異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

85 花びらの一つ

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 ホタルの前に立つ七人。
 
 彼らはそれぞれ変わった格好をしている。
 
 京の都から派遣された3人組は黄色髪をした女性、シデンと言う名の侍をリーダーに僧兵のコクシュウ、忍びのトコヨの3人で構成されたチームだ。
 
 名を犲(ヤマイヌ)
 
 陰陽師の中で、知らぬものはいない程にその名は轟いている。
 
 「私はシデン、こっちの二人はトコヨとコクシュウだ。
 よろしく」
 
 シデンはそう言うと他のホタルを含む4人を見る。
 
 「最悪、自分達だけだけしか集まらないと思っていたが…まぁまぁ集まった。
 お前もそう思うだろ?」
  
 武僧のコクシュウは他の面々を見ながら小声でトコヨに話しかけ微笑む。
 
 トコヨはそれを聞き小さく頷き隣のツルツル頭と同じ様に他の面々を観察する。
 
 「ホタルさんは有名だから分かるが…。
 他の三人は何者だ…?
 お前なら心当たりがあるんじゃないか…」
 「まぁ…大体は」
 
 無愛想に、そう言いトコヨは目線と顔の動きで一番端に立つ黒ずくめの女性を指す。
 
 「あいつ…隙がない。
 忍びの中でも相当の手練。
 服装と言い。
 噂でしか聞いた事無いけど…おそらく、八咫烏だ」
 
 その言葉にコクシュウは驚きの表情を見せ黒ずくめの女性を凝視する。
 
 「八咫烏…ってまじか。
 あの影で人界を守ってるっていう、天皇家直属の忍び集団の事だろ…信じられん」
 「よっぽど上もこの緊急事態に焦ってるみたいだね。
 真の忍びと呼ばれてる彼らが、人目につく日陰にわざわざ出てくるなんて…」
 
 八咫烏…彼らは、真の忍びだ。
 
 歴史を変えるほどの力を持ちながら
それでいて尚、名すら知られず歴史にも語られ無い存在。
 
 「光栄だな…同じ忍びとして誇らしい」
 
 トコヨは珍しく微笑んでいるらしくいつもの無愛想な声色では無く少し明るい声で呟く。
 
 「それで…その横にいる巫女の格好をした奴は誰だ…?」
 
 コクシュウがそうトコヨに聞こうとした。
 だが…その答えはトコヨが口を開く前に本人の口から語られた。
 
 巫女姿の女性が数歩、前に出る。
 
 「始めまして皆さん。
 私はコウカと申します。
 えっと…出雲の国より参りました。
 その、よろしくお願いします。
 …これで…いいのかな…?」
 
 コウカは少し照れながら話すと微笑み照れ隠しをした。
 
 「出雲…確か西にあると聞く八百万(やおよろず)の神々が集うと言う国ですね。
 確か巫女はそれぞれの神をその身体に降ろすのだとか…」
 
 ホタルは赤面する彼女を見て記憶にあった巫女に関しての知識を引き出す。
 
 「はい、私は癒やしの巫女と呼ばれていて。
 アマテラス大御神(おおみかみ)様を身体に降ろす事ができます」
 
 そして巫女のコウカははっと思い出した様に後ろに振り向き手を広げて後ろにいた侍の男を指す。
 
 「すいません。
 紹介が遅れました。
 彼は私の夫となる方で武士(もののふ)名をリオンと申します」
 
 リオン…彼はルークが探す4人の内の一人。
 
 彼はコウカの紹介を受け興味無さげに無言で会釈し一言…。
 
 「よろしく…」
 
 と…ただそれだけを呟き瞳をそらした。

 
 



 
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