異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

44 日常

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 シンゲンの四天王の一人マサトヨは命令を忍衆に出した。
 
 任務の内容は怪物の調査。
 以前、訪れた村で感じた強大な妖気を発する者が何者でどれ程、危険な存在かを判断する為だ。
 
 「おう、どうだった。
 何か分かったか?」
 
 忍衆であるサルトビと呼ばれる忍びは村人の格好やいかにも怪しそうな顔に藁の籠の様なものを被り尺八を吹いている虚無僧(こむそう)と呼ばれる者や商人の格好をした者達が集まっていた。
 
 サルトビを除く彼らは一人一人ここらで働いたりしている人に変装し情報を収集。
 それらをサルトビに報告していた。
 
 「なるほど…それは確認する必要がありそうだね」
 
 その情報はとある村の話で何でも妖魔と交流をしている。
 と言う信じがたい情報だった。
 
 「話に聞く強大な妖気を放つ怪物と関連があるかもなぁ」
 
 とは言ったものの小さな村だし何より辺境の地。
 旅人が来るのは無いと言えないがかなり少数だろう。
 
 誰も好き好んでわざわざ妖魔が支配し住まう東の地、近くへ行こうとする者は少ない。
 
 おまけに妖魔のおかげで国の力は行き届きにくく山賊やお尋ね者がここらの地に潜伏している為、治安もかなり悪い。
 
 商人も当然そんな場所へ行き商売をして危険…リスクを犯す者もいない。
 
 「しゃー無し。
 昔ながらの方法で行きますか」
 
 そうサルトビは言うと一人変わり者の旅人という設定の格好、振りをさせ村に潜入しろと指示を出し向かわせる。
 残りは忍び装束に着換えさせ夜を待ち闇夜へと消えた。
 
 ………
 
 「テン様、イナリ様。
 おにぎりができましたよ」
 
 ルークが離れた蜘蛛の里アラネア。
 その山頂にある社では現在テンとイナリが住んでいる。
 
 テンは天狗族の少年でイナリは妖狐族の少女だ。
 
 二人は昔からの付き合いでよくそれぞれ里を抜け出してはよく遊んでいた仲で山賊に攫われた日も二人は一緒だった。
 
 そんな二人は今、ルークに助けられたものの故郷の里に帰える事無くここアラネアで過ごしている。
 
 テンとイナリの護衛と世話役を任せられた女郎蜘蛛はおにぎりを両手に持ち社へと入った。
 
 「テン様? イナリ様?」
 
 しかしそこに二人の姿は無く蜘蛛の糸で作られた空の毛布が一枚床にあるだけだった。
 
 「これ川?」
 「それはきっと水路だよ。
 確かそんな事を土蜘蛛さん達と人間達が話してたから」
 
 イナリは不思議そうに土蜘蛛の掘った小さな水田に繋がる川を見つめ覗き込む。
 
 水路には川から来たのだろう。
 小魚やゲコゲコと鳴くカエルの姿が見える。
 
 イナリとテンはその鳴き声を真似したり探検をしたりと遊び日が暮れ世話係の女郎蜘蛛が二人を見つけるまで泥だらけになっているにも関わらず遊び続けた。
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