錬金薬学のすすめ

ナガカタサンゴウ

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幽霊監獄の流行病

アカサギ

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「待たせたな。本題に入ろうか」
「おう、すごい待たされたぜ」
「……ここに何があった?」
 幽霊は大きく息を吐く
「知っての通りここは監獄、罪人の収容所だ。ただこの施設は最終的に隔離所となっていた」
「隔離って……何を」
「病人、だな」
 先生の言葉に幽霊が頷く。
「詳しくは知らないが感染症らしい。数年前にどこかで流行しだし、対処しきれなくなった。そこで病人を隔離することにした」
 人がいなくて多くの人を隔離できる施設なんて無いのは当然だ。ならばどこに隔離するか……
「罪人ならば世間の風当たりも少ない。そう考えたのだろう、問答無用で感染者はこの監獄に送られてきた」
 後の想像は容易だ。監獄内で感染者は増え、そのまま……
「皆死んだ……ですか」
 幽霊はかぶりを振る。
「ナディ。あいつが最後の一人だ」
「あの子も感染者か?」
 またかぶりを振る。
「あの子は獄中出産で生まれた子だ」
「そうか……」
 先生は少し考えてから口を開く。
「アデルもその感染症なのだろうな……詳しい資料とかはあるのか?」
「最後までその感染症の治療法を探していた感染者……医者がいたはずだ」
「そこに案内してくれ」
「了解しましたよっと」
 案内しようとする幽霊。……いつまでも幽霊と言うのもなんだか失礼なきがするな。
「あの……本名を教えてくれませんか?」
「確かにお前をみえちゃんと呼ぶのはなんだか嫌だな」
「ま、そうだろうな」
 幽霊はニヤリと笑う
「これでも罪人だからあまり本名は言いたくないな……そうだ、アカサギとでも呼んでくれ」
「アカサギ……」
 その由来はたぶん赤詐欺。……結婚詐欺師である。

 *

「……どうですか?」
「症状の緩和には成功しているようだ。だがあくまで緩和、死は免れないな」
「そう、ですか……」
 アカサギに案内された部屋で持っていた資料と小瓶を先生が俺に投げた。
「この資料を見るに同じ釜の飯を食べたワタシたちも感染してると思った方が良さそうだな」
「じゃあ俺たちはここで……」
 仲良くお陀仏……
「悲観するのはまだ早いぞ。お前の目の前にいるのは誰だ? 薬学師じゃないのか?」
「作れるんですか?」
 先生はもう一度資料に目を通す。
「この薬からヒントは得た、現時点で症状は無くす事ができる」
「コカナシたちにはこの事、伝えますか?」
「もちろんだ。あいつらのサポートをフル活用して調査をする……戻るぞ」
 いくつかの資料を持って部屋を出た先生の表情はいつもどおり。不安や悲観がない。
 先生が諦めていないのなら俺も……生徒である俺が諦めるわけにもいかない。
 それに俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。せめて智野を助けるまでは……
「先生、頑張りましょうね」
「言われるまでもない」
 いつもと変わらない会話。俺は少し微笑んで堂々と歩く先生の背中を追いかけた。
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