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弐章 国づくり
15 洞窟の檻
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「俺の分も食っていいぞ」
子供達…まあ俺も今は同じ背丈で見た目もそうなのだが、彼らは倒された人間を見て急に態度が変わった。
恐れるのでは無く尊敬しだしたのだ。
「どうぞ、これ僕のです。
食べてください」
「私のもどうぞ」
「私のも!!」
ワチャワチャして困っている。
「いや、いらない。
お前たちで食え、俺はこっちの世界に来てから全く腹が減ってないからな」
これは俺の推察が正しければの話ではあるのだが、恐らく妖魔になったせいだろう。
妖魔になると魔物と同じ様に魔素を喰らい生きるように、妖魔は妖気を喰らい生きる。
「そんな! 恐れ多い」
「それは受け取れません」
「いただきまーす」
皆断る中、妖狐はもう一人分の粗末な食べ物を食べた。
「さてと…」
そんな子供達を置いておき立ち上がり男の体を調べ刀とお金と思われる物銀貨5枚と銅貨を10枚奪った。
「それで、これが鍵か」
それを取るとシュラが話しかけてくる。
『なぜ、生かした?
生かす価値はないと思うぞ?』
「さあ、なんでだろうな?
それに、生きてる価値が有るとか無いとかそんな事が決められる程俺もお前も、出来ちゃいないだろ?」
そう一人呟きながら牢屋を出ようとする。
「ふぁ、まっれくだふぁい」
妖狐の子供が茶碗に乗る米を急いで掻き込み食べ尽くす。
他の子供達も同じく大慌てで食べた。
「待ってください。
僕達も行きます」
どうやら、全員、付いてくるつもりらしい。
「む…確かに、奴隷商人に捕まってる子供を放っとく訳にはいかないか」
しかし…なぜこれ程、懐かれたのだろうか…。
謎である。
「所でお名前はなんて言うんですか?
私はイナリといいます」
妖狐の子供だ。
彼女は俺に一番に近づくや獣人の習性なのか抱きつき頬をスリスリとしてくる。
その為くすぐったい。
「ん? ああ、名前を言ってなかったか。
俺はルークだ。
魔術研究をしている」
イナリはその言葉を聞き頭を傾げる。
「ルーク…様? まじゅつけんきゅう…とはなんですか?」
そうか…この世界に魔法は無いのだった。
「いや、なんでもない。
ただの旅人さ。
それにしても…そろそろ離れてくれ…」
「あっ…またこれはご無礼を」
慌てて俺から離れイナリはオロオロとしだした。
牢屋の中を見渡すと奴隷商人の男が一人……黙って鍵をかけておく。
「クラル『治癒』」
傷はある程度治療した。
これで死ぬ事は無いだろう。
後は、仲間に見つけてもらう事だ。
『治療したのか?
生ぬるい…。
……所で……どうやったのか知らぬが 今おぬし、何をした?
こんな妖術は見た事が無いが…』
「まあ、なんでもいいじゃないか。
別に知らなくても問題無いだろ?」
『なるほどな…妾の知らぬ力か…
面白い、封印の結界に入ってきた事と言いこの世の中を知らなかったりと…なかなか興味をそそらせてくれる。
良かろ好きにしろ…妾も貴様の中で好きにさせてもらうのでな』
そう告げ、シュラは再び沈黙に入った。
その状況、一人で誰かと喋る姿を子供達は目撃し首を傾げる。
「さてと…まずはどうするか…」
そう言い子供達を見やると多少ではあるが傷を負っている。
この程度の傷ならNo.を使うまでも無いか…。
「クラル『治療』」
次々と魔法をかけ傷を癒やしていく。
病気などは効かない為お手上げだが、傷には強い魔法だ。
「あれ!? すり傷が治った!!」
「うわ! すごいすごい」
子供達を治療し終わると俺は辺りを見渡す。
どうやら、ここは洞窟の中らしく少し先に明かりが見える。
「よし、行くぞ…」
子供達を連れ少し歩くとそこは森の中、懐かしい太陽の日差しが眩くそして暖かい。
目を慣らし外を見るとボロの寺が見えた。
近寄ると数人の話し声が聞こえる。
どうやら、ここに住まう山賊らしい。
障子から中を覗く。
中には大人の男が5人…。
そして…外の牢屋に亜人の大人達…。
どうやらこの子達の親らしい。
大人たちがこちらに気づき声を出さず手で逃げろと伝えている。
その時…俺はミスをおかした事に気づいた。
子供と親…引き合わせたらどうなるか…答えは簡単だ。
「お母さーん!!お父さーん!!」
小鬼の少女が走り出し大声を上げ泣きながら駆け寄っていく。
当然奴らも馬鹿では無いそれにすぐさま気づくと刀を持ち出しこちらに走り向かってくる。
「お前ら!!洞窟の中に急げ!」
俺はすぐに指示を出し洞窟を指差す。
しかし動いたのはイナリと天狗族の少年のみで他の猫又の少女と犬神の少年は外の牢屋に向かい走り出していた。
「仕方ないか…」
だがここからは離れさせた。
『手を貸そうか?』
シュラが出番かと声のトーンを上げ嬉しそうに聞いてくる。
ここでシュラに任せればあの人達は確実に死ぬ。
「駄目だ、俺がやる!!」
俺は山賊が数秒後に現れるであろう障子から距離を取り身構えた。
子供達…まあ俺も今は同じ背丈で見た目もそうなのだが、彼らは倒された人間を見て急に態度が変わった。
恐れるのでは無く尊敬しだしたのだ。
「どうぞ、これ僕のです。
食べてください」
「私のもどうぞ」
「私のも!!」
ワチャワチャして困っている。
「いや、いらない。
お前たちで食え、俺はこっちの世界に来てから全く腹が減ってないからな」
これは俺の推察が正しければの話ではあるのだが、恐らく妖魔になったせいだろう。
妖魔になると魔物と同じ様に魔素を喰らい生きるように、妖魔は妖気を喰らい生きる。
「そんな! 恐れ多い」
「それは受け取れません」
「いただきまーす」
皆断る中、妖狐はもう一人分の粗末な食べ物を食べた。
「さてと…」
そんな子供達を置いておき立ち上がり男の体を調べ刀とお金と思われる物銀貨5枚と銅貨を10枚奪った。
「それで、これが鍵か」
それを取るとシュラが話しかけてくる。
『なぜ、生かした?
生かす価値はないと思うぞ?』
「さあ、なんでだろうな?
それに、生きてる価値が有るとか無いとかそんな事が決められる程俺もお前も、出来ちゃいないだろ?」
そう一人呟きながら牢屋を出ようとする。
「ふぁ、まっれくだふぁい」
妖狐の子供が茶碗に乗る米を急いで掻き込み食べ尽くす。
他の子供達も同じく大慌てで食べた。
「待ってください。
僕達も行きます」
どうやら、全員、付いてくるつもりらしい。
「む…確かに、奴隷商人に捕まってる子供を放っとく訳にはいかないか」
しかし…なぜこれ程、懐かれたのだろうか…。
謎である。
「所でお名前はなんて言うんですか?
私はイナリといいます」
妖狐の子供だ。
彼女は俺に一番に近づくや獣人の習性なのか抱きつき頬をスリスリとしてくる。
その為くすぐったい。
「ん? ああ、名前を言ってなかったか。
俺はルークだ。
魔術研究をしている」
イナリはその言葉を聞き頭を傾げる。
「ルーク…様? まじゅつけんきゅう…とはなんですか?」
そうか…この世界に魔法は無いのだった。
「いや、なんでもない。
ただの旅人さ。
それにしても…そろそろ離れてくれ…」
「あっ…またこれはご無礼を」
慌てて俺から離れイナリはオロオロとしだした。
牢屋の中を見渡すと奴隷商人の男が一人……黙って鍵をかけておく。
「クラル『治癒』」
傷はある程度治療した。
これで死ぬ事は無いだろう。
後は、仲間に見つけてもらう事だ。
『治療したのか?
生ぬるい…。
……所で……どうやったのか知らぬが 今おぬし、何をした?
こんな妖術は見た事が無いが…』
「まあ、なんでもいいじゃないか。
別に知らなくても問題無いだろ?」
『なるほどな…妾の知らぬ力か…
面白い、封印の結界に入ってきた事と言いこの世の中を知らなかったりと…なかなか興味をそそらせてくれる。
良かろ好きにしろ…妾も貴様の中で好きにさせてもらうのでな』
そう告げ、シュラは再び沈黙に入った。
その状況、一人で誰かと喋る姿を子供達は目撃し首を傾げる。
「さてと…まずはどうするか…」
そう言い子供達を見やると多少ではあるが傷を負っている。
この程度の傷ならNo.を使うまでも無いか…。
「クラル『治療』」
次々と魔法をかけ傷を癒やしていく。
病気などは効かない為お手上げだが、傷には強い魔法だ。
「あれ!? すり傷が治った!!」
「うわ! すごいすごい」
子供達を治療し終わると俺は辺りを見渡す。
どうやら、ここは洞窟の中らしく少し先に明かりが見える。
「よし、行くぞ…」
子供達を連れ少し歩くとそこは森の中、懐かしい太陽の日差しが眩くそして暖かい。
目を慣らし外を見るとボロの寺が見えた。
近寄ると数人の話し声が聞こえる。
どうやら、ここに住まう山賊らしい。
障子から中を覗く。
中には大人の男が5人…。
そして…外の牢屋に亜人の大人達…。
どうやらこの子達の親らしい。
大人たちがこちらに気づき声を出さず手で逃げろと伝えている。
その時…俺はミスをおかした事に気づいた。
子供と親…引き合わせたらどうなるか…答えは簡単だ。
「お母さーん!!お父さーん!!」
小鬼の少女が走り出し大声を上げ泣きながら駆け寄っていく。
当然奴らも馬鹿では無いそれにすぐさま気づくと刀を持ち出しこちらに走り向かってくる。
「お前ら!!洞窟の中に急げ!」
俺はすぐに指示を出し洞窟を指差す。
しかし動いたのはイナリと天狗族の少年のみで他の猫又の少女と犬神の少年は外の牢屋に向かい走り出していた。
「仕方ないか…」
だがここからは離れさせた。
『手を貸そうか?』
シュラが出番かと声のトーンを上げ嬉しそうに聞いてくる。
ここでシュラに任せればあの人達は確実に死ぬ。
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