158 / 199
錬金集合智『トリスメギストス』〜神愛なる少女〜
最後の箱
しおりを挟む
三女が繰り出す盾を切って尚衰えない威力。機械の腕も相まって防げるものでは無いだろう。
そんな斬撃に対してアデルは防戦一方。ストックボックスから小さい盾、コンパクトガードナーMを多重展開して起動を逸らすので精一杯だった。
「それが防御策トしては最善なの。でも……」
「それだけじゃ攻略したとは言えない。そういいたいんだろう!」
逸らし損ねた切っ先が掠め、アデルのコートが切りさかれる。
その内側には大量のストックボックス。
「開け、開け開け開けぇ!」
ストックボックスから大量の道具が飛び出す。その大半はアデルが持ち歩いている生活雑貨だが、散りばめたように毒や武器などが混じっている。
俺が喰らえば一溜まりもないだろう猛攻、しかし三女は機械の側を盾にして突破を測った。
「終わりじゃないさ!」
ポケットに残った最後のストックボックスから出たのはハンドガン。引き金が引かれ、玉が射出される。
「そんなモノ、この身体ナラ弾くの」
「狙うべくは別さ」
弾丸は三女の身体から逸れ、刀へと当たる。いくら精巧な刀といえど側面では切れない。弾の衝撃に耐え切れず三女の手から離れる。でも……
「避けろアデル!」
「へ?」
三女の逆の手には槍が握られている。アデルからは死角だったのだ。
叫びはしたが間に合わない。アデルの猛攻を突破した三女の槍がアデルの右足に刺さる。
「んぐっ……し、かし! 捕まえたぞ!」
アデルは苦痛に顔を歪めながらも槍の根元を握って離さない。
「負け惜しみハやめておくといいの。貴方の手元には武器ガ無い、でもワタシにはこの手ガある」
三女が機械腕を振りあげた瞬間、アデルの表情に僅かな笑みが入りこむ。
叫ぶように、フロア全体に響き渡る程の大声を上げる。
「出でよ!我が身を貫く必中の槍よ!」
その声に反応したのは誰でもなく一つの箱。中から飛び出した槍、グングニルを再現したソレは台詞が終わる前にアデルの心臓目掛けて一直線に飛んでいた。
しかし、ソレがアデルに当たる事は無かった。なぜなら……
「ワタシヲ……盾に……」
「一緒に貫かれようと思ったんだけどね、君の機械部分だけで止まってくれたようだ」
「機械半身機能停止……戦闘続行不可能……離脱」
そう呟いたかと思うと三女の硬いスカートから火が飛び出し、ロケットのようにしてどこかへと逃げて行ってしまった。
少しすると閉じ込めていた壁が消え、俺たちは自由の身となった。
「アデル! いま治療する!」
ポシェットから取り出した薬をアデルは手で制する。
「痛み止めは貰っておこう、しかし錬金するのはやめたまえ」
「でもその怪我」
「君の目的は此処じゃないだろう? 体力は取っておくんだ」
「いや……」
アデルは痛み止めを飲み、槍が刺さっていた場所を自分で止血する。
「僕はカリにでも拾ってもらう。タカ、君は先に行くんだ。トモノ嬢に何かあってはキミアとコカナシちゃんに怒られてしまう、その方が怖い、身の毛がよだつね」
その真っ直ぐな目を見て俺も決心する。
「わかった。安静にしてろよ」
「おうともさ、親友」
そんな斬撃に対してアデルは防戦一方。ストックボックスから小さい盾、コンパクトガードナーMを多重展開して起動を逸らすので精一杯だった。
「それが防御策トしては最善なの。でも……」
「それだけじゃ攻略したとは言えない。そういいたいんだろう!」
逸らし損ねた切っ先が掠め、アデルのコートが切りさかれる。
その内側には大量のストックボックス。
「開け、開け開け開けぇ!」
ストックボックスから大量の道具が飛び出す。その大半はアデルが持ち歩いている生活雑貨だが、散りばめたように毒や武器などが混じっている。
俺が喰らえば一溜まりもないだろう猛攻、しかし三女は機械の側を盾にして突破を測った。
「終わりじゃないさ!」
ポケットに残った最後のストックボックスから出たのはハンドガン。引き金が引かれ、玉が射出される。
「そんなモノ、この身体ナラ弾くの」
「狙うべくは別さ」
弾丸は三女の身体から逸れ、刀へと当たる。いくら精巧な刀といえど側面では切れない。弾の衝撃に耐え切れず三女の手から離れる。でも……
「避けろアデル!」
「へ?」
三女の逆の手には槍が握られている。アデルからは死角だったのだ。
叫びはしたが間に合わない。アデルの猛攻を突破した三女の槍がアデルの右足に刺さる。
「んぐっ……し、かし! 捕まえたぞ!」
アデルは苦痛に顔を歪めながらも槍の根元を握って離さない。
「負け惜しみハやめておくといいの。貴方の手元には武器ガ無い、でもワタシにはこの手ガある」
三女が機械腕を振りあげた瞬間、アデルの表情に僅かな笑みが入りこむ。
叫ぶように、フロア全体に響き渡る程の大声を上げる。
「出でよ!我が身を貫く必中の槍よ!」
その声に反応したのは誰でもなく一つの箱。中から飛び出した槍、グングニルを再現したソレは台詞が終わる前にアデルの心臓目掛けて一直線に飛んでいた。
しかし、ソレがアデルに当たる事は無かった。なぜなら……
「ワタシヲ……盾に……」
「一緒に貫かれようと思ったんだけどね、君の機械部分だけで止まってくれたようだ」
「機械半身機能停止……戦闘続行不可能……離脱」
そう呟いたかと思うと三女の硬いスカートから火が飛び出し、ロケットのようにしてどこかへと逃げて行ってしまった。
少しすると閉じ込めていた壁が消え、俺たちは自由の身となった。
「アデル! いま治療する!」
ポシェットから取り出した薬をアデルは手で制する。
「痛み止めは貰っておこう、しかし錬金するのはやめたまえ」
「でもその怪我」
「君の目的は此処じゃないだろう? 体力は取っておくんだ」
「いや……」
アデルは痛み止めを飲み、槍が刺さっていた場所を自分で止血する。
「僕はカリにでも拾ってもらう。タカ、君は先に行くんだ。トモノ嬢に何かあってはキミアとコカナシちゃんに怒られてしまう、その方が怖い、身の毛がよだつね」
その真っ直ぐな目を見て俺も決心する。
「わかった。安静にしてろよ」
「おうともさ、親友」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件
九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。
勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。
S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。
そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。
五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。
魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。
S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!?
「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」
落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる