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弐章 国づくり
57 呪い
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黒い霧が世界を包みヒヨリの精神世界を消し去っていく。
ヒヨリが目を開けるとそこに居た筈の鬼は消え代わりにミゾレが首元に顔を寄せ抱き締めていた。
「ミゾレちゃん…どうし……」
ヒヨリは驚き目を見開く。
そこには自分の手が赤く染まった現実があった。
「なに……これ……」
赤い鬼の手は自分の意思で動きその腕からは赤い液体が流れている。
「ミゾレ……?」
返事は無くゴホ…ゴホ…と血を混じらせた咳を吐きヒヨリの背に回す腕に更に力を込め抱きしめた。
「ヒヨリちゃん…ごめん…私…」
ミゾレはうっすらとした意識の中。
それだけを何とか口にし少しでもヒヨリに近づこうと顔を寄せる。
だが徐々にミゾレはヒヨリを抱きしめる力を無くしやがてだらんとその腕は落ちそしてそれと同時に体からも力が消え崩れ落ちヒヨリの腕からズルリと抜け落ちた。
目の前で倒れるミゾレにヒヨリは目の前が暗くなっていくのを感じ。
温かい飛び血はまるでヒヨリの体を抱きしめる様に掛かっておりその温かい血は体をゆっくりとそって流れ、冷たい地面に滴り落ちていく。
この時 ヒヨリは自分にあったはずの大切な何かが消えて行ってしまうのを心の奥底で感じた。
この世界には主に二つの対を成す力が存在している。
それは陰と陽、闇と光、邪気と陽気。
様々な呼び名はあるがその2つのうち一つ妖気と呼ばれる陰側が一方的に力を持っている。
人間の心にある恐怖、怒り、憎しみ、嫉妬、絶望、そういった負の感情が人の心に妖気を作り出し大きな力を与える。
陰陽師達はその陰の力に飲まれる事を恐れ陽の力で中和し陰の力を使用している。
つまりは己の心が負の感情に満ち陰に近づけば近づく程に力は増してゆく。
「暗闇を味方につけろ。
その絶望がお前を強くする」
ムクロの言葉が響き渡り消え。
その代わりに悲鳴がこだました。
ヒヨリの内に巡るは憎しみ恨み怒り絶望そして大きな喪失感とそれに比例し深く大きく成長していく悲しみ。
そして何処かから流れ込むのか人々の戦場で作られた感情が溢れヒヨリになだれ込んでくる。
ヒヨリは薄れ行く意識の中。
最後にムクロのしわがれた顔が悪意に満ちた笑みを浮かべている光景を目にした。
「構えろ!!」
「暴走が始まるぞ!」
「急ぎ儀式を進めろ!」
そんな慌ただしい声と戦闘の音が烏の巣と呼ばれる洞窟内に半刻もの間絶え間なく続いた。
「恨むのならお主を売った母を怨め」
私がミゾレを殺した。
なぜこうなってしまったのか…。
なぜ…なぜ…なぜ…。
荒れ狂う混沌んとした感情のと言う名の嵐の中。
その言葉だけがまるで呪いのように幾つも幾つも重複し。
ムメイの心の中に残り続けた。
ヒヨリが目を開けるとそこに居た筈の鬼は消え代わりにミゾレが首元に顔を寄せ抱き締めていた。
「ミゾレちゃん…どうし……」
ヒヨリは驚き目を見開く。
そこには自分の手が赤く染まった現実があった。
「なに……これ……」
赤い鬼の手は自分の意思で動きその腕からは赤い液体が流れている。
「ミゾレ……?」
返事は無くゴホ…ゴホ…と血を混じらせた咳を吐きヒヨリの背に回す腕に更に力を込め抱きしめた。
「ヒヨリちゃん…ごめん…私…」
ミゾレはうっすらとした意識の中。
それだけを何とか口にし少しでもヒヨリに近づこうと顔を寄せる。
だが徐々にミゾレはヒヨリを抱きしめる力を無くしやがてだらんとその腕は落ちそしてそれと同時に体からも力が消え崩れ落ちヒヨリの腕からズルリと抜け落ちた。
目の前で倒れるミゾレにヒヨリは目の前が暗くなっていくのを感じ。
温かい飛び血はまるでヒヨリの体を抱きしめる様に掛かっておりその温かい血は体をゆっくりとそって流れ、冷たい地面に滴り落ちていく。
この時 ヒヨリは自分にあったはずの大切な何かが消えて行ってしまうのを心の奥底で感じた。
この世界には主に二つの対を成す力が存在している。
それは陰と陽、闇と光、邪気と陽気。
様々な呼び名はあるがその2つのうち一つ妖気と呼ばれる陰側が一方的に力を持っている。
人間の心にある恐怖、怒り、憎しみ、嫉妬、絶望、そういった負の感情が人の心に妖気を作り出し大きな力を与える。
陰陽師達はその陰の力に飲まれる事を恐れ陽の力で中和し陰の力を使用している。
つまりは己の心が負の感情に満ち陰に近づけば近づく程に力は増してゆく。
「暗闇を味方につけろ。
その絶望がお前を強くする」
ムクロの言葉が響き渡り消え。
その代わりに悲鳴がこだました。
ヒヨリの内に巡るは憎しみ恨み怒り絶望そして大きな喪失感とそれに比例し深く大きく成長していく悲しみ。
そして何処かから流れ込むのか人々の戦場で作られた感情が溢れヒヨリになだれ込んでくる。
ヒヨリは薄れ行く意識の中。
最後にムクロのしわがれた顔が悪意に満ちた笑みを浮かべている光景を目にした。
「構えろ!!」
「暴走が始まるぞ!」
「急ぎ儀式を進めろ!」
そんな慌ただしい声と戦闘の音が烏の巣と呼ばれる洞窟内に半刻もの間絶え間なく続いた。
「恨むのならお主を売った母を怨め」
私がミゾレを殺した。
なぜこうなってしまったのか…。
なぜ…なぜ…なぜ…。
荒れ狂う混沌んとした感情のと言う名の嵐の中。
その言葉だけがまるで呪いのように幾つも幾つも重複し。
ムメイの心の中に残り続けた。
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