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第7話
6・困惑(その2)
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これは──どう解釈すればいいんだ?
「いや、でも……ナツさん、向こうの俺と付き合っていたんですよね?」
「うん」
「じゃあ、向こうの俺にとって、あなたは『一番』のはずでしょう」
「……」
「えっ、違うんですか?」
どういうことだ? 向こうの俺には他に好きな人がいて、なのにナツさんと付き合っていたということか?
そんなのあり得ない──と言いかけて、はたと我が身を振り返る。
(あり得なくは……ないのか?)
だって、今の俺がまさにその状態だ。本当に好きなのは夏樹さんなのに、妹の星井ナナセと付き合っている。
(いや、けど──)
俺の場合は「同意の上で」だ。星井の本命は他にいて、お互いの利害のために付き合っているのだ。
(なのに、ナツさんと向こうの俺は違うってことか?)
ふつふつと怒りが湧いてくる。だって、それはあんまりだ。さすがにひどすぎるじゃないか。
「ナツさん、あの……」
思わず詰め寄ろうとした俺に、ナツさんは「なーんて、ウソ、ウソ!」とカラッとした笑顔を見せた。
「今のはジョーダン! ぜんぶ忘れて!」
いや──この状況で「忘れて」って言われても。
「本当ですか? 実は、向こうの『俺』には他に本命がいたとか……」
「それはない! あいつ、すっごいマジメだもん!」
「じゃあ、なんで……」
「だから、ぜんぶジョーダンだってば! お前のことからかっただけ! オレ、あっちの青野に、ほんとのほんとにめちゃくちゃ愛されてたから!」
自動ドアが開き、ナツさんは先に館内に入ろうとする。まるで、俺を置き去りにするかのように。
それでも、俺はいったん足を止めた。なんとなくだけど、ここで、このまま流されてはいけないような気がした。
「『めちゃくちゃ』って、どのくらいですか?」
ようやく、ナツさんも足を止めた。
振り向いたその顔は、どうやら笑っているようだったけれど、逆光のせいでよく見えない。
「んーとね……学校で『エッチしたい』ってお願いしたらOKしてくれるくらい!」
──え、本当に? 俺なら、絶対に拒絶するけど。
明らかに引いている俺を見て、ナツさんはおかしそうに目を細めた。
うん? もしかして、また「冗談でした」ってオチか? けど、やけに胸がざわつくのは何故だろう。
ふと、以前ナツさんが口にした言葉が脳裏をよぎった。
──「結局、オレのことを好きなヤツなんてどこにもいないんだ」
なんで今、このタイミングで、思い出してしまったんだろう。
「いや、でも……ナツさん、向こうの俺と付き合っていたんですよね?」
「うん」
「じゃあ、向こうの俺にとって、あなたは『一番』のはずでしょう」
「……」
「えっ、違うんですか?」
どういうことだ? 向こうの俺には他に好きな人がいて、なのにナツさんと付き合っていたということか?
そんなのあり得ない──と言いかけて、はたと我が身を振り返る。
(あり得なくは……ないのか?)
だって、今の俺がまさにその状態だ。本当に好きなのは夏樹さんなのに、妹の星井ナナセと付き合っている。
(いや、けど──)
俺の場合は「同意の上で」だ。星井の本命は他にいて、お互いの利害のために付き合っているのだ。
(なのに、ナツさんと向こうの俺は違うってことか?)
ふつふつと怒りが湧いてくる。だって、それはあんまりだ。さすがにひどすぎるじゃないか。
「ナツさん、あの……」
思わず詰め寄ろうとした俺に、ナツさんは「なーんて、ウソ、ウソ!」とカラッとした笑顔を見せた。
「今のはジョーダン! ぜんぶ忘れて!」
いや──この状況で「忘れて」って言われても。
「本当ですか? 実は、向こうの『俺』には他に本命がいたとか……」
「それはない! あいつ、すっごいマジメだもん!」
「じゃあ、なんで……」
「だから、ぜんぶジョーダンだってば! お前のことからかっただけ! オレ、あっちの青野に、ほんとのほんとにめちゃくちゃ愛されてたから!」
自動ドアが開き、ナツさんは先に館内に入ろうとする。まるで、俺を置き去りにするかのように。
それでも、俺はいったん足を止めた。なんとなくだけど、ここで、このまま流されてはいけないような気がした。
「『めちゃくちゃ』って、どのくらいですか?」
ようやく、ナツさんも足を止めた。
振り向いたその顔は、どうやら笑っているようだったけれど、逆光のせいでよく見えない。
「んーとね……学校で『エッチしたい』ってお願いしたらOKしてくれるくらい!」
──え、本当に? 俺なら、絶対に拒絶するけど。
明らかに引いている俺を見て、ナツさんはおかしそうに目を細めた。
うん? もしかして、また「冗談でした」ってオチか? けど、やけに胸がざわつくのは何故だろう。
ふと、以前ナツさんが口にした言葉が脳裏をよぎった。
──「結局、オレのことを好きなヤツなんてどこにもいないんだ」
なんで今、このタイミングで、思い出してしまったんだろう。
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