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弐章 国づくり
52 ムメイ 過去
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暗く冷たい岩肌に囲まれた空間。
小さな女の子が二人狭い牢に入れられていた。
「ねぇ、聞いた?
もうすぐ私達もここを出られるって」
「その話ほんと!?」
洞窟の中に無邪気な声が響く。
「ちょっと、ヒヨリちゃん声が大き過ぎるよ…」
気弱そうな女の子が、そうヒソヒソとし声で活発な少女に慌てた様子で注意する。
「あ…ごめん、ミゾレ…。
もうすぐお母さんに会えると思ったら嬉しくて…」
「気持ちは分かるけど静かにしないと…大人が…」
「静かにしろ!!」
ミゾレの言葉を遮り男の声が牢の中に響き渡る。
ヒヨリとミゾレ二人の少女は肩をビクリと震わせると牢の外にいる男と目が合わさぬよう地面の冷たい岩肌を見た。
コツコツコツ…。
と男が近づく音とそこから離れるまでの間、二人は黙り目を伏せ続ける。
ミゾレの手は震えもし木の机や椅子があったのならガタガタと音を立ててしまっていただろう。
ヒヨリはそんな事を思いながらその震える手に触れ大丈夫だよ…とミゾレの目を覗き込む。
ミゾレはそんなヒヨリを見て落ち着いたのかもう震えは止まっていた。
しかし、足音は牢屋の前で止まったまま動く気配はない。
一体どうして…?
そんな疑問が浮かぶ。
そして…。
「出ろ」
そんな言葉が聞こえ、先程話していた様にこの洞窟から出れると二人は顔を見合わせ期待が膨らみ笑う。
「やった…」
……
黒ずくめの装束を着た男は二人を連れ洞窟の中にある広い空間…普段はここで鍛錬を行う場所。
の筈だが今日は雰囲気が違う。
いつもおいてある人型の木や暗殺などに使う為の武器である暗器などは無く。
今ここには数十名の子供たちが代わりに並ばされ集められていた。
「何これ…外に出られるんじゃないの?」
ヒヨリはそう小声で呟きミゾレを見るが彼女もわけが分からず首を振るばかりだ。
二人も集められた子供達、同様に並ばされた瞬間。
何処からともなくしわがれた声が聞こえた。
「よくぞ、よくぞ。
あの厳しい訓練の日々を乗り越えたな…烏の子等よ」
松明の明かりに照らされるのはしわくちゃになったお爺さんの姿で彼もまた黒い装束を着ている。
「最後に、君達にはある儀式してもらう。
それが終わった時、立派な烏となるじゃろう。
君達の幸運を祈る」
老人はがそう言うと同時に一瞬、空間が暗闇に包まれ再び明かりが戻る。
するとあの老人は消えていた。
……
広場に集められた子供達。
彼らはこれから何が起こるのかも分からず不安で震えていた。
子供達は一人ずつ奥の洞窟へ連れて行かれ……そして決まって。
「きゃああああああああ!!」
悲鳴が聞こえた。
悲鳴は伝播し不安と恐怖はこの閉鎖された空間に広がり膨れ上がっていく。
「ねぇヒヨリちゃん。
逃げよ…」
そう言った時、もう既に子供は残り少なく次は自分の番では無いかと震えていた。
「もう嫌!!」
恐怖は限界に達し一人が走り、子供たちが連れて行かれた洞窟とは逆へ走り逃げ出す。
するとまるでダムが決壊したかのように他の子供たちもそれに続く。
「わたしも!!」
「いこう! 早く!!」
「私達も行こヒヨリちゃん!!」
ミゾレはヒヨリの手を握るとその場から他の子供たちに続き走りだした。
小さな女の子が二人狭い牢に入れられていた。
「ねぇ、聞いた?
もうすぐ私達もここを出られるって」
「その話ほんと!?」
洞窟の中に無邪気な声が響く。
「ちょっと、ヒヨリちゃん声が大き過ぎるよ…」
気弱そうな女の子が、そうヒソヒソとし声で活発な少女に慌てた様子で注意する。
「あ…ごめん、ミゾレ…。
もうすぐお母さんに会えると思ったら嬉しくて…」
「気持ちは分かるけど静かにしないと…大人が…」
「静かにしろ!!」
ミゾレの言葉を遮り男の声が牢の中に響き渡る。
ヒヨリとミゾレ二人の少女は肩をビクリと震わせると牢の外にいる男と目が合わさぬよう地面の冷たい岩肌を見た。
コツコツコツ…。
と男が近づく音とそこから離れるまでの間、二人は黙り目を伏せ続ける。
ミゾレの手は震えもし木の机や椅子があったのならガタガタと音を立ててしまっていただろう。
ヒヨリはそんな事を思いながらその震える手に触れ大丈夫だよ…とミゾレの目を覗き込む。
ミゾレはそんなヒヨリを見て落ち着いたのかもう震えは止まっていた。
しかし、足音は牢屋の前で止まったまま動く気配はない。
一体どうして…?
そんな疑問が浮かぶ。
そして…。
「出ろ」
そんな言葉が聞こえ、先程話していた様にこの洞窟から出れると二人は顔を見合わせ期待が膨らみ笑う。
「やった…」
……
黒ずくめの装束を着た男は二人を連れ洞窟の中にある広い空間…普段はここで鍛錬を行う場所。
の筈だが今日は雰囲気が違う。
いつもおいてある人型の木や暗殺などに使う為の武器である暗器などは無く。
今ここには数十名の子供たちが代わりに並ばされ集められていた。
「何これ…外に出られるんじゃないの?」
ヒヨリはそう小声で呟きミゾレを見るが彼女もわけが分からず首を振るばかりだ。
二人も集められた子供達、同様に並ばされた瞬間。
何処からともなくしわがれた声が聞こえた。
「よくぞ、よくぞ。
あの厳しい訓練の日々を乗り越えたな…烏の子等よ」
松明の明かりに照らされるのはしわくちゃになったお爺さんの姿で彼もまた黒い装束を着ている。
「最後に、君達にはある儀式してもらう。
それが終わった時、立派な烏となるじゃろう。
君達の幸運を祈る」
老人はがそう言うと同時に一瞬、空間が暗闇に包まれ再び明かりが戻る。
するとあの老人は消えていた。
……
広場に集められた子供達。
彼らはこれから何が起こるのかも分からず不安で震えていた。
子供達は一人ずつ奥の洞窟へ連れて行かれ……そして決まって。
「きゃああああああああ!!」
悲鳴が聞こえた。
悲鳴は伝播し不安と恐怖はこの閉鎖された空間に広がり膨れ上がっていく。
「ねぇヒヨリちゃん。
逃げよ…」
そう言った時、もう既に子供は残り少なく次は自分の番では無いかと震えていた。
「もう嫌!!」
恐怖は限界に達し一人が走り、子供たちが連れて行かれた洞窟とは逆へ走り逃げ出す。
するとまるでダムが決壊したかのように他の子供たちもそれに続く。
「わたしも!!」
「いこう! 早く!!」
「私達も行こヒヨリちゃん!!」
ミゾレはヒヨリの手を握るとその場から他の子供たちに続き走りだした。
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