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資格試験と焦がれるあべこべ
お約束の卒業作戦
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「ここになるな」
翌日、ヨロズさんに呼ばれて行ったのは大きな式場だった。
「ここが今回式を行う場所なのですね」
頷いたヨロズさんは遠慮も躊躇もなく奥の方に進んでいく。
「ちょ、いいんですか入って」
「問題ないな。今回式の設営を執り行う業者の一つが儂ら『ヨロズ便利屋』だな」
確かにヨロズさんと同じ作業服を着た人が何人か作業をしている。
「で、式場への細工だが……儂が居れば簡単だな」
「いや、ほかの業者もいるなら担当部分しか細工はできないんじゃないですか?」
「今回の最高責任者はこのヨロズ。最終確認や仕上げは儂らに任されているな」
「それは好条件ですね。で?」
「……ん?」
コカナシの視線は俺に向いている。言いたいことが読み取れず、俺は首を傾げた。
「警備を突破する細工は可能のようです。そろそろタカが思いついた策と言うのを教えてほしいのですが」
「ああ、そういや話してなかったな」
俺が思いついたと言っても俺の世界では定番中の定番。
「名付けて……ホフマン作戦だ!」
*
ダスティン・ホフマンというのはアメリカの俳優である。彼の出演作品の一つに『卒業』というものがあり、そのクライマックスはコントなどで使われるほど定番の物となっている。
それを元にした作戦を二人に伝えた後、俺は一人部屋に戻っていた。
コカナシはヨロズさんと共に細工の設計図を練っている。
俺は式までの残り四日でヴァルクールさんをやる気にさせなければならない。
と、その前に……
「演じてるってどういうことですか?」
「直球ですね」
「またどこか居酒屋でも行きましょうか?」
ヴァルクールさんはあきらめたようにため息をつく。コカナシを見習って直球勝負で挑んだらなんとかなったようだ。
「ローラ様は今外出なさっているのでここで大丈夫でしょう。お入りください」
ヴァルクールさんの部屋には紅茶の匂いが充満していた。全然違う種類のものが混ざっているようだが不思議と良い香りになっていた。
「さて、私がローラ様の前ではマゾヒストを演じている理由……でしたよね」
俺が頷くと同時にアイスティーが出され、ヴァルクールさんが向かいに座った。
「話は私がまだ新人だった頃まで遡ります」
「その時からローラさんの事を?」
あれ? なんかデジャヴを感じる。
「いえ、その時はただ慕っているだけでした。その時私はよくローラ様に呼び出されては叱られておりました」
「……はあ」
「ローラ様からお叱りを受けている時に気づいたのです。ローラ様が生き生きとしていることに」
「……はあ?」
「そこで私は考えましたローラ様はそっちの方面なのではないか、と」
オブラートを溶かしてしまえばローラさんがサディズムだということに気づいた、だな。
「そこで私はローラ様に喜んでもらうべくマゾヒストを演じるようになったのです」
これで話は終わりとでも言うようにヴァルクールさんは手を叩いた。
うん……なるほどね。
「…………」
ローラさんの理由とほぼ同じじゃねぇか! なんなんだ、この二人はお互いを喜ばせようとあべこべの性格を演じていたってのか!?
俺はため息をついて本題に入る
「ヴァルクールさん。少し提案があります」
*
「いや、私はともかくローラ様の気持ちが……」
「気持ちは、わからないですよね」
「しかし……」
作戦を伝えはしたが、予想どおりヴァルクールさんは首を縦に振らない。やっぱり時間が必要か……
俺はアイスティーを飲み干して席を立つ。
「また式が近くなったら来ます」
ヴァルクールさんの返事は聞かないまま、俺は部屋に戻った。
翌日、ヨロズさんに呼ばれて行ったのは大きな式場だった。
「ここが今回式を行う場所なのですね」
頷いたヨロズさんは遠慮も躊躇もなく奥の方に進んでいく。
「ちょ、いいんですか入って」
「問題ないな。今回式の設営を執り行う業者の一つが儂ら『ヨロズ便利屋』だな」
確かにヨロズさんと同じ作業服を着た人が何人か作業をしている。
「で、式場への細工だが……儂が居れば簡単だな」
「いや、ほかの業者もいるなら担当部分しか細工はできないんじゃないですか?」
「今回の最高責任者はこのヨロズ。最終確認や仕上げは儂らに任されているな」
「それは好条件ですね。で?」
「……ん?」
コカナシの視線は俺に向いている。言いたいことが読み取れず、俺は首を傾げた。
「警備を突破する細工は可能のようです。そろそろタカが思いついた策と言うのを教えてほしいのですが」
「ああ、そういや話してなかったな」
俺が思いついたと言っても俺の世界では定番中の定番。
「名付けて……ホフマン作戦だ!」
*
ダスティン・ホフマンというのはアメリカの俳優である。彼の出演作品の一つに『卒業』というものがあり、そのクライマックスはコントなどで使われるほど定番の物となっている。
それを元にした作戦を二人に伝えた後、俺は一人部屋に戻っていた。
コカナシはヨロズさんと共に細工の設計図を練っている。
俺は式までの残り四日でヴァルクールさんをやる気にさせなければならない。
と、その前に……
「演じてるってどういうことですか?」
「直球ですね」
「またどこか居酒屋でも行きましょうか?」
ヴァルクールさんはあきらめたようにため息をつく。コカナシを見習って直球勝負で挑んだらなんとかなったようだ。
「ローラ様は今外出なさっているのでここで大丈夫でしょう。お入りください」
ヴァルクールさんの部屋には紅茶の匂いが充満していた。全然違う種類のものが混ざっているようだが不思議と良い香りになっていた。
「さて、私がローラ様の前ではマゾヒストを演じている理由……でしたよね」
俺が頷くと同時にアイスティーが出され、ヴァルクールさんが向かいに座った。
「話は私がまだ新人だった頃まで遡ります」
「その時からローラさんの事を?」
あれ? なんかデジャヴを感じる。
「いえ、その時はただ慕っているだけでした。その時私はよくローラ様に呼び出されては叱られておりました」
「……はあ」
「ローラ様からお叱りを受けている時に気づいたのです。ローラ様が生き生きとしていることに」
「……はあ?」
「そこで私は考えましたローラ様はそっちの方面なのではないか、と」
オブラートを溶かしてしまえばローラさんがサディズムだということに気づいた、だな。
「そこで私はローラ様に喜んでもらうべくマゾヒストを演じるようになったのです」
これで話は終わりとでも言うようにヴァルクールさんは手を叩いた。
うん……なるほどね。
「…………」
ローラさんの理由とほぼ同じじゃねぇか! なんなんだ、この二人はお互いを喜ばせようとあべこべの性格を演じていたってのか!?
俺はため息をついて本題に入る
「ヴァルクールさん。少し提案があります」
*
「いや、私はともかくローラ様の気持ちが……」
「気持ちは、わからないですよね」
「しかし……」
作戦を伝えはしたが、予想どおりヴァルクールさんは首を縦に振らない。やっぱり時間が必要か……
俺はアイスティーを飲み干して席を立つ。
「また式が近くなったら来ます」
ヴァルクールさんの返事は聞かないまま、俺は部屋に戻った。
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