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第7話
9・原因判明(その1)
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飲食店のバイトは、誰にでもできるように見えて実は大変だ──そう教えてくれたのは、いつかの夏樹さんだ。
あるとき、金欠で困っていた星井が「私も『ラッキーバーガー』でバイトしよっかなぁ」と軽く口にした。それを聞いた夏樹さんが「いいけど、覚悟しておけよ」と、その大変さを真摯に説いてくれたのだ。
『まあ、大変は大変だけど、バイト代以上に得られるものも多いから。もし、ナナセが本気でやりたいなら、俺は「先輩」として応援するぜ』
そう締めくくってニカッと笑った、あのときの夏樹さんの笑顔こそプライスレス──って、今はそんな思い出にひたっている場合ではない。
(ナツさんが? ラッキーバーガーのアルバイトを?)
どう考えても無理だろう。あんな「世界は自分を中心にまわっている」と勘違いしていそうなナツさんが、気配りスキル必須の飲食店でバイトをできるとは思えない。
それは八尾さんも同じだったらしく「だろ?」と俺の肩に手をまわしてきた。
「だから俺も止めたんだよ。なのに、あいつ『もう店に連絡した』『絶対、今日から復帰する』ってきかなくてよ」
なるほど、それで手を焼いて、俺のところに来たというわけか。
「で、今一度確認するけどよ。本当に、心当たりはねぇんだな?」
「ないですね」
今度はスパッと答えた。「なにかあったのか」と問われれば、いくつか思い当たることはあるけれど、「バイトに復帰する理由」については、さすがに何も思い当たらない。
結局、結論が出ないまま昼休みが終わり、午後の授業がはじまった。
平安時代の日記の解説にどうしようもない眠気を覚えていると、隣の席からルーズリーフの切れ端がポンと飛んできた。
──「八尾っちの話、なんだった?」
まあ、星井が気になるのも当然か。
俺もルーズリーフを外すと、昼休みのやりとりを簡単に書き記す。そして、最後に「結局、バイト復帰の理由は不明」と添えて、星井の机に素早く乗せた。
俺からの返信を、星井は教科書で隠すようにして読みはじめた。ふんふんと頻繁に打っていた相づちが、最後のほうにきてぴたりと止まる。
星井は、俺の返信に何か書き記すと、先生の目を盗んで、再び放り投げてきた。
──「それ、もしかしたら私のせいかも」
あるとき、金欠で困っていた星井が「私も『ラッキーバーガー』でバイトしよっかなぁ」と軽く口にした。それを聞いた夏樹さんが「いいけど、覚悟しておけよ」と、その大変さを真摯に説いてくれたのだ。
『まあ、大変は大変だけど、バイト代以上に得られるものも多いから。もし、ナナセが本気でやりたいなら、俺は「先輩」として応援するぜ』
そう締めくくってニカッと笑った、あのときの夏樹さんの笑顔こそプライスレス──って、今はそんな思い出にひたっている場合ではない。
(ナツさんが? ラッキーバーガーのアルバイトを?)
どう考えても無理だろう。あんな「世界は自分を中心にまわっている」と勘違いしていそうなナツさんが、気配りスキル必須の飲食店でバイトをできるとは思えない。
それは八尾さんも同じだったらしく「だろ?」と俺の肩に手をまわしてきた。
「だから俺も止めたんだよ。なのに、あいつ『もう店に連絡した』『絶対、今日から復帰する』ってきかなくてよ」
なるほど、それで手を焼いて、俺のところに来たというわけか。
「で、今一度確認するけどよ。本当に、心当たりはねぇんだな?」
「ないですね」
今度はスパッと答えた。「なにかあったのか」と問われれば、いくつか思い当たることはあるけれど、「バイトに復帰する理由」については、さすがに何も思い当たらない。
結局、結論が出ないまま昼休みが終わり、午後の授業がはじまった。
平安時代の日記の解説にどうしようもない眠気を覚えていると、隣の席からルーズリーフの切れ端がポンと飛んできた。
──「八尾っちの話、なんだった?」
まあ、星井が気になるのも当然か。
俺もルーズリーフを外すと、昼休みのやりとりを簡単に書き記す。そして、最後に「結局、バイト復帰の理由は不明」と添えて、星井の机に素早く乗せた。
俺からの返信を、星井は教科書で隠すようにして読みはじめた。ふんふんと頻繁に打っていた相づちが、最後のほうにきてぴたりと止まる。
星井は、俺の返信に何か書き記すと、先生の目を盗んで、再び放り投げてきた。
──「それ、もしかしたら私のせいかも」
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