たかが、恋

水野七緒

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第8話

4・それって本当に?

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 間中くんが顔をあげたのは、昼休みが残り10分をきってからだった。

「ごめん、もう大丈夫」

 右のてのひらで乱暴に目をこすると、彼は大きな口をほころばせた。

「あのさ、すげーショックだったし、後悔もしてるけど。『告白してよかった』ってのもほんと!」
「えっ、でも……」
「池沢先輩に『好き』って知ってもらえたから。そのことはちゃんと伝わったから。俺、今すげースッキリしてる!」

 屈託ない笑顔。迷いのない眼差し。
 でも、それって本当? 心配かけたくないからって無理していない?
 そんな私の気持ちが伝わったのか、間中くんはふっと表情をやわらげた。

「大丈夫。強がりとかそんなんじゃない」

 それから勢いよく立ちあがると、私に右手を差し出してきた。

「ありがとな、佐島。佐島が協力してくれなかったら、俺たぶん告白すらできてなかった」

 だから、ありがとう。
 そう言って微笑む間中くんは、これまでとは違ってちょっと大人びて見えて。

(バカ……)

 バカバカ、そんな顔するな。
 どうしよう。
 心臓が、踊るみたいに跳ねている。

(やっぱり好きだ)

 昨日より一昨日より、間中くんのことを好きになってしまった。
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