108 / 199
ホーンテッド・にゃんション
世界の狭間で受けし才
しおりを挟む
「……これだけですか?」
渡された調合薬のリストと先生を見比べる。
マンドレイク風邪で儲かったとはいえ、この仕事量は少ない気がする。
「お前はトモノの指導があるだろう?」
「あ、それで少なくして……?」
いや、おかしい。
「指導するのは先生では?」
「はぁ? そこまで面倒は見んぞ」
「え……」
「指導はいい経験になる。任せたからな」
そんなこんなで智野の指導は俺がする事となった。
方法は俺のものと同じ、とりあえず座学を始める事にした。
*
「……あづい」
夏は始まったばかりだというのにとても暑い。俺と智野は錬金の準備をしながらダレていた。
「これは無いといけないの?」
智野が羽織っている錬金衣装を摘む。
「まあ、錬金溶液が付くと普通の服は溶けるからな」
そんなことで服をダメにしたらコカナシになんと言われるか……考えたくもない。智野もそれは同じようで、それ以降は文句を言わなくなった。
「じゃあいつものように簡単な傷薬を錬金して見て」
「わかった」
約二ヵ月で智野は座学をほぼ習得した。シャーリィさんから教わっている方はもう少しかかりそうだが、錬金の練習をする上では問題ない。
「じゃあ、始めるね」
錬金溶液の入ったビーカーに数種類の薬草を入れ、混ぜ棒で混ぜる。
錬金溶液が溶解性質を持ち、薬草を溶かして混ぜ合わせていく。
しかしこれだと薬としては不十分だ。時間が経てば分離してしまう。
「じゃあ、次は」
蓋をしたビーカーに智野は手を乗せる。その手にある錬金石付きの指輪と液体が淡く光る。
智野が体力を込めると液体は渦巻き、中から光が漏れていく。薬草が合成されると共に液体は徐々に減っていく……筈なのだが。
「智野! ストップ!」
叫びながら智野を机から離す。指輪の光は消えたが液体は光ながら渦を強めていく。
「遅かったか!」
あらかじめ置いてあったプラスチックの箱をビーカーに被せる。少ししてから箱越しに振動を感じた。
「……また、ダメだった?」
頷いてから箱を持ち上げる。出てきたのは割れたビーカーと中途半端に混ざり合った薬。
「何が悪いんだろうなぁ……」
錬金方法は問題ない。この感じだと体力の入れすぎだと思うのだが、時間的に体力はまだ足りない段階なのだ。
「仕方ない、先生に聞くか」
最初からそうすればよかったのだが、なんだかへんなプライドがあって聞けなかったである。
*
「はあ? 体力が足りない時間なのに体力が飽和してる? わけわからん」
「いや、俺もわからないんですよ」
「……トモノ、とりあえず見せてみろ」
無造作に渡された錬金溶液を使って智野は錬金を開始した。
「体力の質……か?」
先生にしては歯切れが悪いがそれは置いといて
「体力に質とかあるんですか?」
「まあ、あるにはある。ただワタシのようにエルフの血が入ってるとかでなければ錬金に影響が出る程のものではない」
「じゃあわたしにエルフの血が……ないよね?」
いや、俺に聞かれても……ないだろうけどさ。
「だとすればお前の目と同じかもしれないな」
先生の視線は俺に向いている。
「……目?」
「お前……忘れていたのか」
「……?」
目……メ……め……?
「あ、あれか」
この世界に来るときに得たらしい錬金術の才能。
確か命名されたのは「妖精的鑑定眼」
先生の目のように体力や生命力を見る事が出来るんだっけか。
目が痛くなる事もあり、使わないから完全に忘れてた。
「つまり智野にも何かしらの才能があるって事ですね」
先生は頷いて立ち上がる
「詳細はわからないがな。とりあえずボル様とケイタ様に聞きに行くとするか」
渡された調合薬のリストと先生を見比べる。
マンドレイク風邪で儲かったとはいえ、この仕事量は少ない気がする。
「お前はトモノの指導があるだろう?」
「あ、それで少なくして……?」
いや、おかしい。
「指導するのは先生では?」
「はぁ? そこまで面倒は見んぞ」
「え……」
「指導はいい経験になる。任せたからな」
そんなこんなで智野の指導は俺がする事となった。
方法は俺のものと同じ、とりあえず座学を始める事にした。
*
「……あづい」
夏は始まったばかりだというのにとても暑い。俺と智野は錬金の準備をしながらダレていた。
「これは無いといけないの?」
智野が羽織っている錬金衣装を摘む。
「まあ、錬金溶液が付くと普通の服は溶けるからな」
そんなことで服をダメにしたらコカナシになんと言われるか……考えたくもない。智野もそれは同じようで、それ以降は文句を言わなくなった。
「じゃあいつものように簡単な傷薬を錬金して見て」
「わかった」
約二ヵ月で智野は座学をほぼ習得した。シャーリィさんから教わっている方はもう少しかかりそうだが、錬金の練習をする上では問題ない。
「じゃあ、始めるね」
錬金溶液の入ったビーカーに数種類の薬草を入れ、混ぜ棒で混ぜる。
錬金溶液が溶解性質を持ち、薬草を溶かして混ぜ合わせていく。
しかしこれだと薬としては不十分だ。時間が経てば分離してしまう。
「じゃあ、次は」
蓋をしたビーカーに智野は手を乗せる。その手にある錬金石付きの指輪と液体が淡く光る。
智野が体力を込めると液体は渦巻き、中から光が漏れていく。薬草が合成されると共に液体は徐々に減っていく……筈なのだが。
「智野! ストップ!」
叫びながら智野を机から離す。指輪の光は消えたが液体は光ながら渦を強めていく。
「遅かったか!」
あらかじめ置いてあったプラスチックの箱をビーカーに被せる。少ししてから箱越しに振動を感じた。
「……また、ダメだった?」
頷いてから箱を持ち上げる。出てきたのは割れたビーカーと中途半端に混ざり合った薬。
「何が悪いんだろうなぁ……」
錬金方法は問題ない。この感じだと体力の入れすぎだと思うのだが、時間的に体力はまだ足りない段階なのだ。
「仕方ない、先生に聞くか」
最初からそうすればよかったのだが、なんだかへんなプライドがあって聞けなかったである。
*
「はあ? 体力が足りない時間なのに体力が飽和してる? わけわからん」
「いや、俺もわからないんですよ」
「……トモノ、とりあえず見せてみろ」
無造作に渡された錬金溶液を使って智野は錬金を開始した。
「体力の質……か?」
先生にしては歯切れが悪いがそれは置いといて
「体力に質とかあるんですか?」
「まあ、あるにはある。ただワタシのようにエルフの血が入ってるとかでなければ錬金に影響が出る程のものではない」
「じゃあわたしにエルフの血が……ないよね?」
いや、俺に聞かれても……ないだろうけどさ。
「だとすればお前の目と同じかもしれないな」
先生の視線は俺に向いている。
「……目?」
「お前……忘れていたのか」
「……?」
目……メ……め……?
「あ、あれか」
この世界に来るときに得たらしい錬金術の才能。
確か命名されたのは「妖精的鑑定眼」
先生の目のように体力や生命力を見る事が出来るんだっけか。
目が痛くなる事もあり、使わないから完全に忘れてた。
「つまり智野にも何かしらの才能があるって事ですね」
先生は頷いて立ち上がる
「詳細はわからないがな。とりあえずボル様とケイタ様に聞きに行くとするか」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

婚約者を親友に盗られた上、獣人の国へ嫁がされることになったが、私は大の動物好きなのでその結婚先はご褒美でしかなかった
雪葉
恋愛
婚約者である第三王子を、美しい外見の親友に盗られたエリン。まぁ王子のことは好きでも何でもなかったし、政略結婚でしかなかったのでそれは良いとして。なんと彼らはエリンに「新しい縁談」を持ってきたという。その嫁ぎ先は“獣人”の住まう国、ジュード帝国だった。
人間からは野蛮で恐ろしいと蔑まれる獣人の国であるため、王子と親友の二人はほくそ笑みながらこの縁談を彼女に持ってきたのだが────。
「憧れの国に行けることになったわ!! なんて素晴らしい縁談なのかしら……!!」
エリンは嫌がるどころか、大喜びしていた。
なぜなら、彼女は無類の動物好きだったからである。
そんなこんなで憧れの帝国へ意気揚々と嫁ぎに行き、そこで暮らす獣人たちと仲良くなろうと働きかけまくるエリン。
いつも明るく元気な彼女を見た周りの獣人達や、新しい婚約者である皇弟殿下は、次第に彼女に対し好意を持つようになっていく。
動物を心底愛するが故、獣人であろうが何だろうがこよなく愛の対象になるちょっとポンコツ入ってる令嬢と、そんな彼女を見て溺愛するようになる、狼の獣人な婚約者の皇弟殿下のお話です。
※他サイト様にも投稿しております。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる