異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

70 幻術返し

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 「なんぞこれは?」
 
 自身で作り出した空間の中。
 カスミは首をかしげ辺りを見渡す。
 
 そこには連なる鳥居は無く、お城の石垣の様に積み上げられた壁。
 床には均等に長椅子が並べられその中央には赤く長い敷布が敷かれてあった。
 
 そして振り向けば何をする為の物か金色の棒が2つ折り重なり十字架の置かれた祭壇がある。
 
 「一体…ここは、どこでありんしょうか」
 
 見たこともない光景、自分が作っていない空間にカスミは戸惑い焦りを隠せずにいた。
 
 つい先程までは小鬼を幻術に誘い込み追い詰めていたのに一体何が。
 
 見たこともない建物。
 教会の中で思考を巡らす。
 
 「と…言うか、そもそも子鬼はどこへ……」
 
 バキバキ…バキ
 
 独り言を言っていると教会の天井が音を立てパラパラと木くずが落ちカスミの和服を汚す。
 
 「一体なにが…」
 
 恐る恐る、上を見上げ絶句する。
 
 そこには教会の屋根をこじ開け覗き込む巨大な火竜の姿があった。
 
 見たこともない巨大な化け物。
 鱗は赤くまるで鉱石の様な光沢を持ちその火竜の牙と爪はまるで刀と思わせるほどに鋭利でその口からは距離があるにも関わらず熱を感じる程の炎が漏れ出ていた。
 
 「なんぞこれはーーーーー!!」
 
 カスミは目を見開き目の前の現実を直視する。
 
 「こんな…馬鹿なことが…ヒッ!」
 
 火竜と眼が合いカスミは一瞬声を上げ毛を逆立たせる。
 そんな状態をよそに火竜は手を教会内に入れカスミを捕らえようと手を伸ばす。
 
 「やめろ、よせ…来るな…来るな!!」
 
 カスミは妖術の狐火を幾度も放ち抵抗するが…。
 
 「ぉよし… やめなんし!!」
 
 攻撃は意味をなさず火竜の手はカスミの体を鷲掴みにし顔の前まで持ち上げ口を開く。
 
 グルルル…
 
 とうめき声をあげ同時にボフッっと炎を吐き出し大きく口を開け腕を頭より上にと更に持ち上げる。
 
 「わわ…わっちを食べても美味しくは……よ…よしなんし!」
 
 真下に大きな口が見え明らかに自身を食べようとしている。
 
 もし、このまま火竜が手を広げたなら…ごクリとツバを飲み込みカスミは身を震わせただその時が来るのを怯え何もできずただ待つことしかできなかった。
 
 そして…。
 
「いやぁああああああああああ!!」
 

 カスミは火竜の炎が燃え盛る口の中へと落とされバクリと飲み込まれた。
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