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錬金集合智『トリスメギストス』〜神愛なる少女〜
ビルケ・ビルケ・ビルケ
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相当な高さから落ちたが痛みは無い。下には分厚いクッションが敷いてある。
薄暗く細長い、まるで倉庫のような部屋。俺の隣には傷ついた車椅子が横たわっている。
「……生け捕り」
「ああ、智野はともかく俺たちも生かされるとはな」
どうやら俺たちは檻のなか。視界を変えて辺りを探る。
「この部屋にモウ以外の生命力はない……智野だけ別に連れていかれたんだ」
「檻……壊す?」
「一応やってみる」
グローブを強化して檻に一撃。金属音が反響するが……
「傷一つ無し、か」
「やめておケ。儂が強化した檻、そう簡単には壊れンよ」
いつの間にか檻の外にビルケがいた。目によるサーチは遮断されたのか?
ともかく何が出来てもおかしくない人物だ。念のため腹の底の石に体力を注ぐ。
ビルケは俺の方を見つめ、自身の眼鏡に触れる。
「カカッ。身体錬金とは面白い事を考えおる。しかしそんっ……!?」
ビルケの身体が横に飛ぶ。何者かに突き飛ばされたのだ。
「クハッ! ……ケ、テリ!?」
地面に突っ伏したビルケの腹部には包丁が刺さっている。
「あの子達の仇……でも、違う!」
叫んだケテリが手を挙げると何処からか現れた狼のような生物が現れてオモチャのようにビルケを振り回す。
「ちょ、ケテリやりすぎじゃ……」
「問題ないわ。だってコレ、人じゃないもの」
「……へ?」
狼が投げ出したソレはあまりにも無残な姿だったので目を背ける……が、視界の端に妙なモノが。
恐る恐る見てみると……
「なんだこれ」
食いちぎられた肉片の下から透明で固そうな何かが見える。形は骨であるが……材質が人のソレではないのが見るだけでわかる。
「わたくしはコレを二度見た事があります。アルスの実験所とビルケの研究室です。どちらもその用途は同じだと聞きました」
「じゃあこれって」
「ええ、ホムンクルス実験の副産物。人の形を模した機械のようなモノですわ。アルスはもっと先へ進んでいたましたがビルケはコレの改良にこだわっていました」
「つまりコレは偽物……」
「本物は奥でしょう。複数の生命力と……ほんの僅かながら不思議な生命力が見えます」
俺には見えない。やはり主としている視界の違いだろうか。
「智野もそこにいると思う。とりあえずこの檻から出ないと」
「……出れる」
いつにも増して無口だったモウが懐に工具を入れて自慢げに言う。
「ピッキングか? なら俺が壊そうとするひつよ……」
違う、確かにモウは壊していた。いや、分解の方が正しいか。
もちろん錬金術による分解ではない。モウは錠そのものを分解していたのだ。これでは鍵屋も号泣だろう。
「どうやったのかは気になるけど、今はそれどころじゃないな」
ケテリの周りをウロウロと回って俺を睨む狼に怯えながらも檻からでる。
アルスといい犬系キメラと敵対する運命なのだろうか?
「とりあえず奥に進もう。この奥には何があるんだ?」
「ビルケの研究室です。わたくしも入った事が無いくらい厳重です」
「まあ、閉鎖された地下だしな」
この部屋には扉がない。さっきのような強制入室かビルケしか知らない方法で入るのだろう。
「ホムンクルス実験すら違う研究室で行なっていました。あの奥に何があるのか、わたくしにも分かりませんわ」
*
「なんだ……これ」
まるでSF映画のような光景。培養液の中に赤子が浸かっている。
「これって……じゃあ、この子達は……」
ケテリが見ているのは同じ子供でも違うところ、管が繋がれているヘソの部分だ。
よく見ると管とヘソの間に小さな石が取り付けられている。綺麗な丸、何者かに加工された石だ。
「この石がどうかしたんですか?」
「この石は……」
「今は亡き龍の血を使った錬金術の最高峰、賢者の石ジャよ」
奥から歩いて来たのは三人のビルケ。全員揃って欠けた歯を見せる。
「異界の少年よ、賢者の石とは何か知っておるか?」
「賢者の石って……不老不死を与える、確かエリクサーと同じモノ」
「カカッ! 何処の世界でも伝説は同じか、しかしソレは伝説。真実はもう少し厳しい。そうじゃな? ケテリ」
「賢者の石はあらゆるエネルギーを生命力に変換する変換器。でもその変換率はとても低いのです。一番変換率が高いのが成長するためのエネルギー、それでも一人分を補うには……」
一人のビルケが前に出て培養カプセルを杖で叩く。
「赤子一人分の成長エネルギーを使わねばならぬ。此奴ハこの姿じゃが十三歳になる」
中に入っているのはどう見ても赤子。成長している様子がまるでない。
「錬金術師は生命力を使う故寿命が短イ。ソレを打破するのがこの賢者の石じゃ。そしてもう一つ、あの娘の才能を解明すれば変換効率を上げられると予測しておる」
「……そうか」
こいつがこういう事をしているのなら、なおさら智野を渡す訳にはいかない。
ビルケの話を聞きながら錬金をしていた。タイムラグ無しで俺は飛び出す。
「賢者の石とかどうでもいいから、智野を返せ!」
薄暗く細長い、まるで倉庫のような部屋。俺の隣には傷ついた車椅子が横たわっている。
「……生け捕り」
「ああ、智野はともかく俺たちも生かされるとはな」
どうやら俺たちは檻のなか。視界を変えて辺りを探る。
「この部屋にモウ以外の生命力はない……智野だけ別に連れていかれたんだ」
「檻……壊す?」
「一応やってみる」
グローブを強化して檻に一撃。金属音が反響するが……
「傷一つ無し、か」
「やめておケ。儂が強化した檻、そう簡単には壊れンよ」
いつの間にか檻の外にビルケがいた。目によるサーチは遮断されたのか?
ともかく何が出来てもおかしくない人物だ。念のため腹の底の石に体力を注ぐ。
ビルケは俺の方を見つめ、自身の眼鏡に触れる。
「カカッ。身体錬金とは面白い事を考えおる。しかしそんっ……!?」
ビルケの身体が横に飛ぶ。何者かに突き飛ばされたのだ。
「クハッ! ……ケ、テリ!?」
地面に突っ伏したビルケの腹部には包丁が刺さっている。
「あの子達の仇……でも、違う!」
叫んだケテリが手を挙げると何処からか現れた狼のような生物が現れてオモチャのようにビルケを振り回す。
「ちょ、ケテリやりすぎじゃ……」
「問題ないわ。だってコレ、人じゃないもの」
「……へ?」
狼が投げ出したソレはあまりにも無残な姿だったので目を背ける……が、視界の端に妙なモノが。
恐る恐る見てみると……
「なんだこれ」
食いちぎられた肉片の下から透明で固そうな何かが見える。形は骨であるが……材質が人のソレではないのが見るだけでわかる。
「わたくしはコレを二度見た事があります。アルスの実験所とビルケの研究室です。どちらもその用途は同じだと聞きました」
「じゃあこれって」
「ええ、ホムンクルス実験の副産物。人の形を模した機械のようなモノですわ。アルスはもっと先へ進んでいたましたがビルケはコレの改良にこだわっていました」
「つまりコレは偽物……」
「本物は奥でしょう。複数の生命力と……ほんの僅かながら不思議な生命力が見えます」
俺には見えない。やはり主としている視界の違いだろうか。
「智野もそこにいると思う。とりあえずこの檻から出ないと」
「……出れる」
いつにも増して無口だったモウが懐に工具を入れて自慢げに言う。
「ピッキングか? なら俺が壊そうとするひつよ……」
違う、確かにモウは壊していた。いや、分解の方が正しいか。
もちろん錬金術による分解ではない。モウは錠そのものを分解していたのだ。これでは鍵屋も号泣だろう。
「どうやったのかは気になるけど、今はそれどころじゃないな」
ケテリの周りをウロウロと回って俺を睨む狼に怯えながらも檻からでる。
アルスといい犬系キメラと敵対する運命なのだろうか?
「とりあえず奥に進もう。この奥には何があるんだ?」
「ビルケの研究室です。わたくしも入った事が無いくらい厳重です」
「まあ、閉鎖された地下だしな」
この部屋には扉がない。さっきのような強制入室かビルケしか知らない方法で入るのだろう。
「ホムンクルス実験すら違う研究室で行なっていました。あの奥に何があるのか、わたくしにも分かりませんわ」
*
「なんだ……これ」
まるでSF映画のような光景。培養液の中に赤子が浸かっている。
「これって……じゃあ、この子達は……」
ケテリが見ているのは同じ子供でも違うところ、管が繋がれているヘソの部分だ。
よく見ると管とヘソの間に小さな石が取り付けられている。綺麗な丸、何者かに加工された石だ。
「この石がどうかしたんですか?」
「この石は……」
「今は亡き龍の血を使った錬金術の最高峰、賢者の石ジャよ」
奥から歩いて来たのは三人のビルケ。全員揃って欠けた歯を見せる。
「異界の少年よ、賢者の石とは何か知っておるか?」
「賢者の石って……不老不死を与える、確かエリクサーと同じモノ」
「カカッ! 何処の世界でも伝説は同じか、しかしソレは伝説。真実はもう少し厳しい。そうじゃな? ケテリ」
「賢者の石はあらゆるエネルギーを生命力に変換する変換器。でもその変換率はとても低いのです。一番変換率が高いのが成長するためのエネルギー、それでも一人分を補うには……」
一人のビルケが前に出て培養カプセルを杖で叩く。
「赤子一人分の成長エネルギーを使わねばならぬ。此奴ハこの姿じゃが十三歳になる」
中に入っているのはどう見ても赤子。成長している様子がまるでない。
「錬金術師は生命力を使う故寿命が短イ。ソレを打破するのがこの賢者の石じゃ。そしてもう一つ、あの娘の才能を解明すれば変換効率を上げられると予測しておる」
「……そうか」
こいつがこういう事をしているのなら、なおさら智野を渡す訳にはいかない。
ビルケの話を聞きながら錬金をしていた。タイムラグ無しで俺は飛び出す。
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