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弐章 国づくり
49 『②』
しおりを挟む魔術研究者であるルークは魔術が使える。
それも殆どの魔術を。
属性はもちろんの事、召喚、錬成、精霊、付与、次元、治癒、等そして幻影魔法を…。
もちろん全てが極限まで使える訳ではなく広く浅くと言った具合、つまりは器用貧乏だ。
ルークは森の中で一人。
姿を幻影魔法で消し、倒れるムメイを観察する。
俺は騎士道を持ち合わせてはいない。
故にわざわざ真正面からバカ正直に1対1で戦うほどお人好しじゃない。
できる事なら戦闘は避け、戦う前に勝つ…それが理想だ。
流石に今回の様に突発的だとどうしようもないが…。
「やってくれるな…妖魔!!」
ムメイはそう叫ぶと同時に、糸を切り裂き一瞬にして立ち上がる。
その両腕の包帯は解け、鬼の腕が顕になったその手で頭の布を剥ぎ取り周囲を見渡した。
「なに…!?」
ルークはつい声を出し彼女の顔を見て目を細める。
それは彼女の変化からに他ならない。
ムメイの顔が徐々に布で覆われていない肌がまるで侵食されていく様に首元から赤く染まっていく。
そしてその額からは赤い角が生えた。
もはやその顔、腕は鬼族やルークの様に角だけが赤い訳では無い上に腕は禍々しいもので目は赤く光っていた。
鬼族よりも鬼らしい…人からかけ離れた姿をしている。
まるで黒い霧の世界にいた大鬼の様だ。
「そこか!!」
ムメイの赤く光る瞳がルークを捉えた瞬間、跳躍した。
相変わらず速いが、更に速度を増している。
だが…。
一度見た攻撃だ。
ここに彼女を引き込む前に準備は終らせてある。
ムメイはルークに向かい一直線に飛ぶ、だがその間には無数の糸で張り巡らせてある。
「無駄だ!!」
しかしムメイは月明かりを微かに反射する糸を見切り手刀で糸を全て切り裂き止まることなくルークへと距離を縮めていく。
「ツインフレイム『対なる炎』」
ルークは幻影魔法を解き姿を見せると両手に炎を乗せ放つ。
「聞いていた妖術…」
二つの炎は螺旋を描き飛ぶ。
当たる直前、ムメイは空中で身体をねじり躱す。
火の玉はムメイを通り過ぎ地面に着弾…。
が…それはムメイに着弾した。
何も無い空感が爆発を起こしムメイは吹き飛ばされるが地面に身を叩きつけられ転がされながらも地面に手を付きすぐ様、戦闘の構えを取る。
「…一体何が」
確かに躱した筈だったが…。
躱した火の玉は爆発もせず地面は吹き飛ばされていない。
だが自分は吹き飛ばされた。
ムメイは目を閉じ、気をあたり一帯に張りめぐらせる。
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