異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

文字の大きさ
上 下
76 / 90
弐章 国づくり

76 夢

しおりを挟む
 「よってらっしゃい見てらっしゃい!!
 丈夫な蜘蛛の糸で編んだ布や服だよーー!!」
 
 シンゲンが治めている国の中にあるアラネアから一番近い都(みやこ)。
 
 そこではとある陰陽師の一行と田舎から出てきた村の人々が蜘蛛の糸で作られた布や服を売りさばき荒稼ぎをしていた。
 
 「おい! こっちも完売したぞ!!」
 「おいおい、マジかよ!
 こりゃもう、陰陽師や賭博なんてもうやってらんねぇぜ!」
 
 ホクホク顔で陰陽師と村人の二人は顔を見合わせこっそりと懐にお金を入れようとする。
 
 「ちょこっとくらい良いよな…」
 「まぁ、俺達頑張りましたし…」
 
 陰陽師のイタズキは少しだけ戸惑ったものの笑い賭博で倍にすれば問題ないかと考えそのまま入れる。
 
 「いいわけ……無いでしょ!!」
 
 ゴン!ゴン!
 
 「痛てぇーー!」
 「あたまが…」
 
 二人が振り向くと。
 そこには同じく布を売っていた女性が二人、陰陽師のアオイとハナノがいた。
 
 ……
 
 「いやー、村長が妖魔に服を売るように頼まれた時はどうなるかと思ったが…。
 まさかこんなに売れるとはな~!」
 
 「んん…」
 
 畳に敷かれた布団の上。
 外から聞こえるそんな大きな声で目を覚ましたホタルは目の前の光景にギョッとした。
 
 「先生…大丈夫ですか?」
 
 そこには複数の子供の顔。
 可愛い弟子たちの顔が並んでいた。
 
 「そうか。
 お前たち…無事だったか…」
 
 ホタルは布団から起き上がり子供達を抱きしめる。
 
 あの祟り神…デイダラボッチはこの都へは来ていなかったか…。
 
 ホタルは安心し息を吐くと、さらに強く弟子の子供たちを抱きしめた。
 
 「先生…少し痛いですよ…」
 「ああ…こすまない。
 つい嬉しくて力を入れてしまった」
 
 そう話をしていると襖(ふすま)がスッと開き少しシワの入った道場着を着た男が入ってきた。
 
 「師匠! 不楽が、大変な事に!!」
 
 師匠と呼ばれた初老の男は手を上げホタルの言葉を止め。
 
 「ホタル…不楽の件は聞いた。
 辛かったな」
 
 そう言い子供たちの頭にぽんと手を置き、下がってなさいと告げるとホタルの頭を撫で先程ホタルが子供達にした様に抱きしめる。
 
 「随分とうなされていたが…大丈夫だったか?」
 「はい、少し昔の夢を見ていただけです…」
 
 その返事を聞き頷き離れると懐から紙を取り出しホタルに手渡した。
 
 「…起きたばかりのお前にこんな話をするのはしのびないが。
 京の都にある陰陽院から名指しでお前に依頼が来ているそれも朝廷…いや…天皇様の判付きでな…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...