異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

53 烏の子等

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 烏の巣と呼ばれる巨大な洞窟の中。
 
 ミゾレはヒヨリの手を引き二人で外に逃げようと走り出した。
 
 周りにいる子供達もまた皆が久しく見ていない日の光を求め走っている。
 
 ただこの異常で恐ろしい世界から逃げ出したい。
 ただそれだけだ。
 
 皆、大人に売られたり捨てられた孤児だったりとそんな境遇の子供ばかり。

 ここに来てからは食べ物に困らなかったけど、その代わりに黒い装束を着た大人達に厳しい訓練をやらされた。
 
 烏の子供達。
 
 彼らは周りの人間に捨てられ、嫌われた者達の集団。
 黒い装束を纏う前の人界の未来を背負わされた子供達だ。
 
 集団で逃げ出す子供達だったが複数人の見張っていた黒い装束を着た者達が一人…また一人と子供を取り押さえ拘束して行く。
 
 ……
 
 「ムクロ様。
 今回も始まりましたね。
 …良き原石がいると良いですが」
 
 暗い部屋の中、女性の声が聞こえ、その隣ではもう一人。
 老人が目の前に映る洞窟内の様子が映し出された映像の様なものを見て頷いた。
 
 「一人…おる。
 あの、無名の子じゃ。
 確か…名をヒヨリと言ったか…」
 
 「あの裏切り者の…」
 
 「そうか確か…無名とお主は同期じゃったな…。
 無名ほど優れ完成した忍びはおらん」
 
 少しの沈黙の後、彼女は少し感情を荒げムクロを見た。
 
 「ですがあの者は一度だけ失敗を犯しました。
 暗殺のターゲットである男と恋に落ち殺すどころか子を宿し、更には我ら八咫烏から離反などと…」
 
 「だが…まだ奴は使える。
 お主もわかっておるじゃろ。
 あやつの娘を我らが握っておるのだ…この意味、子を持たぬとはいえ女のお前なら分かるな?」
 
 全ては正しき善の為に…。
 
 ……
 
 周りの子供たちが次々と捕まっていく中、ヒヨリはミゾレを守る為、3人の大人を相手にしていた。
 
 ヒヨリは次々と繰り出される攻撃を軽く躱し手刀と足刀で対抗し次々と殺さず、大人達を気絶させていく。
 
 そして…
 
 「さぁ、行こ。
 ミゾレちゃん」
 
 ヒヨリは息を乱す事も無く、震えて動けなくなっていたミゾレの手を取り再び走り始めた。
 
 洞窟の中はとても広く入り組んでおり子供たちはそれぞれの道へと、徐々に徐々にとバラバラに散り。
 
 今ではヒヨリとミゾレだけが一つの道を駆け抜けていた。
 
 途中、複数の牢がある空間や大人達の居住区や厨房などの生活施設をいくつか見かけたが地上の光は未だ見えない。
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