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錬金術に関わりし者達の救出劇
アナグマ
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「……ん」
やわらかい光に起こされる。ああ、そういえば光による目覚ましシステムとか書いてたな……
身支度を終わらせた頃、控えめなノックが聞こえる。
「キミアの旦那、起きてますかい?」
「ああ、入っていいぞ」
扉を開けたウリボウの隣には知らない人が立っている。着ているのはスーツだがかなり動きやすそうだ、ストレッチ生地だっけか。
男は俺たちを鋭い目で観察し、その目を消して笑顔になる。
「こんな地中まで遥々ようこそいらっしゃいました。私はここの支配人、デュパン……と、これは違った」
咳払いをして男は言いなおす
「ここの支配人、アナグマです。どうぞよろしく」
「キミアだ。買う品物は聞いているな?」
「一応確認ですが、獣人でよろしかったですか?」
「ああ、間違いない」
「了解しました。では用意させましょう」
アナグマはトランシーバーのような物を使って数回言葉を交わした後、俺たちに背を向ける。
「ではご案内いたしましょう。行った先で簡単な身体検査だけさせてもらいます」
*
「これは預かってもよろしいですね?」
「ああ、無くすなよ」
俺とアルは何もなく、すぐに終わったが先生は身体検査で色々な物を取り上げられていた。
まあ、注射器だったり薬だったりを持ち歩いてるからしょうがないのだけれど。
「アナグマさん、これでオーケーです」
「ご協力ありがとうございます」
「旦那、奥にどうぞ」
ウリボウが扉を開けて俺たちを通す。
「では、ここで失礼しますぜ」
俺たちとアナグマが入ったところで扉が閉められる。
「…………」
大きな一部屋、その中に数十人の男が立っている。
「で、獣人はどこだ?」
「もちろんいますとも、見えるところに」
辺りを見渡すがそれらしき人はいない。筋肉の多い男ばかりだ。
「さて、と。余所行きの顔はもういいな」
アナグマの顔が変わる。笑顔は欠片もなく、一瞬見せた鋭い目が戻っている。
「他はいい、今回の捕獲対象はあの獣人だ」
指されたのはアル。まさかバレて……
「お前ら、絶対に傷をつけるな」
男たちが雄叫びのように大きい返事をしたのを見てアナグマは逆の扉に向かう。
「俺は獣人のところに行ってる……失敗するなよ」
アナグマが出て行き、男たちが拳を鳴らす。
「先生! これって……」
先生は隣にいなかった。誰かの叫び声が聞こえ、そっちを見ると男の中の一人が顔を抑えてうずくまっている。
「身体検査したんじゃねぇのか!」
「とりあえずそいつ止めろ!」
何処かに隠し持っていたらしい薬品で数人の男を行動不能にして先生が叫ぶ。
「早くアナグマを追いかけろ! あいつの行く先にヒメユリがいる!」
「キミアはどうすんだよ! こんな人数相手に……」
「いいから行け! お前らがいるとやりにくい!」
指輪が光を放つ。視界を変えると持っている薬品、更には錬金衣装の内ポケットにあるソレにも先生の体力が注がれている。
「行くぞ!」
戸惑うアルの腕を掴んで走る。あの薬品がかかると俺たちまで危ない。それに……
「先生なら大丈夫だ」
「……わかった」
阻止しようと扉の前に立っていた数人をアルが蹴散らす。
廊下に出ると遠くの方でアナグマが違う部屋に入って行くのが見えた。
「あそこだ!」
叫ぶと同時にアルは凄まじい速さで走っていった。
やわらかい光に起こされる。ああ、そういえば光による目覚ましシステムとか書いてたな……
身支度を終わらせた頃、控えめなノックが聞こえる。
「キミアの旦那、起きてますかい?」
「ああ、入っていいぞ」
扉を開けたウリボウの隣には知らない人が立っている。着ているのはスーツだがかなり動きやすそうだ、ストレッチ生地だっけか。
男は俺たちを鋭い目で観察し、その目を消して笑顔になる。
「こんな地中まで遥々ようこそいらっしゃいました。私はここの支配人、デュパン……と、これは違った」
咳払いをして男は言いなおす
「ここの支配人、アナグマです。どうぞよろしく」
「キミアだ。買う品物は聞いているな?」
「一応確認ですが、獣人でよろしかったですか?」
「ああ、間違いない」
「了解しました。では用意させましょう」
アナグマはトランシーバーのような物を使って数回言葉を交わした後、俺たちに背を向ける。
「ではご案内いたしましょう。行った先で簡単な身体検査だけさせてもらいます」
*
「これは預かってもよろしいですね?」
「ああ、無くすなよ」
俺とアルは何もなく、すぐに終わったが先生は身体検査で色々な物を取り上げられていた。
まあ、注射器だったり薬だったりを持ち歩いてるからしょうがないのだけれど。
「アナグマさん、これでオーケーです」
「ご協力ありがとうございます」
「旦那、奥にどうぞ」
ウリボウが扉を開けて俺たちを通す。
「では、ここで失礼しますぜ」
俺たちとアナグマが入ったところで扉が閉められる。
「…………」
大きな一部屋、その中に数十人の男が立っている。
「で、獣人はどこだ?」
「もちろんいますとも、見えるところに」
辺りを見渡すがそれらしき人はいない。筋肉の多い男ばかりだ。
「さて、と。余所行きの顔はもういいな」
アナグマの顔が変わる。笑顔は欠片もなく、一瞬見せた鋭い目が戻っている。
「他はいい、今回の捕獲対象はあの獣人だ」
指されたのはアル。まさかバレて……
「お前ら、絶対に傷をつけるな」
男たちが雄叫びのように大きい返事をしたのを見てアナグマは逆の扉に向かう。
「俺は獣人のところに行ってる……失敗するなよ」
アナグマが出て行き、男たちが拳を鳴らす。
「先生! これって……」
先生は隣にいなかった。誰かの叫び声が聞こえ、そっちを見ると男の中の一人が顔を抑えてうずくまっている。
「身体検査したんじゃねぇのか!」
「とりあえずそいつ止めろ!」
何処かに隠し持っていたらしい薬品で数人の男を行動不能にして先生が叫ぶ。
「早くアナグマを追いかけろ! あいつの行く先にヒメユリがいる!」
「キミアはどうすんだよ! こんな人数相手に……」
「いいから行け! お前らがいるとやりにくい!」
指輪が光を放つ。視界を変えると持っている薬品、更には錬金衣装の内ポケットにあるソレにも先生の体力が注がれている。
「行くぞ!」
戸惑うアルの腕を掴んで走る。あの薬品がかかると俺たちまで危ない。それに……
「先生なら大丈夫だ」
「……わかった」
阻止しようと扉の前に立っていた数人をアルが蹴散らす。
廊下に出ると遠くの方でアナグマが違う部屋に入って行くのが見えた。
「あそこだ!」
叫ぶと同時にアルは凄まじい速さで走っていった。
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