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sideA:沙耶のこと
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私には、同い年の「姉」がいる。
春篠沙耶──生徒会長をつとめている、とても優秀で美人な子。
そう、「かわいい」じゃない。
あくまで「美人」とか「きれい」が、沙耶にはとてもしっくりくる。
まっ黒で艶やかな髪。
シュッととがった顎。
日焼けすることのない肌。
そんなものを、たったひとりの人間に集めてしまうのだから、この世界はつくづく不公平だ。
春篠って苗字がめずらしいこともあって、4月になるたびに私は誰かしらに沙耶のことを聞かれる。
──「君、新入生代表の子と同じ苗字だね」
──「2組の春篠さんとはどういう関係なの?」
──「もしかして春篠先輩とは双子ですか?」
双子じゃない。でも家族ではある。
いわゆる両親が再婚した「連れ子同士」。
そう答えると、みんな「ああ」って大きくうなずく。
そして、決まってこう口にするのだ。
──「どうりで似ていないと思った」
あれは、どういうつもりなのだろう。
どう考えても失礼きわまりない発言だし、言われた側としては軽くディスられている気になってしまう。
とはいえ、わざわざそれを指摘したことはない。「そうだね、よく言われる」と軽く笑って受け流すだけ。
これが、私なりの模範解答。
優秀なあの子と、よけいな比較をされないための対処法。
でもさ、あんたたちは気づいていないだろうけれど。
腹の中では、かなりムカついているから。
笑顔の裏で「うっせぇ」を3回は繰り返しているから。
エグすぎた出産ドキュメンタリーがようやく終わり、窓際に座っていた子たちが一斉にカーテンを開けていく。
暗闇になじんでいた目に突き刺さる、痛いほどの日差し。
同時に、室内に漂っていた生々しい空気も、光に焼かれて消えてしまった。
「それでは、来週の授業までに感想文を書いてくるように」
配られたプリントを受け取ったところで、授業終了のチャイムが鳴った。
ああ、怠い。
感想なんて「エグい」以外に何もない。
春篠沙耶──生徒会長をつとめている、とても優秀で美人な子。
そう、「かわいい」じゃない。
あくまで「美人」とか「きれい」が、沙耶にはとてもしっくりくる。
まっ黒で艶やかな髪。
シュッととがった顎。
日焼けすることのない肌。
そんなものを、たったひとりの人間に集めてしまうのだから、この世界はつくづく不公平だ。
春篠って苗字がめずらしいこともあって、4月になるたびに私は誰かしらに沙耶のことを聞かれる。
──「君、新入生代表の子と同じ苗字だね」
──「2組の春篠さんとはどういう関係なの?」
──「もしかして春篠先輩とは双子ですか?」
双子じゃない。でも家族ではある。
いわゆる両親が再婚した「連れ子同士」。
そう答えると、みんな「ああ」って大きくうなずく。
そして、決まってこう口にするのだ。
──「どうりで似ていないと思った」
あれは、どういうつもりなのだろう。
どう考えても失礼きわまりない発言だし、言われた側としては軽くディスられている気になってしまう。
とはいえ、わざわざそれを指摘したことはない。「そうだね、よく言われる」と軽く笑って受け流すだけ。
これが、私なりの模範解答。
優秀なあの子と、よけいな比較をされないための対処法。
でもさ、あんたたちは気づいていないだろうけれど。
腹の中では、かなりムカついているから。
笑顔の裏で「うっせぇ」を3回は繰り返しているから。
エグすぎた出産ドキュメンタリーがようやく終わり、窓際に座っていた子たちが一斉にカーテンを開けていく。
暗闇になじんでいた目に突き刺さる、痛いほどの日差し。
同時に、室内に漂っていた生々しい空気も、光に焼かれて消えてしまった。
「それでは、来週の授業までに感想文を書いてくるように」
配られたプリントを受け取ったところで、授業終了のチャイムが鳴った。
ああ、怠い。
感想なんて「エグい」以外に何もない。
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