錬金薬学のすすめ

ナガカタサンゴウ

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資格試験と焦がれるあべこべ

受験登録の受付嬢

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「ここが私の家よ」
 ローラさんに案内されたのは絵本に出てくる城のような豪邸だった。
「貴女はこの部屋をつかうといいわ、コカナシちゃんはわたくしと一緒の部屋に行きましょうね」
「いやです。一人で寝ます」
「ああもう、つれないわね。でもいろいろお話をしたいから後でいらっしゃい」
 そう言って奥に行ったローラさんに代わってヴァルクールさんが俺たちを案内してくれることになった。
「こちらが食事の場となります。客人が来た時や会食の時はここを使用いたします」
「あの、ヴァルクールさん」
 次の場所に行こうとしたヴァルクールさんをコカナシが呼び止める。
「あの、先ほどから人が異様に行き来しているのですが……なにかあったのですか?」
「ああ……」
 ヴァルクールさんは少し言いよどんだ後「まあ、隠すことでもございませんね」と口を開いた。
「ローラ様が婚約をなされるのです」
「そ、そうなんですか!?」
 コカナシよりは驚いたのは俺だった。いや、婚約してもおかしくは無い歳だけど……
「式はいつになるのですか」
 いたって冷静なコカナシの質問にヴァルクールさんも冷静に答える
「二週間後ですね」
「二週間後なら……試験結果の発表日ですね」
「え? そうなのか」
 思ったより早いな
「あれ、聞いてなかったですか? 合格後にここで申請が必要なので結果発表が終わるまでここに滞在する予定ですよ」
「ああ、そう……」
 全く、一ミリたりとも聞いていない。
「そういえばタカヤ様は薬剤師資格試験にを受けるのでしたね。ならば今日の間に受験登録をしておいてはいかかでしょう」
「そうですね、早い方がいいかもしれません。行きましょう、タカ」

 *

「薬剤師資格試験受験者、タカヤ・オナイさんですね」
「はい」
「では試験までにこちらの資料に目を通して……あら?」
 受付のお姉さんがコカナシに目を向ける
「コカナシちゃん? キミアの所のコカナシちゃんよね」
 違うところを見ていたコカナシが受付の人の方を向く
「あ、キリーさん」
「知り合い?」
 コカナシは頷く
「彼女はキリー・ツヴァイさん。以前キミア様とここに来た時にお世話になったお方です」
「ホントお世話したわ、いやってほどね……で、そのキミアは今ここにきてるわけ?」
「いえ、キミア様は来ていません」
 ふうん、と言った後キリーさんの鋭い目が俺をとらえる
「ならいいけど、君はどういう関係?」
「先生の生徒です」
「あのキミアの生徒……あなたは何もしでかさないでしょうね」
「え……」
「キミアがここで何をしたかじっくり教えてあげましょうか?」
 殺意すら感じるほどの笑顔が俺に突き刺さる。
「えっと……そろそろおいとましまーす」
「あ、ちょっと待ちなさい!」
「逃げるぞコカナシ!!」
 俺はキリーさんの手から資料を取って一目散に逃げだした。
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