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第7話
15・その結果……
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20分後──俺は、ようやく自分の教室に戻ってきた。
「おかえりー。なっちゃん、どうだった?」
「……」
「……青野?」
「なあ、ひとつ訊いてもいいか?」
好きな人がいる世界から、自らいなくなろうとする理由ってなんだ? やっぱり「あきらめた」ってことか? それとも、想いに応えない相手に対する「反発」あるいは「抗議」みたいなものなのか?
俺はろくに順序立てもせずに、ただ頭に浮かんだことをひたすら星井にぶちまける。
つまりは、それくらい混乱していた。まさに緊急事態というわけだ。
なのに、星井の表情は次第に白々としたものに変化していった。こういう顔つきを、巷では「チベスナ顔」というらしい。たしかにチベットスナギツネもかくやの目の座り具合だ。それでも懲りずにぶちまけ続けていると「あのさ」と、ついに言葉をさえぎられた。
「話がまるで見えないんだけど。とりあえず、なっちゃんと何があったの?」
「いや──なにもない」
「は!?」
「違うんだ、俺と何かあったわけじゃないんだ」
今から20分ほど前、俺が目にしたのは「瞑想するナツさん」だ。
そう、つまり「まさか」のもうひとつの可能性が大正解。
その事実に、俺はなんだか呆然としてしまって、特にナツさんに声をかけることもなく、その場から立ち去ってきた──というわけだ。
「いや、なにそれ」
星井は、まなじりをつりあげた。
「なっちゃんが瞑想してたから何だっていうの」
「覚えてないか? 以前仮説をたてただろ。『瞑想+αで入れ替わりが発生するのでは?』ってやつ」
「あーそういえばあったね、そういうの」
もともと仮説に否定的だったせいか、星井の反応は驚くほど薄い。
「で、何? 瞑想してたから、なっちゃんは元に世界に戻ろうとしてるに違いないって?」
「それ以外に何があるんだよ」
「だとしたら、青野としては万々歳じゃない? なっちゃんの好き好きアピールから逃れられるわけだから」
いや、そうだけど……そのとおりだけども!
頭では十分すぎるほどわかっている。なのに、どういうわけか胸がモヤつくんだ。
その理由を俺は知りたくて、でも解明するのはちょっと怖くて、ただ、とにかくなんというか──
「それに、うまくいけばお兄ちゃんが戻ってくるよ」
え、と俺はまばたきをした。
「なっちゃんが元の世界に戻るって、そういうことじゃん。それが青野の望みでしょ? 良かったじゃん、やったね!」
とってつけたような笑顔とともに肩パンされたところで、昼休みが終了した。化学担当の教師が、時間きっちりに教室に現れる。
始業の挨拶が終わり、皆が教科書を開きはじめた。
そんななか、俺はぼんやりと教科書の表紙を眺めていた。
(夏樹さんが、帰ってくる)
そうだ、星井の指摘どおりだ。それこそが、俺の望みだったはずじゃないか。
なのに俺の「モヤモヤ」はまるで晴れない。むしろ、悪化した気さえしていている。
そう、これぞまさに「五里霧中」状態。誰か助けてくれ、俺の心情を納得のいくように解析してくれ。
「おかえりー。なっちゃん、どうだった?」
「……」
「……青野?」
「なあ、ひとつ訊いてもいいか?」
好きな人がいる世界から、自らいなくなろうとする理由ってなんだ? やっぱり「あきらめた」ってことか? それとも、想いに応えない相手に対する「反発」あるいは「抗議」みたいなものなのか?
俺はろくに順序立てもせずに、ただ頭に浮かんだことをひたすら星井にぶちまける。
つまりは、それくらい混乱していた。まさに緊急事態というわけだ。
なのに、星井の表情は次第に白々としたものに変化していった。こういう顔つきを、巷では「チベスナ顔」というらしい。たしかにチベットスナギツネもかくやの目の座り具合だ。それでも懲りずにぶちまけ続けていると「あのさ」と、ついに言葉をさえぎられた。
「話がまるで見えないんだけど。とりあえず、なっちゃんと何があったの?」
「いや──なにもない」
「は!?」
「違うんだ、俺と何かあったわけじゃないんだ」
今から20分ほど前、俺が目にしたのは「瞑想するナツさん」だ。
そう、つまり「まさか」のもうひとつの可能性が大正解。
その事実に、俺はなんだか呆然としてしまって、特にナツさんに声をかけることもなく、その場から立ち去ってきた──というわけだ。
「いや、なにそれ」
星井は、まなじりをつりあげた。
「なっちゃんが瞑想してたから何だっていうの」
「覚えてないか? 以前仮説をたてただろ。『瞑想+αで入れ替わりが発生するのでは?』ってやつ」
「あーそういえばあったね、そういうの」
もともと仮説に否定的だったせいか、星井の反応は驚くほど薄い。
「で、何? 瞑想してたから、なっちゃんは元に世界に戻ろうとしてるに違いないって?」
「それ以外に何があるんだよ」
「だとしたら、青野としては万々歳じゃない? なっちゃんの好き好きアピールから逃れられるわけだから」
いや、そうだけど……そのとおりだけども!
頭では十分すぎるほどわかっている。なのに、どういうわけか胸がモヤつくんだ。
その理由を俺は知りたくて、でも解明するのはちょっと怖くて、ただ、とにかくなんというか──
「それに、うまくいけばお兄ちゃんが戻ってくるよ」
え、と俺はまばたきをした。
「なっちゃんが元の世界に戻るって、そういうことじゃん。それが青野の望みでしょ? 良かったじゃん、やったね!」
とってつけたような笑顔とともに肩パンされたところで、昼休みが終了した。化学担当の教師が、時間きっちりに教室に現れる。
始業の挨拶が終わり、皆が教科書を開きはじめた。
そんななか、俺はぼんやりと教科書の表紙を眺めていた。
(夏樹さんが、帰ってくる)
そうだ、星井の指摘どおりだ。それこそが、俺の望みだったはずじゃないか。
なのに俺の「モヤモヤ」はまるで晴れない。むしろ、悪化した気さえしていている。
そう、これぞまさに「五里霧中」状態。誰か助けてくれ、俺の心情を納得のいくように解析してくれ。
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