57 / 199
幽霊監獄の流行病
ゲソ
しおりを挟む
はじめるとは言ったがすぐにいつもの錬金が始まるわけでは無い。まずはアカサギを錬金に入れるための作業が必要らしい。
液体と反応した錬金石をアカサギに向ける。錬金石の光が強くなり、アカサギの身体も光を放つ。
アカサギ……純粋な生命力を錬金石を通して素材に混ぜ込むのだ。
「うわ……なんかお前さんと混ざってるみたいで気持ち悪い」
「うるせぇ」
この作業にそこまでの集中力はいらない。起動したら後は錬金石がやってくれている感じだ。
「どこがみえちゃんなんだ……」
アデルの呟きが聞こえた。
まあ、そう思うだろう。そんなあだ名をつけられる要素は全く……
ん? おかしくないか?
錬金石が安定しているのを確認してからアデルの方を見る。
アデルもコカナシもアカサギの方を見て苦笑いを浮かべている。
「……見えてるのか?」
「うん、はっきりと見えている」
「錬金時の体力、生命力の可視化現象……ですかね」
なるほど。納得して錬金石の方に意識を戻そうとしたらナディがゆっくりと目を開けるのが見えた。
「えっと……みえちゃん?」
「よくわかったな、ナディちゃん」
「なんで見えてるの……光ってる……」
アカサギは少し考えた後、少しだけ笑って口を開く。
「少し遠くに行かなくちゃいけなくてな。お前さんはこの兄ちゃんたちについていきな」
「え……でも……」
アカサギの方に伸ばしかけた腕は途中で力を失って床に戻る。
「こんな悪いおっさんの事は忘れて外に行きな」
「い、や……だ」
アカサギが人形を使って頭をなでてやるとナディは無理やり張りつめていた糸を緩めて眠りについた。
「今は俺とつながってるからたぶん触れるぞ」
俺が言うとアカサギは人形を捨ててその手で頭を撫でる。
「お前さんは母親似だから綺麗な女性になるぜ、ナディ」
呟くそうに言って手を離す。
「さ、もういいんだろ? 始めてくれ」
少しサービスをしていたのはバレていたらしい。錬金準備は完全に整った。
さあ、ここからが本番である。
*
錬金を始めた瞬間、五感が弱くなった。正確には五感のリソースが錬金に入り込んだ感じだ。
いつもより体力の流れが感じられる。
溶けた素材同士を繋ぎ、その繋ぎ目を体力で補強していく。
いつもなら繋いだ素材を体力で増強するのだが……今回は生命力を使ってソレをする。体力は補強しきれないところにも生命力を使う。
「…………」
思ったほどではないが生命力というのは扱いにくいモノだった。勝手に素材に入り込もうとしたり、うまく入ってくれなかったりするのだ。
それでも何とか体力と生命力を使って錬金を進めていき、あとは仕上げのみになった。
仕上げはいつもと同じ『ごはんのうた』である。
「……まだ」
もう少し、まだ蓋を取っては行けない。念入りに素材に最後の生命力を込めていく。
「…………ここだ!」
舞っていた光がはじけ、錬金が終わると五感が戻ってきた。さっきまで目の前にいたはずのアカサギは跡形も無く姿を消していた。
「コカナシ……加工を……頼む」
震える手で瓶をコカナシに渡す。
「処方まで任せてください……お疲れ様です」
その言葉を聞いて安心し、なんとか持っていた意識が手から零れ落ちた。
液体と反応した錬金石をアカサギに向ける。錬金石の光が強くなり、アカサギの身体も光を放つ。
アカサギ……純粋な生命力を錬金石を通して素材に混ぜ込むのだ。
「うわ……なんかお前さんと混ざってるみたいで気持ち悪い」
「うるせぇ」
この作業にそこまでの集中力はいらない。起動したら後は錬金石がやってくれている感じだ。
「どこがみえちゃんなんだ……」
アデルの呟きが聞こえた。
まあ、そう思うだろう。そんなあだ名をつけられる要素は全く……
ん? おかしくないか?
錬金石が安定しているのを確認してからアデルの方を見る。
アデルもコカナシもアカサギの方を見て苦笑いを浮かべている。
「……見えてるのか?」
「うん、はっきりと見えている」
「錬金時の体力、生命力の可視化現象……ですかね」
なるほど。納得して錬金石の方に意識を戻そうとしたらナディがゆっくりと目を開けるのが見えた。
「えっと……みえちゃん?」
「よくわかったな、ナディちゃん」
「なんで見えてるの……光ってる……」
アカサギは少し考えた後、少しだけ笑って口を開く。
「少し遠くに行かなくちゃいけなくてな。お前さんはこの兄ちゃんたちについていきな」
「え……でも……」
アカサギの方に伸ばしかけた腕は途中で力を失って床に戻る。
「こんな悪いおっさんの事は忘れて外に行きな」
「い、や……だ」
アカサギが人形を使って頭をなでてやるとナディは無理やり張りつめていた糸を緩めて眠りについた。
「今は俺とつながってるからたぶん触れるぞ」
俺が言うとアカサギは人形を捨ててその手で頭を撫でる。
「お前さんは母親似だから綺麗な女性になるぜ、ナディ」
呟くそうに言って手を離す。
「さ、もういいんだろ? 始めてくれ」
少しサービスをしていたのはバレていたらしい。錬金準備は完全に整った。
さあ、ここからが本番である。
*
錬金を始めた瞬間、五感が弱くなった。正確には五感のリソースが錬金に入り込んだ感じだ。
いつもより体力の流れが感じられる。
溶けた素材同士を繋ぎ、その繋ぎ目を体力で補強していく。
いつもなら繋いだ素材を体力で増強するのだが……今回は生命力を使ってソレをする。体力は補強しきれないところにも生命力を使う。
「…………」
思ったほどではないが生命力というのは扱いにくいモノだった。勝手に素材に入り込もうとしたり、うまく入ってくれなかったりするのだ。
それでも何とか体力と生命力を使って錬金を進めていき、あとは仕上げのみになった。
仕上げはいつもと同じ『ごはんのうた』である。
「……まだ」
もう少し、まだ蓋を取っては行けない。念入りに素材に最後の生命力を込めていく。
「…………ここだ!」
舞っていた光がはじけ、錬金が終わると五感が戻ってきた。さっきまで目の前にいたはずのアカサギは跡形も無く姿を消していた。
「コカナシ……加工を……頼む」
震える手で瓶をコカナシに渡す。
「処方まで任せてください……お疲れ様です」
その言葉を聞いて安心し、なんとか持っていた意識が手から零れ落ちた。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件
九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。
勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。
S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。
そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。
五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。
魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。
S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!?
「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」
落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
飛んで火に入れば偽装結婚!?
篠原 皐月
ファンタジー
父の死去により、異母弟の伯爵家相続を認めて貰えるよう、関係各所に働きかけて奔走するセレナ。親戚の横槍を受けつつも奮闘していた彼女だったが、父の遺言通り王太子に助力を願った事がきっかけで、彼が王族の籍を抜けてセレナと結婚し、彼女の弟の後見人となる事に。それは忽ち周囲に憶測とトラブルを発生させ、セレナは頭を抱えたが、最大限の問題は王太子クライブ殿下その人だった。
結局彼女はクライブと偽装結婚の契約をして、弟が正式な当主になるまで秘密を守る事を誓ったが、トラブルは次々とやって来て……。セレナの弟の爵位継承までのあれこれ、偽装未亡人(?)になった後の、新たな紆余曲折の恋の行方を描きます。
カクヨム、小説家になろうからの転載作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる