゃんにコレ渡しといて」
「いいですけど……なんですか?」
渡されたのは一枚のメモ用紙。
「今泊まってる宿、いつでも大歓迎って伝えといてねー」
「……はあ」
セルロースさんが遠くなったのを確認して俺は小さくつぶやいた。
「行かないと思うなぁ……」
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