異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

38 蜘蛛の糸

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 あれ…これまずくね…。
 
 セイヨウを様子見ようとしていた所少々まずいことになった。
 最初はセイヨウが空断を使い鎌鼬の攻撃を塞ぎ犬神の攻撃で応戦していたが徐々に押され始めている。
 
 こちらにも鎌鼬の攻撃が来ているがアンリが糸で周囲を囲み、そこえセイヨウの空断を風の魔法で応用。
 
 「テンペスタ『嵐』」
 
 俺達とおそらく足手まといになるであろう侍達を含む陰陽師達を除いた計8人を中心に竜巻を出現させ鎌鼬を近づけさせないようにしている。
 
 結果、鎌鼬達は攻撃しようとするも竜巻に巻き込まれ当たるたびにあらぬ方向へと吹き飛ばされていた。
 
 こちらは問題ないが陰陽師の一行は徐々に1人ずつ倒れていき。
 セイヨウも仲間を守っている為か空断による防御がおろそかになり徐々に自身の傷が増えていっている。
 
 「もう十分かな…」
 
 セイヨウの実力も鎌鼬の実力も把握した。
 それに…。
 
 「なんだこの見えない壁は!」
 「これでは助けにいけんぞ」
 
 侍達が足手まといになるにも関わらず風で作られた魔法の壁に刀を叩きつけている。
 
 「全員ここで待機していてくれ。
 俺一人でやる。
 ちょうど試したいスキルがあってね」
 
 そう言い一部風を操り自身が通れる小さな穴を開け風の外に出た。
 
 外に出ると同時に俺の青い手に魔力を注ぎその魔力を指先に集中させる。
 
 スキル妖糸
 
 それぞれ10本の指先から強度と粘着性に優れた蜘蛛の糸を作成。
 
 これはこの世界に来てから大蜘蛛を倒した際に手に入れたスキルで魔力を込める程に強度や粘着性を強化する事ができる。
 
 蜘蛛の糸を周りの木々へと飛ばし複雑に織り込む。
 その指を動かす姿はまるで指揮者の様に動きものの数秒でセイヨウ達の周りに複雑な蜘蛛の巣を張り巡らせた。
 
 辺りを風の様に姿を見せぬ程早く攻撃を仕掛けてくる鎌鼬。
 
 つまりは空中や地面を縦横無尽に走り回り攻撃を仕掛けてくる行動型。
 スピードが武器。

 気づけば4匹の個体が蜘蛛の巣にかかり動きを止めていた。
 更には蜘蛛が絡まり暴れるためその度に絡まり続けている。
 
 鎌鼬達は尾や腕に生えた巨大な刃物の様な鎌で糸を切ろうとするが切れない。
 その癖それを試みる度に絡まっていく。
 
 「おお…便利」
 
 捕獲にピッタリのスキルだ。
 それに動きが少し早すぎてNO.2スーリヤのスキャンが出来なかったがこれで使える。
 
 解析
 妖魔 鎌鼬(かまいたち)
 『速度上昇』
 
 俺の持たないスキルだ。
 
 そんな事を考えていると風切り音がセイヨウ達にでは無く自身に向かってきているのを感じた。
 
 警戒心が強く他の個体とは明らかに違う。
 今捕まっている4匹の毛は灰色だが1匹は黒色。
 変異個体。
 戦闘の様子を見ていたがあの個体が特にセイヨウに傷を負わせ、他の個体を統率していたのを確認している。
 
 ルークは高速で近づいてくる変異個体を前に引く事なく正面から衝突した。
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