119 / 199
ホーンテッド・にゃんション
レインツリーの洒落
しおりを挟む
怪人から逃げる事約十分、どうやら追っては来ないようだ。
超速エンジン用の予備バッテリーが底を尽きたところで俺たちは一息つく。
「ここ……は」
目の前には大きな扉がある。一見なんの変哲も無いものだが……
「帰ってきた猫達が言ってたやつだよね?」
「だろうな、模様とかが完全に一致してる」
つまりこの先に下半身の無い幽霊が……
「よし、こっちには何も無かったから合流しようか!」
「いやいや、流石にここはダメだよ」
む、ダメだったか。
「じゃあ……開けるぞ」
*
「どぅわぁっはぁ!?」
開けた瞬間男がいた。尻餅をついて目の前に来た下半身は……
「石の塊?」
脳がその物体を理解する前に智野に肩を叩かれる。
「これ、胸像だよ」
「へ?」
見上げるとそこには言われた通りのもの。確かに少し見ただけならば下半身の無い幽霊に見えないこともない。つまり
「幽霊の 正体みたり 枯れ尾花……か?」
*
ニャルに質問攻めされたのかどこか疲れた様子のケイタ様と合流した。
「何かわかった?」
「一応、情報は」
行きはヨイヨイ帰りは怖いの逆といった感じか、帰りは何もなかったので胸像の事を話した。
「でも不思議だよね、わたしや隆也なら見間違えもわかるんですけど猫って暗くてもよく見えるはずだし」
夜目が聞くと言うやつだ。確かにそれは疑問である、何か混乱でもしていない限りはあまり起きない事だろう。
「それはわかると思う、こっちに重要なモノがあったから」
「重要なモノ? ……そういえばニャルは何処に?」
ケイタ様は珍しく苦笑いを浮かべた。
「その重要なモノを調べるって動かないんだ」
ケイタ様について行き、ニャルの所へ向かう。
俺たちとは逆方面、この廃墟の中を通る川に沿って歩いた最奥の部屋に重要なモノがあるらしい。
「じゃあ、開けるよ」
「……うわ」
部屋の中は木で埋まっていた。草ではなく木だ。
「いっぱい生えてますね」
「違うよ、これは一つの木」
「す、すごいね」
その入り組んだ幹の間からニャルが顔を出した。
「やっぱり予想通りだった! これが原因だよ!」
「ん? この木が?」
「ほら、葉っぱとかが川に浸かった上に流れてくる石で削られてるでしょ?」
指した方を見る。確かにニャルの言う通りだが……
「何かまずいのか? 毒があるようには見えないけど」
「毒というよりは薬かな? 少量なら」
「ねえニャルちゃん、この木ってなんの木なの?」
「日立の樹か?」
「え? 何その木」
「いや、何でもない」
モンキーポッドと言えば伝わるかもしれないがやめておいた。
やはり異世界だと通じない洒落もあるのだ。ああ、嘆かわしい。
話題を終わらせる合図のように咳払いをしてニャルは近くの葉を掴む。
「これはね、マタタビの木だよ」
超速エンジン用の予備バッテリーが底を尽きたところで俺たちは一息つく。
「ここ……は」
目の前には大きな扉がある。一見なんの変哲も無いものだが……
「帰ってきた猫達が言ってたやつだよね?」
「だろうな、模様とかが完全に一致してる」
つまりこの先に下半身の無い幽霊が……
「よし、こっちには何も無かったから合流しようか!」
「いやいや、流石にここはダメだよ」
む、ダメだったか。
「じゃあ……開けるぞ」
*
「どぅわぁっはぁ!?」
開けた瞬間男がいた。尻餅をついて目の前に来た下半身は……
「石の塊?」
脳がその物体を理解する前に智野に肩を叩かれる。
「これ、胸像だよ」
「へ?」
見上げるとそこには言われた通りのもの。確かに少し見ただけならば下半身の無い幽霊に見えないこともない。つまり
「幽霊の 正体みたり 枯れ尾花……か?」
*
ニャルに質問攻めされたのかどこか疲れた様子のケイタ様と合流した。
「何かわかった?」
「一応、情報は」
行きはヨイヨイ帰りは怖いの逆といった感じか、帰りは何もなかったので胸像の事を話した。
「でも不思議だよね、わたしや隆也なら見間違えもわかるんですけど猫って暗くてもよく見えるはずだし」
夜目が聞くと言うやつだ。確かにそれは疑問である、何か混乱でもしていない限りはあまり起きない事だろう。
「それはわかると思う、こっちに重要なモノがあったから」
「重要なモノ? ……そういえばニャルは何処に?」
ケイタ様は珍しく苦笑いを浮かべた。
「その重要なモノを調べるって動かないんだ」
ケイタ様について行き、ニャルの所へ向かう。
俺たちとは逆方面、この廃墟の中を通る川に沿って歩いた最奥の部屋に重要なモノがあるらしい。
「じゃあ、開けるよ」
「……うわ」
部屋の中は木で埋まっていた。草ではなく木だ。
「いっぱい生えてますね」
「違うよ、これは一つの木」
「す、すごいね」
その入り組んだ幹の間からニャルが顔を出した。
「やっぱり予想通りだった! これが原因だよ!」
「ん? この木が?」
「ほら、葉っぱとかが川に浸かった上に流れてくる石で削られてるでしょ?」
指した方を見る。確かにニャルの言う通りだが……
「何かまずいのか? 毒があるようには見えないけど」
「毒というよりは薬かな? 少量なら」
「ねえニャルちゃん、この木ってなんの木なの?」
「日立の樹か?」
「え? 何その木」
「いや、何でもない」
モンキーポッドと言えば伝わるかもしれないがやめておいた。
やはり異世界だと通じない洒落もあるのだ。ああ、嘆かわしい。
話題を終わらせる合図のように咳払いをしてニャルは近くの葉を掴む。
「これはね、マタタビの木だよ」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ
鏑木 うりこ
恋愛
毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。
圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!
なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??
「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。
*ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。
*ご照覧いただけたら幸いです。
*深く考えないでいただけるともっと幸いです。
*作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。
*あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。
マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)
2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)
恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる