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資格試験と焦がれるあべこべ
気分転換にデコレーション
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先生がするような休憩ではなく、上品な食後のお茶。
紅茶に口をつけたローラさんはそれを入れたヴァルクールさんのほうを見る。
「ルーク、これ……」
「申し訳ございません。いつものローネフルトは切らしていまして……本日のはマリアフールとなっております」
「そう……おかしな話ね」
ローラさんがヴァルクールさんの足を軽く蹴る。
「マリアも嫌いじゃないけど食後はローネがいいって言ってるわよね」
「…………」
黙って頭を下げるヴァルクールさんの足がまた蹴られる。
「だんまりかしら?」
あた一蹴り。少し痛そうな音がした。
「……ありがとうございます」
数秒の沈黙の後、隣に座っているコカナシと目を合わせる。
「今、お礼を言いましたよね」
「ああ、言ったな」
「……ヴァルクールさんはマゾヒストなんですかね」
「うん、俺も思ったけど口にするのはやめようぜ?」
「やっぱりローラさんはサディストですかね」
「少し黙ろうか」
コカナシの口にクッキーを押し込む。
「で、観光はしたのか?」
クッキーを紅茶で流し込んだコカナシは少し考えてから口を開く
「あまり外に出ていないですね」
「え? なんで」
「家事をしなくていいというのが楽で楽で」
「…………」
いつもお世話になっております。
「でも、少しもったいないかもしれませんね」
「だろ? どっか行こうぜ」
言った瞬間コカナシの目が鋭くなる。
「資格勉強は?」
「き、気分転換だ」
この数日勉強尽くしで息が詰まりそうなのだ。
「でも試験は明後日……」
「少しだけ、勉強しすぎもよくないって言うだろ?」
「そんな話は知りませんが……まあいいでしょう」
コカナシは紅茶を飲み干してニヤリと笑う。
「タカには荷物持ちになってもらいましょう」
*
「なに買いに行くんだ?」
「錬金術の素材……ですかね」
「こんな時まで先生の為に、か」
「もちろん私の個人的な買い物もしますよ。荷物持ち」
呼び方が酷い。それにしても……
「コカナシの個人的な物ってなんだ?」
服はいつも『メイド服亜種』みたいなやつだし……よく淹れてるし紅茶の茶葉とかかな?
「いろいろありますが木材とかですかね」
「……木材?」
「はい、私の趣味は日曜大工ですから」
「意外だな」
この世界に日曜大工なんて言葉があったのか。どこまでも日本語と同じだ。
「私自身はあまり着飾りませんが、物にデコレーションするのは好きですよ」
そういって取り出したPHSは俺のとは色が違う。色の種類は多くないが綺麗にまとまっている。
「そういうのを作るのか」
「はい。ではタカはこれをお願いしますね」
いきなり話を打ち切られ渡されたのは一枚のメモ用紙。錬金術の素材が書いてある。
「ん?」
「タカ……荷物持ちはこれを買ってきてください」
「いやいや、雑貨ならまだしも錬金術の素材はダメだろ」
同じものでも錬金術にとってはそれぞれ効能が違う。コカナシと違って俺はそれを判別できないのだ。
「問題ありません」
「いや、問題しかねぇよ」
「ありません、さっさと行かないと勉強の時間が消え去りますよ」
「……行ってきます」
コカナシの目が鋭くなったのを見て俺は大人しくする事にした。
紅茶に口をつけたローラさんはそれを入れたヴァルクールさんのほうを見る。
「ルーク、これ……」
「申し訳ございません。いつものローネフルトは切らしていまして……本日のはマリアフールとなっております」
「そう……おかしな話ね」
ローラさんがヴァルクールさんの足を軽く蹴る。
「マリアも嫌いじゃないけど食後はローネがいいって言ってるわよね」
「…………」
黙って頭を下げるヴァルクールさんの足がまた蹴られる。
「だんまりかしら?」
あた一蹴り。少し痛そうな音がした。
「……ありがとうございます」
数秒の沈黙の後、隣に座っているコカナシと目を合わせる。
「今、お礼を言いましたよね」
「ああ、言ったな」
「……ヴァルクールさんはマゾヒストなんですかね」
「うん、俺も思ったけど口にするのはやめようぜ?」
「やっぱりローラさんはサディストですかね」
「少し黙ろうか」
コカナシの口にクッキーを押し込む。
「で、観光はしたのか?」
クッキーを紅茶で流し込んだコカナシは少し考えてから口を開く
「あまり外に出ていないですね」
「え? なんで」
「家事をしなくていいというのが楽で楽で」
「…………」
いつもお世話になっております。
「でも、少しもったいないかもしれませんね」
「だろ? どっか行こうぜ」
言った瞬間コカナシの目が鋭くなる。
「資格勉強は?」
「き、気分転換だ」
この数日勉強尽くしで息が詰まりそうなのだ。
「でも試験は明後日……」
「少しだけ、勉強しすぎもよくないって言うだろ?」
「そんな話は知りませんが……まあいいでしょう」
コカナシは紅茶を飲み干してニヤリと笑う。
「タカには荷物持ちになってもらいましょう」
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「なに買いに行くんだ?」
「錬金術の素材……ですかね」
「こんな時まで先生の為に、か」
「もちろん私の個人的な買い物もしますよ。荷物持ち」
呼び方が酷い。それにしても……
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服はいつも『メイド服亜種』みたいなやつだし……よく淹れてるし紅茶の茶葉とかかな?
「いろいろありますが木材とかですかね」
「……木材?」
「はい、私の趣味は日曜大工ですから」
「意外だな」
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「私自身はあまり着飾りませんが、物にデコレーションするのは好きですよ」
そういって取り出したPHSは俺のとは色が違う。色の種類は多くないが綺麗にまとまっている。
「そういうのを作るのか」
「はい。ではタカはこれをお願いしますね」
いきなり話を打ち切られ渡されたのは一枚のメモ用紙。錬金術の素材が書いてある。
「ん?」
「タカ……荷物持ちはこれを買ってきてください」
「いやいや、雑貨ならまだしも錬金術の素材はダメだろ」
同じものでも錬金術にとってはそれぞれ効能が違う。コカナシと違って俺はそれを判別できないのだ。
「問題ありません」
「いや、問題しかねぇよ」
「ありません、さっさと行かないと勉強の時間が消え去りますよ」
「……行ってきます」
コカナシの目が鋭くなったのを見て俺は大人しくする事にした。
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