異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

74 行軍

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 町の中、ホタルは裏の竹薮で取れた竹槍を手に雑兵の一人として集まった。
 
 周囲にはクワや槍を持つ農民の屈強な男達が集まり中には自信と同じような子供や髪に白髪の混じったお年寄りの姿まである。
 
 「こんな格好だけど大丈夫かな…」
 
 ホタルの姿は周りよりも薄汚い継ぎ接ぎだらけの服に手作りの見よう見まねで作った不格好な藁草履(わらぞうり)にボサボサの髪、そして武器はただの竹。
 
 集まった雑兵の中には鎧や兜、鉄の槍や刀を持っている農民もいる。
 
 自分とはまるで大違い…。
 
 「よし、頭数だけは揃ったな」
 
 ホタルが周りの人と自分を見比べていると目の前に馬に乗り全身甲冑を着た大男が現れ集まった農民達を見渡す。
 
 彼から見れば農民達は全員やさぐれ、貧相な装備を身に着けているように見える事だろう。
 
 大男はフンッと鼻を鳴らすと目の前にいる村人を蔑む様に上から見下ろしホタルを見て目を止めた。
 
 「この町は、こんなみすぼらしい奴らしかいないのか…。
 此度の戦は地獄を見そうだ…」
 
 大男はそれだけ呟くと。
 
 「よし!!
 では我が主君の元へ駆け付ける。
 私に続け!」
 
 そう大声を上げ配下の槍や弓を持った足軽とホタルがいる農民で構成された雑兵を後方に連れ、移動を始めた。
 
 ……
 
 移動の道中、ホタルは前を歩く男達の話が聞こえた。
 
 「今回の戦(いくさ)、生き残れると思うか?」
 「さぁ、どうかな。
 まぁ、勝てりゃ荒稼ぎ、負けそうなら逃げりゃいいだけだ」
 「それもそうか」
 
 クワを持つ農民はそう言うと下卑た笑い声を上げ笑う。
 
 そんな彼らにホタルは聞きたかった事を聞いた。
 
 「あのすいません。
 戦(いくさ)ってどれくらいお国からお金を貰える物なんでしょうか?」 
 
 そのホタルの問いに男二人は振り向く。
 
 「ああ、なんだ穢多のお嬢ちゃんか。
 親父の葬儀の時は世話になったな」
 
 一人の男は何処か避ける様にしながらも礼を言いホタルを怪訝な表情で見る。
 
 「んで、お金ね。
 そんなもん貰えるわけねぇだろ」
 「え……でもお金が儲かるってこの前…」
 
 ホタルは戸惑う。
 
 「まぁ、安心しな金はでねぇが勝てば話は別だ。
 戦には初めてなんだろ?
 なら俺達についてきな、色々教えてやるよ」
 
 「おい、そこ遅れてるぞ!
 行軍の足を乱すな!!」
 
 男と話していると突如、前から馬に乗った侍が現れそう叫ぶ。
 
 「おっとっと、いけねえ。
 急ぐぞお嬢ちゃん」
 
 二人の男は見合わせ笑い。
 再び前に向き治り歩き始めた。
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