106 / 199
続・マンドレイク大収穫祭
マッカファミリー
しおりを挟む
大収穫祭から二週間ほど過ぎ、去年と同じくマンドレイク風邪が大流行した。
俺たちにとってそれは絶好の稼ぎ時であり、一昨日までは死ぬほど錬金をさせられた。
流行のピークとなった今日は店番である。一円でも間違えるとコカナシから何を言われるかわからない。
「失礼、アナタがここの店主ですか?」
「え? いや、俺は違いますけど」
話しかけてきたのは細身で高身長の男。凄まじい天然パーマはまるでターバンのようだ。
彼は俺の手にある指輪に目を向けた。
「ふむ、しかしアナタは錬金術師だとお見受けしますが?」
「え? ああ、俺も錬金薬学師ですけど……あれ?」
男の指にも錬金石付きの指輪がある。
「気づきましたか。ワタクシも錬金術師……いや、錬金発明家ですかね!」
「錬金発明家?」
「錬金薬学と同じ思考ですとも。錬金術を利用した新しい化学製品の発明! ……おっと、申し遅れました。ワタクシこういうものです」
名刺を受け取る
『作業代行社・マッカファミリー
社員 カリ・ボッチー』
「作業代行社?」
「有り体に言えば何でも屋、ですかね。ほら、アナタも名刺を」
カリさんがそういうとカウンターの下から名刺を持った手が伸びてきた。
受け取りながら覗き込むと小さくて小太りな丸っこい人がこちらを見ていた。白生地に黒の水玉模様という服も相まってどこか牛を連想してしまう。
「……モウ」
「……あ、どうも」
名刺を受け取ってポケットに入れる。
「名刺はありませんがこの店の薬の一部を作っている御内隆也です。せんせ……店主に用があるんでしたっけ?」
「ああ、それはアナタでも構いません。少し人を探していまして」
見せられた写真には魔女のような帽子を被った少女が写っている。少し幼いが……
「ニャル?」
「おやおやおや! 知っていますか! そうですか!」
「あの……ニャルとどういう関係で?」
「錬金術師としての知り合いと言ったところですね! いや、一応同じ団体の仲間ですか」
「団体? ニャルも何でも屋を?」
カリは人差し指を立てて左右に振る。
「ノンノン。トリスメギストスという宗教団体です」
「宗教?」
「まあ、ワタクシ達は全く信仰などしていませんが。あくまで雇われでっ!?」
後ろから伸びた手にカリさんが殴られた。
「喋りすぎだよ!」
カリさんを押しのけて前に出てきたのは赤装束の女性。なんだか目の周りまで赤い。
「うちのカリが失礼したね。アタシはこいつらのリーダーのマッカだよ」
「ご丁寧にどうも……」
名刺が三枚に増えた。
「で? ニャルの情報はあったのかい?」
「マッカ姐、今それを聞いていたところでして……」
「ふうん」
鼻を鳴らしたマッカさんは写真を取り上げて俺に向ける。
「ニャルって子だ。見たことはないかい?」
「ありますけど……なんでさがしてるんですか?」
「さあね。アタシ達は雇われ、上の事情なんか知らないよ」
……怪しい。
「理由が言えないなら俺も話せません」
「ふうん……」
少しの沈黙の後、マッカさんは背を向けた。
「ならしょうがないね。時間を取らせて悪かったよ」
意外とすんなり帰るな。そう思っているとマッカさんが小さくクシャミをしてま俺の方を向いた。
「忘れてた……マンドレイク風邪の薬を三つお願いするよ」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
目が赤いのはそのせいだったか……
俺たちにとってそれは絶好の稼ぎ時であり、一昨日までは死ぬほど錬金をさせられた。
流行のピークとなった今日は店番である。一円でも間違えるとコカナシから何を言われるかわからない。
「失礼、アナタがここの店主ですか?」
「え? いや、俺は違いますけど」
話しかけてきたのは細身で高身長の男。凄まじい天然パーマはまるでターバンのようだ。
彼は俺の手にある指輪に目を向けた。
「ふむ、しかしアナタは錬金術師だとお見受けしますが?」
「え? ああ、俺も錬金薬学師ですけど……あれ?」
男の指にも錬金石付きの指輪がある。
「気づきましたか。ワタクシも錬金術師……いや、錬金発明家ですかね!」
「錬金発明家?」
「錬金薬学と同じ思考ですとも。錬金術を利用した新しい化学製品の発明! ……おっと、申し遅れました。ワタクシこういうものです」
名刺を受け取る
『作業代行社・マッカファミリー
社員 カリ・ボッチー』
「作業代行社?」
「有り体に言えば何でも屋、ですかね。ほら、アナタも名刺を」
カリさんがそういうとカウンターの下から名刺を持った手が伸びてきた。
受け取りながら覗き込むと小さくて小太りな丸っこい人がこちらを見ていた。白生地に黒の水玉模様という服も相まってどこか牛を連想してしまう。
「……モウ」
「……あ、どうも」
名刺を受け取ってポケットに入れる。
「名刺はありませんがこの店の薬の一部を作っている御内隆也です。せんせ……店主に用があるんでしたっけ?」
「ああ、それはアナタでも構いません。少し人を探していまして」
見せられた写真には魔女のような帽子を被った少女が写っている。少し幼いが……
「ニャル?」
「おやおやおや! 知っていますか! そうですか!」
「あの……ニャルとどういう関係で?」
「錬金術師としての知り合いと言ったところですね! いや、一応同じ団体の仲間ですか」
「団体? ニャルも何でも屋を?」
カリは人差し指を立てて左右に振る。
「ノンノン。トリスメギストスという宗教団体です」
「宗教?」
「まあ、ワタクシ達は全く信仰などしていませんが。あくまで雇われでっ!?」
後ろから伸びた手にカリさんが殴られた。
「喋りすぎだよ!」
カリさんを押しのけて前に出てきたのは赤装束の女性。なんだか目の周りまで赤い。
「うちのカリが失礼したね。アタシはこいつらのリーダーのマッカだよ」
「ご丁寧にどうも……」
名刺が三枚に増えた。
「で? ニャルの情報はあったのかい?」
「マッカ姐、今それを聞いていたところでして……」
「ふうん」
鼻を鳴らしたマッカさんは写真を取り上げて俺に向ける。
「ニャルって子だ。見たことはないかい?」
「ありますけど……なんでさがしてるんですか?」
「さあね。アタシ達は雇われ、上の事情なんか知らないよ」
……怪しい。
「理由が言えないなら俺も話せません」
「ふうん……」
少しの沈黙の後、マッカさんは背を向けた。
「ならしょうがないね。時間を取らせて悪かったよ」
意外とすんなり帰るな。そう思っているとマッカさんが小さくクシャミをしてま俺の方を向いた。
「忘れてた……マンドレイク風邪の薬を三つお願いするよ」
「え、あ、はい。ありがとうございます」
目が赤いのはそのせいだったか……
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ
鏑木 うりこ
恋愛
毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。
圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!
なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??
「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。
*ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。
*ご照覧いただけたら幸いです。
*深く考えないでいただけるともっと幸いです。
*作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。
*あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。
マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)
2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)
恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる