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弐章 国づくり
30 タタラ場
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俺は数人を連れアラネアを出る。
移動は徒歩、移動ならNo.40の魔導四輪を使うべきかもしれないが人目がつく上、山道を行かなくてはならない。
つまり、使えないと言う事だ。
メンバーは3人、人間のアイノスケ、土蜘蛛のテルマ、あとはこの前に米を手に入れる際にいた絡新婦のアンリだ。
先程、名前をつけた。
他の蜘蛛達と同じようにアンリもその名を呼ばれると嬉しそうに答える。
「アンリ、この先の道を調べてくれ」
「ふぁ!? 今! 私の名前呼びました!?」
アンリには手書きの地図を持たせている為、聞いただけなのだが何度も名前を言ったのかと聞いてくる。
「アンリ、いいからこの先の道を教えてくれ」
それを聞いて慌てて地図を覗き込むとアンリは指を指し示す。
「えっと…多分こっちに人の住んでる場所があると思い……ますっ!!」
そんなアンリを信じ数日の間、一行は山々を超え平原を越えて遂に都(みやこ)に出た…はずだった。
おかしい、あの陰陽師とか言う冒険者みたいな奴らの話ではもうついてもおかしくは無い頃だ。
だが…その都(みやこ)にまだつかない。
「一体どうなってるんだ…」
ある日、焚き火を囲って一同が食事をする中、俺がそう話を切り出した。
それを聞き、アンリがビクリと肩を震わせ反応する。
まあ、薄々気づいてはいたが…。
アンリが不安そうに地図を全員に見えるように見せ、これまた不安そうに聞く。
「あの…間違って無いと思ってたんですけど…もしかしたら…」
手書きの地図を受け取り調べた。
下手な山の絵、アラネアの場所と都の場所を見て確認するが、今更な気がする。
うむ…全く分からんな…。
申し訳無さそうに頭を下げ分かりやすく落ち込むアンリの頭に手を起き励ます。
俺なりにだが…。
「まあ、なんだ…きっといいことあるって」
そう言い親指を立て片目をつぶって見せた。
「そうですよね、ありがとうございます!!
なんか、物凄く元気が出ました!!
頑張るぞーーーー!!
おーーーー!!」
ふっ…思った以上に効果が出てしまった様だ、恐るべし…俺。
そうしてまたその次の日も俺たちは歩き続けた…。
そうしてまた火を囲む。
「あの…旦那ぁ、あっしら完全に迷ってやすぜ?」
「貴様、ルーク様に何という無礼な事を!」
アイノスケとテルマがそう言う中アンリは焚火の為の木を調達しにでかけていた。
少し進んだ所でアンリは風が少し変わったのを感じ目を瞑る。
少し、その風には煙が混ざっていた。
「何かある…」
木を一旦放り木々の枝をかき分けアンリはさらに草木の向こう側に人間の明かりを見た。
「おお! 早くルーク様に知らせないと!」
その街からは複数の煙が立ち上りその中央からは1番大きな黒煙が立ち上っており、その火元で輝く火の光は街を明るく照らしていた。
その周りには鉄で出来た魔物避けの壁に監視塔そして門が重くそびえ立つ。
鉄石(てっせき)のタタラ場。
そこは人々が山奥に築き上げ、日の本一の鉄を踏む鋼の街なり。
✿❀✿❀✿
戦乱渦巻く大地、その地に一つの知らせが届いた。
ピコン
「もしもし?
ホノカです。
ルーク様、ご無事でしたか……。
鬼?」
ホノカと猫のミケは戦争のさなか戦いを辞め空中に映し出された画面を注視する。
そこには日本などでよく見る神社の様な作りの背景と一匹の小鬼が映し出されていた。
「今度はなに?」
「見てみて、猫がいるよ」
おまけに日本語も聞こえる…。
しかし後ろで騒ぐ子供達の姿は明らかに人ではない。
「これは一体?」
それには小鬼が答えた。
曰く、この世界に来た時にこの姿になってしまったとか。
今は生活が安定し、拠点も確保したという。
「なるほど…では貴方がルーク様なのですね?」
「これは…何ともまあ奇想奇天烈な。
それで、そっちは無事なのだな?」
ミケが聞き返し安心そうで何よりだと頷く。
「それで、そっちはどうなんだ?
戦争が激化したとか」
これに対しては流石にため息が漏れる質問だ。
もうかなり酷い状況に陥っている。
王国デセオは新たな武器を手にした事で慢心を起こしてしまった。
全ては杖と言う武器のせいである。
杖は本来必要とされる魔術師育成のコストや時間を大幅に削減しその杖を持てば誰であろうとも魔術が使えるという代物だ。
「まあ、そんなこんなでまずい事になりそうでな。
このまま行けば人魔大戦とやらが起こるのも時間の問題であろう」
双方はもう止まれない所まで来てしまっている。
「我らもこの戦争に区切りが付き次第に退散する。
まあ安心せい、死にはすまい」
ミケはそう言うとホノカの膝の上に座り、毛づくろいをした。
そんな画面の背景には現在敵対している国、デュナミスの兵。
不死身と謳われた吸血鬼達が山積みに積まれ何事も無いかのように放置されているのが見えた。
移動は徒歩、移動ならNo.40の魔導四輪を使うべきかもしれないが人目がつく上、山道を行かなくてはならない。
つまり、使えないと言う事だ。
メンバーは3人、人間のアイノスケ、土蜘蛛のテルマ、あとはこの前に米を手に入れる際にいた絡新婦のアンリだ。
先程、名前をつけた。
他の蜘蛛達と同じようにアンリもその名を呼ばれると嬉しそうに答える。
「アンリ、この先の道を調べてくれ」
「ふぁ!? 今! 私の名前呼びました!?」
アンリには手書きの地図を持たせている為、聞いただけなのだが何度も名前を言ったのかと聞いてくる。
「アンリ、いいからこの先の道を教えてくれ」
それを聞いて慌てて地図を覗き込むとアンリは指を指し示す。
「えっと…多分こっちに人の住んでる場所があると思い……ますっ!!」
そんなアンリを信じ数日の間、一行は山々を超え平原を越えて遂に都(みやこ)に出た…はずだった。
おかしい、あの陰陽師とか言う冒険者みたいな奴らの話ではもうついてもおかしくは無い頃だ。
だが…その都(みやこ)にまだつかない。
「一体どうなってるんだ…」
ある日、焚き火を囲って一同が食事をする中、俺がそう話を切り出した。
それを聞き、アンリがビクリと肩を震わせ反応する。
まあ、薄々気づいてはいたが…。
アンリが不安そうに地図を全員に見えるように見せ、これまた不安そうに聞く。
「あの…間違って無いと思ってたんですけど…もしかしたら…」
手書きの地図を受け取り調べた。
下手な山の絵、アラネアの場所と都の場所を見て確認するが、今更な気がする。
うむ…全く分からんな…。
申し訳無さそうに頭を下げ分かりやすく落ち込むアンリの頭に手を起き励ます。
俺なりにだが…。
「まあ、なんだ…きっといいことあるって」
そう言い親指を立て片目をつぶって見せた。
「そうですよね、ありがとうございます!!
なんか、物凄く元気が出ました!!
頑張るぞーーーー!!
おーーーー!!」
ふっ…思った以上に効果が出てしまった様だ、恐るべし…俺。
そうしてまたその次の日も俺たちは歩き続けた…。
そうしてまた火を囲む。
「あの…旦那ぁ、あっしら完全に迷ってやすぜ?」
「貴様、ルーク様に何という無礼な事を!」
アイノスケとテルマがそう言う中アンリは焚火の為の木を調達しにでかけていた。
少し進んだ所でアンリは風が少し変わったのを感じ目を瞑る。
少し、その風には煙が混ざっていた。
「何かある…」
木を一旦放り木々の枝をかき分けアンリはさらに草木の向こう側に人間の明かりを見た。
「おお! 早くルーク様に知らせないと!」
その街からは複数の煙が立ち上りその中央からは1番大きな黒煙が立ち上っており、その火元で輝く火の光は街を明るく照らしていた。
その周りには鉄で出来た魔物避けの壁に監視塔そして門が重くそびえ立つ。
鉄石(てっせき)のタタラ場。
そこは人々が山奥に築き上げ、日の本一の鉄を踏む鋼の街なり。
✿❀✿❀✿
戦乱渦巻く大地、その地に一つの知らせが届いた。
ピコン
「もしもし?
ホノカです。
ルーク様、ご無事でしたか……。
鬼?」
ホノカと猫のミケは戦争のさなか戦いを辞め空中に映し出された画面を注視する。
そこには日本などでよく見る神社の様な作りの背景と一匹の小鬼が映し出されていた。
「今度はなに?」
「見てみて、猫がいるよ」
おまけに日本語も聞こえる…。
しかし後ろで騒ぐ子供達の姿は明らかに人ではない。
「これは一体?」
それには小鬼が答えた。
曰く、この世界に来た時にこの姿になってしまったとか。
今は生活が安定し、拠点も確保したという。
「なるほど…では貴方がルーク様なのですね?」
「これは…何ともまあ奇想奇天烈な。
それで、そっちは無事なのだな?」
ミケが聞き返し安心そうで何よりだと頷く。
「それで、そっちはどうなんだ?
戦争が激化したとか」
これに対しては流石にため息が漏れる質問だ。
もうかなり酷い状況に陥っている。
王国デセオは新たな武器を手にした事で慢心を起こしてしまった。
全ては杖と言う武器のせいである。
杖は本来必要とされる魔術師育成のコストや時間を大幅に削減しその杖を持てば誰であろうとも魔術が使えるという代物だ。
「まあ、そんなこんなでまずい事になりそうでな。
このまま行けば人魔大戦とやらが起こるのも時間の問題であろう」
双方はもう止まれない所まで来てしまっている。
「我らもこの戦争に区切りが付き次第に退散する。
まあ安心せい、死にはすまい」
ミケはそう言うとホノカの膝の上に座り、毛づくろいをした。
そんな画面の背景には現在敵対している国、デュナミスの兵。
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