異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

68 氷

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 周囲にルークとシュラから妖気が放たれ四天王の全員が一瞬怖じ気ずき静けさだけが場を満たした。
 
 その静けさを破ったのはギョクズイだ。
 
 「おいおいおいおい!!?
 冗談じゃねぇ 
 妖気をビリビリと感じるじゃねぇか。
 話がかなり違うぞ、ジュウゾウ。
 俺達並か俺達以下って話だよなぁ?
 これじゃあ俺達どころか下手すりゃ妖王クラスだぞ…」
 
 そしてジュウゾウとカスミは思考停止し意思では無く本能で反撃をした。
 
 彼らも妖王には届かなかった身とは言えそれに近しい存在。

  強者への挑戦。
  
 いずれは自分も…そんな思いに闘争心が揺れ動かされたのか。
 
 戦闘を続行させてしまった。
 
 「妖術 氷鬼」
 
 ジュウゾウがそう唱えるとルークの足元が氷で覆われ体が徐々に氷で覆われていく。
 
 「炎…(えん…)」
 
 シャン…。
 
 ルークは即座に火のスキルを使用しようとするが使う途中。
 鈴の音が聞こえ、はっと気付いた時。
 
 いつの間にか見渡せばルークは何も無い水で満たされた水面の上、霧で満たされた空間の中にいた。
 
 「これは!?
 シュラ!」
 
 ボワンとした意識、反響し行く度にも重複するルークの声。
 
 シュラの返事もなく先程までいた四天王を含む全員の姿が見えない。
 
 ルークは何が起きたのかと少し歩く。
 すると前方に薄っすらと赤い何かがあるのが分かった。
 
 目を細め見るとぼんやりと赤い鳥居が複数連なっているのが見え、それはこちらからは歩いてさえ以内にも関わらず大きくなり気づけば目の前に赤い鳥居が立っていた。
 
 「これは…」
 
 そして、鳥居をくぐり進んでいくとふと何処かからか唄が聞こえ、それは徐々に大きくなっていく。
 
 感情を感じさせずない女性の唄。
 一方向では無く全方向から聞こえその唄はまるで洞窟の中で唄っているかのように重複。
 
 ルークは少し薄気味悪さを感じながらその声に耳を済ませ辺りを警戒する。
 
 『かごめ   かごめ…
 
 かごのなかのとりは…
 
 いつ、いつでやる…
 
 よあけのばんに…
 
 つるとかめとすべった…
 
 うしろのしょうめんだーれ…』
 
 唄が終わると同時に背後に熱を感じ即座に後ろを振り向く。
 
 そこには青い狐の形をした炎が轟々と燃えルークの体に当たっている瞬間だった。
 
 青い炎が爆発しルークを焦がす。
 
 ルークはスキル【火】を使用しすぐ様、青い炎を鎮火…。
 
 しようと試みたが操れる筈の火が操れずそのまま体、全体が炎に包まれた。
 
 少しルークは戸惑うがならばと風・水の魔法を使用したがどれも今ひとつ効果は無い。
 
 これが妖術というやつか…。
 
 ルークは自身の燃えている体を見やり少し観察した。
 
 「なるほど…」
 
 ルークは手を振ったり手を握ったり開いたりを繰り返す。
 
 『ふふふふふ……』
 
 そんな事をしていると先程の唄の時のように今度は笑い声が聞こえた。
 
 
 
 『永遠の炎…その術にかかった者は肉が燃え尽き骨が消えるまで燃え続けて死ぬんすえ。
 
 少し肝を冷やしたでありんすが。

 いくら妖気を持っていようと所詮は童(わっぱ)…妖術にかけてしまえば煮るも焼くもこっちのものでありんすぇ…』
 
 カスミはそう言い終わると再び唄を口ずさむ。
 
 『かごめ かごめ……』
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