異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

41 黒死

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 深い森の中、風、暴風が吹き抜けると同時に次々と木々が倒されていく。
 
 その光景は異様で鉄石のたたら場にある物見櫓(ものみやぐら)からも山や森の中に線が引かれる様子が見える。
 
 「トモエ様!!
 見てくださいあそこ! ほら!」
 
 トモエは煙管(キセル)を吸うと煙を吹き、木々が倒れる様子を眺める。
 
 「分かってるよ。
 正直、陰陽師連中で大丈夫かと不安だったが…。
 どうやら、鎌鼬の奴ら相当こっぴどくやられてるみたいだね」
 
 トモエはフッと笑い再び煙管を口に加え再び森を眺めた。
 
 ……
 
 どうしてこうなった?
 
 変異個体の鎌鼬…黒死(こくし)と呼ばれ数十年と恐れられてきた存在。
 ここら一帯の山々の主であり死の象徴であり近くの村では山神として讃えられる存在でもある。
 
 かの山神様は恐れ知らず、風と共に現れ風と共に消える。
 その後残るは死屍累々。
 
 そんな歌がある程に恐れられている、力がある。
 
 若い鎌鼬がこの辺りに住む鎌鼬達に招集をかけた。
 何でも噂に聞く京からアヤカシ狩りの名人が来たとかなんとか。
 
 最初は若い衆の戯言かと思い無下にしていたが、確信した。
 一瞬…一瞬だが確かに、森がざわつき小動物達が一斉に逃げ出す程の妖気が人間の住む鉄石のたたら場と呼ばれる地より放たれた。
 
 我らを脅かす存在、縄張りを守る為に葬らねばならん。
 
 今ではそれが間違いの始まりだったと嫌と言うほどにわからされる。
 
 さっさと、あの時に逃げていれば良かったのに。
 
 黒死と恐れられた黒い鎌鼬は後ろから迫る妖気に当てられながらそう後悔した。
 
 少しでも足止めしようと半ば狂乱状態で木々を切り倒しているが全く効果がない。
 
 「バァ!」
 
 走り続け後ろを見た後に前を向き直すと突如としてシュラが目の前に現れた。
 
 「フハハ!
 捕まえたぞ!お主の負けじゃな。
 お主の背中は心地がいいのぉ~」
 
 黒死はぎょっとする。
 
 シュラはすでに追いつきいつからか背に乗っていたのだ。
 黒死はすぐさまふるい払おうと暴れそのまま山を一つ二つと駆け抜けて行く。
 
 その間、体を打ち付けたり猛スピードで木々を走り抜けたりと様々試したがシュラを背から落とすことは出来ずそれどころか楽しませていた。
 
 「なかなか面白いやつじゃの~
 鼬鍋も良いが…ペットにするのもありじゃの」
 
 シュラはそう言い終わると妖気に殺気を載せ黒死へと向けた。
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