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弐章 国づくり
76 夢
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「よってらっしゃい見てらっしゃい!!
丈夫な蜘蛛の糸で編んだ布や服だよーー!!」
シンゲンが治めている国の中にあるアラネアから一番近い都(みやこ)。
そこではとある陰陽師の一行と田舎から出てきた村の人々が蜘蛛の糸で作られた布や服を売りさばき荒稼ぎをしていた。
「おい! こっちも完売したぞ!!」
「おいおい、マジかよ!
こりゃもう、陰陽師や賭博なんてもうやってらんねぇぜ!」
ホクホク顔で陰陽師と村人の二人は顔を見合わせこっそりと懐にお金を入れようとする。
「ちょこっとくらい良いよな…」
「まぁ、俺達頑張りましたし…」
陰陽師のイタズキは少しだけ戸惑ったものの笑い賭博で倍にすれば問題ないかと考えそのまま入れる。
「いいわけ……無いでしょ!!」
ゴン!ゴン!
「痛てぇーー!」
「あたまが…」
二人が振り向くと。
そこには同じく布を売っていた女性が二人、陰陽師のアオイとハナノがいた。
……
「いやー、村長が妖魔に服を売るように頼まれた時はどうなるかと思ったが…。
まさかこんなに売れるとはな~!」
「んん…」
畳に敷かれた布団の上。
外から聞こえるそんな大きな声で目を覚ましたホタルは目の前の光景にギョッとした。
「先生…大丈夫ですか?」
そこには複数の子供の顔。
可愛い弟子たちの顔が並んでいた。
「そうか。
お前たち…無事だったか…」
ホタルは布団から起き上がり子供達を抱きしめる。
あの祟り神…デイダラボッチはこの都へは来ていなかったか…。
ホタルは安心し息を吐くと、さらに強く弟子の子供たちを抱きしめた。
「先生…少し痛いですよ…」
「ああ…こすまない。
つい嬉しくて力を入れてしまった」
そう話をしていると襖(ふすま)がスッと開き少しシワの入った道場着を着た男が入ってきた。
「師匠! 不楽が、大変な事に!!」
師匠と呼ばれた初老の男は手を上げホタルの言葉を止め。
「ホタル…不楽の件は聞いた。
辛かったな」
そう言い子供たちの頭にぽんと手を置き、下がってなさいと告げるとホタルの頭を撫で先程ホタルが子供達にした様に抱きしめる。
「随分とうなされていたが…大丈夫だったか?」
「はい、少し昔の夢を見ていただけです…」
その返事を聞き頷き離れると懐から紙を取り出しホタルに手渡した。
「…起きたばかりのお前にこんな話をするのはしのびないが。
京の都にある陰陽院から名指しでお前に依頼が来ているそれも朝廷…いや…天皇様の判付きでな…」
丈夫な蜘蛛の糸で編んだ布や服だよーー!!」
シンゲンが治めている国の中にあるアラネアから一番近い都(みやこ)。
そこではとある陰陽師の一行と田舎から出てきた村の人々が蜘蛛の糸で作られた布や服を売りさばき荒稼ぎをしていた。
「おい! こっちも完売したぞ!!」
「おいおい、マジかよ!
こりゃもう、陰陽師や賭博なんてもうやってらんねぇぜ!」
ホクホク顔で陰陽師と村人の二人は顔を見合わせこっそりと懐にお金を入れようとする。
「ちょこっとくらい良いよな…」
「まぁ、俺達頑張りましたし…」
陰陽師のイタズキは少しだけ戸惑ったものの笑い賭博で倍にすれば問題ないかと考えそのまま入れる。
「いいわけ……無いでしょ!!」
ゴン!ゴン!
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「あたまが…」
二人が振り向くと。
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「いやー、村長が妖魔に服を売るように頼まれた時はどうなるかと思ったが…。
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「先生…大丈夫ですか?」
そこには複数の子供の顔。
可愛い弟子たちの顔が並んでいた。
「そうか。
お前たち…無事だったか…」
ホタルは布団から起き上がり子供達を抱きしめる。
あの祟り神…デイダラボッチはこの都へは来ていなかったか…。
ホタルは安心し息を吐くと、さらに強く弟子の子供たちを抱きしめた。
「先生…少し痛いですよ…」
「ああ…こすまない。
つい嬉しくて力を入れてしまった」
そう話をしていると襖(ふすま)がスッと開き少しシワの入った道場着を着た男が入ってきた。
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辛かったな」
そう言い子供たちの頭にぽんと手を置き、下がってなさいと告げるとホタルの頭を撫で先程ホタルが子供達にした様に抱きしめる。
「随分とうなされていたが…大丈夫だったか?」
「はい、少し昔の夢を見ていただけです…」
その返事を聞き頷き離れると懐から紙を取り出しホタルに手渡した。
「…起きたばかりのお前にこんな話をするのはしのびないが。
京の都にある陰陽院から名指しでお前に依頼が来ているそれも朝廷…いや…天皇様の判付きでな…」
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