異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

文字の大きさ
上 下
69 / 90
弐章 国づくり

69 決着?

しおりを挟む
 氷漬けにされ動かなくなった鬼が一人、四天王の4人に囲まれていた。
 
 「どうなった?」
 
 ギョクズイは先程シュラに止められた手を握り意識を失い目を開けたまま立っているカスミを確認してから、凍っている子鬼に近づき顔を見る。
 
 「ビビらせやがって、しかし…。
 これ程強い奴となると俺達じゃ懐柔できなさそうだな。
 かと言って放って置くわけにもいかん」
 「そうだな、もう十分に彼の力は図れた。
 後は鬼族の妖王であらせられるイバラキ様にお任せする他無い…」
 
 ジュウゾウの言葉にギョクズイは眉間を寄せ睨む。
 
 「ふざけるな。
 ここまで協力してやったんだ。
 こいつは我ら蜘蛛族が預かる。
 それにこの土地はもともと蜘蛛族の土地だ。
 おまけにここの蜘蛛共を従えてるみたいだしな」
 
 
 小鬼から感じていた妖気が半減し小鬼は眠った様に目を瞑っている。
 
 だが…その主が危機に陥っている状況に反応し気づけば周囲で戦闘態勢に入る数十人の蜘蛛、ステラ率いるアラネアに住まう全ての妖魔が妖気を放ち主を助けんと四天王である4人に襲いかかろうとしていた。
 
 「囲まれてますね。
 私としてはテンさえ里に連れ帰れれば問題は無いのですが…」
 
 フウカは気を失い無防備になっているカスミの前にふわりと着地し天狗の羽団扇を構え周囲を警戒する。
 
 「まあ、こうなるだろうな」
 「少し、厄介だな。
 できればここの戦力も取り込みたいんだが…」
 
 3人はカスミを中心に背をそれぞれ預け取り囲む土蜘蛛や女郎蜘蛛の群れを見た。
 
 その瞬間、ゾワリと悪寒が走り凍っている子鬼の体から先程戦っていた時の比ではない妖気。
 それは怒りに満ちたおぞましい妖気が身体の内で膨れ上がり漏れ出している様だ。
 
 「おい小僧共…」
 
 氷にピキリと大きな亀裂が入りそして砕け、ジュウゾウが妖術を使用する前に氷を粉々にしシュラ、もといルークの顔は怒りの形相で目の前に立つ4人を見据えた。
 
 「ルークの声が消えた。
 一体何をした?」
 
 「馬鹿な、カスミの妖術にかかったんじゃないのかよ!?」
 
 四天王の3人は同時にカスミを見るが未だ意識を戻してはいない。
 
 「どうなってるの…こんな事…」
 
 ありえる筈がない。
 
 そうフウカが言おうとした瞬間。
 
 「なんぞこれはーーーーー!!
 
 来るな…来るな!!
 
 ぉよし… やめなんし!!
 
 わっちを食べても美味しくは…。
 
 いやぁああああああああああ!!」
 
 カスミが声にもならない絶叫を上げまるで糸が切れたかのように倒れ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...