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零章 祇園精舎の鐘の声〜諸行無常の響きあり〜
2 異世界への探究
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あれから十数年…。
俺は魔術学校へと進学し研究者へと登り詰めていた。
全ては約束の為。
また会う…そう約束したのだ。
…
大きな屋敷のとある一軒家。
その中でエルフの少女、アイラは屋敷の仕事をこなしていた。
朝、早くに起きて料理を作る。
隙間時間を利用して掃除をしご主人様を起こしにと一人、広い屋敷を走り回る。
他にもこの屋敷には一人メイドがいるが今日は自分の当番なのだ。
「ルーク先生!お食事ができましたよ!」
「んん…」
アイラはカーテンを開けて布団を取る。
「ほら、起きてください先生、今日は国家資格の更新があるって言ってたじゃないですか!」
もう朝なのか…俺は目をこすりまだ寝ていたいという欲望を押さえつけ体を起こそうと頑張る。
「ああ、分かった…起きたから」
「全くもう、先生は私がいないと本当に駄目なんですから」
アイラは寝室に散らばった本を片付けながらルークを見やる。
ぐうの音も出ない、正論だ。
確かにアイラがいなければここはゴミ屋敷となっていたかもしれない。
…
なんとかベットから這いずり出し、食堂に降りると食事が置かれていた。
黒焦げのパンに目玉の潰れた目玉焼き。
それとカリッカリのベーコンだ。
アイラは掃除や洗濯は得意なのだが料理の方はあまり得意では無い。
正直、食べるのは気が進まないが自分が料理してもこんな感じになるので文句は言えない。
それをいつも通り平らげるとアイラが寝室の片付けを終えて階段を駆け降りてきた。
「あっ!先生、今お出かけの服をお持ちします」
アイラがそう言って奥の部屋へと向かうと一匹の猫と一人のメイドが食堂に入ってきた。
「おはようございます。
ルーク様」
メイドは礼儀正しく、頭を下げ挨拶をする。
彼女はメイドのホノカだ。
以前は国に仕えていたのだが今はこうしてメイドとして雇っている。
そして、猫の、ミケさん。
彼女達は紛れもない異世界から来た者達だ。
「全く、魚は今日も無しか…」
見た目が猫のミケさんが二足歩行で立ち上がり皿に乗った黒焦げのパンを見て言う。
彼こそ、この世界初めての初代勇者、見た目はあれだが実力は確かだ。
なぜ…そんな人物が二人もいるのかと言うと時は卒業して初めての研究課題まで遡る。
当時の俺は異界門…これは赤い鳥居の事だが、それを調べて異世界の可能性に俺は気づいた。
最初は転移魔術の一種だと考えていたのだが、全くレベルが違う物だ。
何度も、赤い鳥居を調べ分かった。
これは超高度な魔術が用意られていると。
見た事も聞いたこともないない…まず土台から違う術式だった。
複雑過ぎて、原理が今まで学んだ魔術とかけ離れ過ぎていて理解出来ない…。
しかし…それで諦める言い訳にはならず…俺は一から再び鳥居で学び直した。
その過程で作られた魔術が勇者召喚だ。
もっとも、最初のコンセプトは消えた4人をこっちの世界へと戻すサルベージだったのだが。
勇者召喚は簡単には出来ない。
なぜなら膨大な魔力を必要とするからだ。
魔石を湯水の如く消費して起動させ魔術師10人が1週間魔力を込め続けてやっと発動する。
その為、当時の俺は王様に研究を見せ協力してもらった後に失敗した。
…結果…猫が現れたのだ。
世界に流れる魂を引き寄せる仕組みなのだが、人とは限らないらしい。
おまけに魂なので死んだ者しか召喚できず、しかも世界とは複数存在しているようで特定の世界からというのは無理だと悟った。
最初は、研究予算も大幅に削られていたのだが…。
数十日後その研究室で飼っていた猫が立ち上がり言葉を理解し喋り出したので研究は評価された。
どうやら、世界を渡る時に負荷がかかる為か進化するらしい。
猫は二足歩行で立ち、自らをミケと名乗った。
二回目の勇者召喚…。
今度は成功だった。
黒髪の女性…後に分かった事だが名を 穂香 若月 日本と言う世界から来たそうだ。
初めての勇者召喚(人)の成功事例となった。
国王はこれに満足し 異世界研究者と新たに研究分野を増やし俺をその最高責任者として任命した。
異世界分野において評価されたのは異世界技術の輸入。
そして、兵器としての運用だ。
勇者は特殊な力を持つため魔王や近隣諸国に対する欠かせない兵器として認定された。
勇者は召喚された際に服従の呪縛を魂に刻まれる。
故に召喚者には従わなければならない。
俺が悪魔召喚を応用し術式に組み込み作ったものだ。
どんな化け物が出てきても良いようにする為の保険だったのだが、これがさぞ便利だったらしい。
更に評価された。
そうして俺は莫大な予算を手に入れたのだった。
…
時は戻り現在。
勇者召喚の功績のみで予算を引き出し続けて来た為か最近、一枚の紙切れが届いた。
異世界部門を白紙にすると書かれた紙だ。
あれから何年も立つ…当然と言えば当然だった。
勇者召喚も万能では無かった事だし。
研究に事故はつきもの。
そう…王国から勇者召喚の情報が盗み出された後の世界は悲惨だった。
ありとあらゆる国々が莫大な予算を投じて勇者を召喚しようと試みた。
ある国は予算が底を付き、またある国は竜王なる者を召喚してしまい一日で滅んだ。
今では近づく事すら禁じられた地となっているらしい。
さらに酷いのはどこで情報を手に入れたのか魔王が勇者召喚をしていると言う事実だ。
今の戦争では勇者が先頭に立ち兵を引き連れて戦うと言うのが主流となっている。
勇者が強い国…運良く大量の勇者を獲得出来ていた国が勝つという構図になってしまった。
それであまりにも死者が出る為。
魔族と人間の間で勇者は一国、2人までと条約ができる程に…。
それでも人の勇者が出てくる確率はかなり低いので2人でも相当なのだが…。
俺は魔術学校へと進学し研究者へと登り詰めていた。
全ては約束の為。
また会う…そう約束したのだ。
…
大きな屋敷のとある一軒家。
その中でエルフの少女、アイラは屋敷の仕事をこなしていた。
朝、早くに起きて料理を作る。
隙間時間を利用して掃除をしご主人様を起こしにと一人、広い屋敷を走り回る。
他にもこの屋敷には一人メイドがいるが今日は自分の当番なのだ。
「ルーク先生!お食事ができましたよ!」
「んん…」
アイラはカーテンを開けて布団を取る。
「ほら、起きてください先生、今日は国家資格の更新があるって言ってたじゃないですか!」
もう朝なのか…俺は目をこすりまだ寝ていたいという欲望を押さえつけ体を起こそうと頑張る。
「ああ、分かった…起きたから」
「全くもう、先生は私がいないと本当に駄目なんですから」
アイラは寝室に散らばった本を片付けながらルークを見やる。
ぐうの音も出ない、正論だ。
確かにアイラがいなければここはゴミ屋敷となっていたかもしれない。
…
なんとかベットから這いずり出し、食堂に降りると食事が置かれていた。
黒焦げのパンに目玉の潰れた目玉焼き。
それとカリッカリのベーコンだ。
アイラは掃除や洗濯は得意なのだが料理の方はあまり得意では無い。
正直、食べるのは気が進まないが自分が料理してもこんな感じになるので文句は言えない。
それをいつも通り平らげるとアイラが寝室の片付けを終えて階段を駆け降りてきた。
「あっ!先生、今お出かけの服をお持ちします」
アイラがそう言って奥の部屋へと向かうと一匹の猫と一人のメイドが食堂に入ってきた。
「おはようございます。
ルーク様」
メイドは礼儀正しく、頭を下げ挨拶をする。
彼女はメイドのホノカだ。
以前は国に仕えていたのだが今はこうしてメイドとして雇っている。
そして、猫の、ミケさん。
彼女達は紛れもない異世界から来た者達だ。
「全く、魚は今日も無しか…」
見た目が猫のミケさんが二足歩行で立ち上がり皿に乗った黒焦げのパンを見て言う。
彼こそ、この世界初めての初代勇者、見た目はあれだが実力は確かだ。
なぜ…そんな人物が二人もいるのかと言うと時は卒業して初めての研究課題まで遡る。
当時の俺は異界門…これは赤い鳥居の事だが、それを調べて異世界の可能性に俺は気づいた。
最初は転移魔術の一種だと考えていたのだが、全くレベルが違う物だ。
何度も、赤い鳥居を調べ分かった。
これは超高度な魔術が用意られていると。
見た事も聞いたこともないない…まず土台から違う術式だった。
複雑過ぎて、原理が今まで学んだ魔術とかけ離れ過ぎていて理解出来ない…。
しかし…それで諦める言い訳にはならず…俺は一から再び鳥居で学び直した。
その過程で作られた魔術が勇者召喚だ。
もっとも、最初のコンセプトは消えた4人をこっちの世界へと戻すサルベージだったのだが。
勇者召喚は簡単には出来ない。
なぜなら膨大な魔力を必要とするからだ。
魔石を湯水の如く消費して起動させ魔術師10人が1週間魔力を込め続けてやっと発動する。
その為、当時の俺は王様に研究を見せ協力してもらった後に失敗した。
…結果…猫が現れたのだ。
世界に流れる魂を引き寄せる仕組みなのだが、人とは限らないらしい。
おまけに魂なので死んだ者しか召喚できず、しかも世界とは複数存在しているようで特定の世界からというのは無理だと悟った。
最初は、研究予算も大幅に削られていたのだが…。
数十日後その研究室で飼っていた猫が立ち上がり言葉を理解し喋り出したので研究は評価された。
どうやら、世界を渡る時に負荷がかかる為か進化するらしい。
猫は二足歩行で立ち、自らをミケと名乗った。
二回目の勇者召喚…。
今度は成功だった。
黒髪の女性…後に分かった事だが名を 穂香 若月 日本と言う世界から来たそうだ。
初めての勇者召喚(人)の成功事例となった。
国王はこれに満足し 異世界研究者と新たに研究分野を増やし俺をその最高責任者として任命した。
異世界分野において評価されたのは異世界技術の輸入。
そして、兵器としての運用だ。
勇者は特殊な力を持つため魔王や近隣諸国に対する欠かせない兵器として認定された。
勇者は召喚された際に服従の呪縛を魂に刻まれる。
故に召喚者には従わなければならない。
俺が悪魔召喚を応用し術式に組み込み作ったものだ。
どんな化け物が出てきても良いようにする為の保険だったのだが、これがさぞ便利だったらしい。
更に評価された。
そうして俺は莫大な予算を手に入れたのだった。
…
時は戻り現在。
勇者召喚の功績のみで予算を引き出し続けて来た為か最近、一枚の紙切れが届いた。
異世界部門を白紙にすると書かれた紙だ。
あれから何年も立つ…当然と言えば当然だった。
勇者召喚も万能では無かった事だし。
研究に事故はつきもの。
そう…王国から勇者召喚の情報が盗み出された後の世界は悲惨だった。
ありとあらゆる国々が莫大な予算を投じて勇者を召喚しようと試みた。
ある国は予算が底を付き、またある国は竜王なる者を召喚してしまい一日で滅んだ。
今では近づく事すら禁じられた地となっているらしい。
さらに酷いのはどこで情報を手に入れたのか魔王が勇者召喚をしていると言う事実だ。
今の戦争では勇者が先頭に立ち兵を引き連れて戦うと言うのが主流となっている。
勇者が強い国…運良く大量の勇者を獲得出来ていた国が勝つという構図になってしまった。
それであまりにも死者が出る為。
魔族と人間の間で勇者は一国、2人までと条約ができる程に…。
それでも人の勇者が出てくる確率はかなり低いので2人でも相当なのだが…。
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