異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

59 四天王

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 天王山に住まう四天王。
 
 彼らは、妖狐族 鬼族 土蜘蛛族 天狗族 と4種族の妖族がおりその地の守り。
 
 人間の進行を防ぐ役割を妖王達より任された4人の幹部の事を指す。
 
 四天王と言う呼び名は人間が勝手に
畏怖と尊敬の念から決めた名でそれを現在も使っているのが現状だ。
 
 そんな4人だが珍しく集まりとある地へと向かい移動していた。
 
 妖狐族のカスミ  
 天狗族のフウカ
 鬼族のジュウゾウ 
 土蜘蛛族のギョクズイ
 
 彼らはそれぞれ同じ種族の中でも飛び抜けた妖気を有し現在の妖王が居なければその席に座っていたかもしれないと噂される程の実力を持つ者達だ。
 
 「おいジュウゾウ…お主の話。
 本当なのであろうなぁ。
 わざわざ我らを呼び集めるなどざっと百年ぶりか…」
 
 鬼族のジュウゾウの姿はルークと同じく青鬼で角と腕が蒼く染まっている。
 
 「ああ…本当だ。
 攫われた鬼達によれば我らと同じ程の妖気を放つ子鬼が現れ、里の者達を助けてくれたそうだ」
 
 その話を聞き天狗族のフウカ妖狐族のカスミは反応した。
 
 「それで…うちのテンも助けられたのですね」
 「どうせイナリの奴も一緒におるんでありんしょ?
 助けてもらったのであればさっさと帰ってこればいいものを…。
 はあ…全く世話を焼かせてくれる姪っ子でありんす…」
 
 そんな話を二人がする中、土蜘蛛族のギョクズイは拳を握り3種族の長(おさ)を睨みつけ妖気を放つ。
 
 「んで?
 問題はその後の話だろ?
 その噂の子鬼、どうするつもりだ?
 雑魚共が俺らの妖気を測れる訳がねぇからな…。
 どうせ眉唾ものだ、せいぜいが中級種クラスの雑魚だろうぜ」
 
 わざわざ俺様を呼びやがって…
 
 小言を言うギョクズイを尻目にジュウゾウは表情を変えることなく真面目な面持ちでこの先向かう山を見る。
 
 「そうだといいがな…」
 
 話は同じ鬼族の者から聞いたが未だ信じれない話だ。
 子鬼が蒼に至っている等と。
 笑えない冗談だ。
 自分も元は赤鬼でこの蒼い姿になるまでにどれ程の歳月をかけどれ程の苦痛を鍛錬を経験を積んできた事か。
 現、鬼族の妖王であらせられるイバラキ様でさえ幼き頃は赤鬼であったと聞くのに…。
 
 それを子鬼で…。
 我が里の者達は嘘などつかない。
 もしその話が本当なのであればそれは我ら四天と同等あるいはそれ以上の化け物だろう。
 
 ジュウゾウは緊張からか唾を飲み込み、そして足を止めた。
 
 気づけば4人の周囲に妖気が複数現れ囲まれている。
 
 「ようこそ遠路はるばる。
 おいで下さいました」
 
 そう思った時透き通りキリっとした声が前方よりかけられ林の中より複数名の女郎蜘蛛と土蜘蛛を引き連れた女性。
 
 彼女は白く美しい服を優雅に身にまといそしてまた美しく白い髪と肌を携えている。
 
 女郎蜘蛛ステラだ。
 
 ステラはルークに名を与えられた蜘蛛達の長(おさ)で現在はルークの命(めい)によりアラネアの里を任されている女郎蜘蛛だ。
 
 そんな美しい姿をした女郎蜘蛛に少し圧倒されながらもジュウゾウは口を開く。
 
 「某(それがし)は数日前に書状を出したジュウゾウと申す者。
 ルーク殿はおられるか?」
 
 その問いにステラは微笑む。
 
 「はい、書状は確かに頂きました。
 しかし主(あるじ)は今は留守。
 ですが、どうぞアラネア国へ。
 茶などは有りませぬが…」
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