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資格試験と焦がれるあべこべ
焦がれるお嬢
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「話ってなにかしら? 貴女から誘ってくれるなんて嬉しいわ」
紅茶の用意をした使用人が出て行ったのを見てコカナシはローラさんに目を合わせる。
「ローラさんはヴァルクールさんの事が好きですよね?」
「…………」
開口一番、直球勝負!?
大声でツッコミかけて口を押さえる。今俺は盗み聞きをしてる状態だった。
あの後数十分後に起きたヴァルクールさんは本当に酒が抜けていて「今の話はご内密に」と言った後、俺を屋敷に送ってくれた。
ヴァルクールさんはそのまま自室へと戻り、俺も部屋に戻ろうとした時に客室でお茶をしようとしているコカナシとローラさんを見つけて……盗み聞きをしている状態だ。
それにしても、あんな直球だとローラさんも戸惑って……
「ええ、私はルークの事が好きよ」
「!?」
え? 早!? なんだ、俺の遠回し遠回しで聞こうとしていたアレはなんだったんだ!
「なら何故あの人と婚約を?」
「実は……」
ローラさんはさっきのヴァルクールさんと同じ、お母さんの話をした。
どうでもいいが誰も婚約者の名前を覚えてないな。ショウさんだよ。
それよりなんだこのトントン拍子は。俺が数時間かけて得た情報を数十分で聞きだしたぞ。
「これは推測ですらない直感なのですが……ローラさんはサディズムじゃないのにソレを演じていたりしませんか?」
「……そうね」
短い肯定の後、ローラさんは小さな笑みを浮かべる。
「お聞きになりたい?」
「出来れば」
ローラさんは喉を潤して軽く咳払いをした。
「話はまだルークが私の専属執事では無かった頃に遡るわ」
「その時からヴァルクールさんの事を?」
ローラさんは少し顔を赤らめて頷く。
「新人ながらよく気の利く人だったらしいわ。使用人の中で評判がよかったから少し気になって時々見ていたの」
「それでいつの間にか好きになっていたのですね」
「そう! よくわかったわね!」
「恋はそういうものです」
頷いて少し頰を赤らめるコカナシ。これは先生の事考えてるな。
「でも使用人の中でも新人だったルークと私が直接話すには叱りつけるくらいの理由が必要だったの。用事は他の使用人が引き受けちゃうから」
「そうして上部の叱りつけをしている時に気づいたの。ルークはその……M的な人なんだって」
「それでサディズムを演じるように?」
「ええ、ルークは硬いから私の事を恋愛対象として見ないと思うの。だから……」
ローラさんは悪戯な笑みを浮かべる。
「お硬いルークが我慢できなくなるくらい好みの女性にならないと、ね?」
「さすがですね」
小さく拍手をするコカナシ。なんだか俺が聞いてはいけない裏事情が垣間見えそうで怖いな。
「それにしても私が演じているとよくわかったわね」
「私も同じですから」
「……コカナシちゃんも?」
コカナシは小さく頷く。
「想い人の前で違う自分を演じるのは……私もやってしまってる事です」
「それ……聞いても構わないかしら?」
コカナシは紅茶をすすって息を吐き出す。
「そうですね。一度誰かに話したいとは思っていました……ローラさんになら……」
自分を落ちつけるように紅茶をゆっくりと飲み干した後、コカナシの話が始まった。
紅茶の用意をした使用人が出て行ったのを見てコカナシはローラさんに目を合わせる。
「ローラさんはヴァルクールさんの事が好きですよね?」
「…………」
開口一番、直球勝負!?
大声でツッコミかけて口を押さえる。今俺は盗み聞きをしてる状態だった。
あの後数十分後に起きたヴァルクールさんは本当に酒が抜けていて「今の話はご内密に」と言った後、俺を屋敷に送ってくれた。
ヴァルクールさんはそのまま自室へと戻り、俺も部屋に戻ろうとした時に客室でお茶をしようとしているコカナシとローラさんを見つけて……盗み聞きをしている状態だ。
それにしても、あんな直球だとローラさんも戸惑って……
「ええ、私はルークの事が好きよ」
「!?」
え? 早!? なんだ、俺の遠回し遠回しで聞こうとしていたアレはなんだったんだ!
「なら何故あの人と婚約を?」
「実は……」
ローラさんはさっきのヴァルクールさんと同じ、お母さんの話をした。
どうでもいいが誰も婚約者の名前を覚えてないな。ショウさんだよ。
それよりなんだこのトントン拍子は。俺が数時間かけて得た情報を数十分で聞きだしたぞ。
「これは推測ですらない直感なのですが……ローラさんはサディズムじゃないのにソレを演じていたりしませんか?」
「……そうね」
短い肯定の後、ローラさんは小さな笑みを浮かべる。
「お聞きになりたい?」
「出来れば」
ローラさんは喉を潤して軽く咳払いをした。
「話はまだルークが私の専属執事では無かった頃に遡るわ」
「その時からヴァルクールさんの事を?」
ローラさんは少し顔を赤らめて頷く。
「新人ながらよく気の利く人だったらしいわ。使用人の中で評判がよかったから少し気になって時々見ていたの」
「それでいつの間にか好きになっていたのですね」
「そう! よくわかったわね!」
「恋はそういうものです」
頷いて少し頰を赤らめるコカナシ。これは先生の事考えてるな。
「でも使用人の中でも新人だったルークと私が直接話すには叱りつけるくらいの理由が必要だったの。用事は他の使用人が引き受けちゃうから」
「そうして上部の叱りつけをしている時に気づいたの。ルークはその……M的な人なんだって」
「それでサディズムを演じるように?」
「ええ、ルークは硬いから私の事を恋愛対象として見ないと思うの。だから……」
ローラさんは悪戯な笑みを浮かべる。
「お硬いルークが我慢できなくなるくらい好みの女性にならないと、ね?」
「さすがですね」
小さく拍手をするコカナシ。なんだか俺が聞いてはいけない裏事情が垣間見えそうで怖いな。
「それにしても私が演じているとよくわかったわね」
「私も同じですから」
「……コカナシちゃんも?」
コカナシは小さく頷く。
「想い人の前で違う自分を演じるのは……私もやってしまってる事です」
「それ……聞いても構わないかしら?」
コカナシは紅茶をすすって息を吐き出す。
「そうですね。一度誰かに話したいとは思っていました……ローラさんになら……」
自分を落ちつけるように紅茶をゆっくりと飲み干した後、コカナシの話が始まった。
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