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弐章 国づくり
79 陰陽寮
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「ソウタロウさん…」
受付の女性は少し驚きながら侍の格好をした男を見上げる。
「坊主、俺に一太刀でも傷をつけれたら俺がお前を推薦してやるぞ」
ソウタロウはルークにそう言うと怖い顔をニヤリと歪ませ受付の女性を見た。
「中庭の道場は今、使えるか?」
「はい、予定などは入っていないので使えるはずです」
その言葉を聞きソウタロウはパンッと両手を合わせ音をたてるとルークを再び見る。
「よし、決まりだ。
坊主、今から試合だ準備しろ」
……
「坊主…んで。
なんで陰陽師なんかになりたいんだ?」
陰陽寮の施設にある広い中庭には美しい木や枯山水(かれさんすい)と呼ばれる石と砂で川の情景を演出した田園がありそしてその中央。
そこには石畳で作られた試合をする為の舞台がある。
今は二人。
まだ小さな白い服を着た子供と薄青色の和服を着た大人の男が向き合っていた。
「陰陽師になりたい理由?
それも試験って奴に必要な内容なのか?」
ルークは受付の女性に素手で戦うのは自勝負にもならないだろうからせめてと…。
手渡された、刃の潰れたなまくら刀を危なしく。
それも慣れない手付きでブンブンとまるで旗を振るかのように振り回しながらソウタロウを見てそう聞く。
「いや…俺が気になっただけだ。
言いたくなければ言わなくてもいい」
ソウタロウはそう言いルークを見定める様に目を細める。
「いや、別にいい。
理由はまぁ…簡単に言えば。
お金の為かな」
刀を眺めそこに写った自身の目と合わせた。
「あいにく今は、お金を手に入れる方法を持っていなくてね。
あっ…それと情報も理由の一つかな…」
確か…最初の研究費を稼いだのも冒険者の仕事でだ。
できれば…その同じ要領でこちらの世界でも安定してアラネアの名産を作りそれで稼げるまで…。
それまではこちらの世界で言う冒険者…つまりは陰陽師で稼ぎたい。
ハチロクにお金を払わなくちゃいけないし。
アラネアにとってもこの世界に消えた4人の捜索にとってもお金と言う物はは…。
どの世界だろうと、仮にその世界にお金と言う概念があるのであれば…の話だが…。
当然…無いよりあったほうがいい。
物々交換なんかよりも、よほど取引に使いやすい。
ルークはそう考え笑い、鞘に刀を納め周りを見渡す。
どうやら見物人が複数人いるらしく2階と1階から何かまんじゅうやだんごを食べながら横目にこちらの様子を見ている。
一方…ソウタロウはルークを睨み片手を刀の柄に手を置いていた。
「そうか…金が目的か…。
まあ、気持ちはわかるわな。
ただなぁ…坊主。
この仕事は、お前が思っている様な格好良くて簡単に稼げる物じゃない。
命がけで血と泥塗れの仕事だ…」
受付の女性は少し驚きながら侍の格好をした男を見上げる。
「坊主、俺に一太刀でも傷をつけれたら俺がお前を推薦してやるぞ」
ソウタロウはルークにそう言うと怖い顔をニヤリと歪ませ受付の女性を見た。
「中庭の道場は今、使えるか?」
「はい、予定などは入っていないので使えるはずです」
その言葉を聞きソウタロウはパンッと両手を合わせ音をたてるとルークを再び見る。
「よし、決まりだ。
坊主、今から試合だ準備しろ」
……
「坊主…んで。
なんで陰陽師なんかになりたいんだ?」
陰陽寮の施設にある広い中庭には美しい木や枯山水(かれさんすい)と呼ばれる石と砂で川の情景を演出した田園がありそしてその中央。
そこには石畳で作られた試合をする為の舞台がある。
今は二人。
まだ小さな白い服を着た子供と薄青色の和服を着た大人の男が向き合っていた。
「陰陽師になりたい理由?
それも試験って奴に必要な内容なのか?」
ルークは受付の女性に素手で戦うのは自勝負にもならないだろうからせめてと…。
手渡された、刃の潰れたなまくら刀を危なしく。
それも慣れない手付きでブンブンとまるで旗を振るかのように振り回しながらソウタロウを見てそう聞く。
「いや…俺が気になっただけだ。
言いたくなければ言わなくてもいい」
ソウタロウはそう言いルークを見定める様に目を細める。
「いや、別にいい。
理由はまぁ…簡単に言えば。
お金の為かな」
刀を眺めそこに写った自身の目と合わせた。
「あいにく今は、お金を手に入れる方法を持っていなくてね。
あっ…それと情報も理由の一つかな…」
確か…最初の研究費を稼いだのも冒険者の仕事でだ。
できれば…その同じ要領でこちらの世界でも安定してアラネアの名産を作りそれで稼げるまで…。
それまではこちらの世界で言う冒険者…つまりは陰陽師で稼ぎたい。
ハチロクにお金を払わなくちゃいけないし。
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どの世界だろうと、仮にその世界にお金と言う概念があるのであれば…の話だが…。
当然…無いよりあったほうがいい。
物々交換なんかよりも、よほど取引に使いやすい。
ルークはそう考え笑い、鞘に刀を納め周りを見渡す。
どうやら見物人が複数人いるらしく2階と1階から何かまんじゅうやだんごを食べながら横目にこちらの様子を見ている。
一方…ソウタロウはルークを睨み片手を刀の柄に手を置いていた。
「そうか…金が目的か…。
まあ、気持ちはわかるわな。
ただなぁ…坊主。
この仕事は、お前が思っている様な格好良くて簡単に稼げる物じゃない。
命がけで血と泥塗れの仕事だ…」
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